院長インタビュー

ケアミックスの強みを生かし、医療と介護の連携を実現する美原記念病院

ケアミックスの強みを生かし、医療と介護の連携を実現する美原記念病院
美原 盤 先生

公益財団法人脳血管研究所 美原記念病院 院長

美原 盤 先生

目次
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公益財団法人脳血管研究所 美原記念病院は群馬県伊勢崎市に位置しています。同院は脳卒中を主とした脳・神経疾患の専門病院として、急性期医療から回復期リハビリテーション、慢性期医療まで一貫した医療を提供しています。また、グループ法人の施設と連携することで、医療と介護の連携を可能にし、地域のケアミックス型病院として大きな役割を担っています。同院の特徴について院長の美原盤先生にお話を伺いました。

美原記念病院 外観
美原記念病院 外観

当院は、1963年に脳血管障害の急性期治療から在宅復帰まで一貫した医療を提供することを目的に開院しました。現在もこの目的は変わらず、より時代に則したかたちで、脳卒中をメインにした脳・神経疾患の専門病院として医療を提供しています。当院は現在、急性期医療から回復期リハビリテーション、慢性期医療まで一貫して提供できるケアミックス型の病院として地域医療の一端を担っています。さらに、併設する介護老人保健施設、訪問看護ステーションと緊密な連携を取ることで、退院後の患者さんのサポートも行い、急性期から在宅まで一貫した医療・介護の提供を実現しました。

地域に求められる医療は時代と共に変化しています。急性期医療を担う医療機関と慢性期医療を担う医療機関それぞれが独立して、医療を提供するような病院の機能分化が進んでいます。しかし、いわゆる地方都市の医療機関ではひとつの機能に特化した病院ではなく、ケアミックス型のように複数の機能を持った病院は、地域のなかでも大きな意味を持つと思います。

当院は1999年の新病棟開設の際に、急性期の病棟を削減し慢性期の病棟を増加させました。この機能転換は大きな決断でした。しかし、この決断をしたからこそ、今の当院があるのだと思います。

美原記念病院 内観
美原記念病院 内観

伊勢崎市唯一の一次脳卒中センターコア施設の認定を受けている当院の急性期病棟では、主に脳・神経疾患の患者さんを受け入れ、治療にあたっています。脳卒中の疑いのある患者さんが救急搬送された際には、脳神経外科、脳神経内科、脳卒中部門が連携して診療にあたります。脳卒中の診療では、t-PA静注療法をはじめ脳血管内治療も実施しています。脳卒中の治療は時間との勝負であり、迅速な治療の開始が患者さんの予後を左右します。脳卒中の診療では脳神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科の3科が診療科の垣根を超えて連携しています。さらに、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、医療相談員とも連携し、チーム医療の実践を可能にしています。

リハビリテーション室
リハビリテーション室

回復期リハビリテーション病棟は、主に脳卒中の患者さんが入院しています。また、入院している患者さんの半数近くは自院の急性期病棟からの転床で、同じ院内だからこそ急性期医療からスムーズに回復期リハビリテーションに移行できます。もちろん近隣の医療機関で急性期医療が一段落した患者さんの回復期リハビリテーションの転院も受け入れており、地域のなかでも大きな役割を担っていると思います。
また、急性期病棟に入院しているときから充実したリハビリテーションを提供することで、回復期リハビリテーション病棟での入院日数の低減につなげることが可能になります。入院日数の低減は、患者さんやご家族の経済的な負担の軽減にもつながります。入院日数の低減は、患者さんやご家族の経済的な負担の軽減にもつながります。

さらに当院は高齢化が進む伊勢崎市周辺の状況に対応するため、訪問診療の強化、訪問看護ステーションの設置を行い、退院された患者さんの在宅医療にも力を入れています。当院には地域包括ケア病床もあり、退院後の在宅中での肺炎等への対応も積極的に行っています。
当院ではスムーズに急性期、回復期リハビリテーションから在宅医療への移行までを行えるよう、これらの動きを統括する“在宅医療介護統括局”をグループ内施設に設置しました。こういった取り組みがすぐにできるのは、まさにケアミックス型病院ならではの強みといえます。

障害者施設等一般病棟(以下、障害者病棟)では、筋萎縮性側索硬化症パーキンソン病などの神経難病の患者さんを受け入れています。難病ケアは看護師をはじめ、リハビリテーションスタッフ、管理栄養士が常駐し、患者さんが退院後も安心して生活できるようにリハビリや栄養指導を行います。
普段は在宅療養中の患者さんの介護をしている方に休息していただくためのレスパイトケア目的の入院を受け入れています。障害者病棟のスタッフのきめ細やかなケアをまた受けたいと思ってくださる方もおいでで、年間で複数回のレスパイトケア目的の入院をしている方もいらっしゃいます。

当院は認知症疾患医療センターの認定を受けており、認知症患者さんのレスパイトケア目的の入院にも対応しています。
地域の高齢化はまだまだ進行するため、認知症の患者さんは増えるでしょう。当院は、患者さんとそのご家族を、当院を含めた地域全体で支えていきたいと考えています。

障害者病棟ではご遺族の同意を得たうえで、当院で最期を迎えた患者さんの病理解剖をお願いしています。当院は、地域のケアミックス型病院の一面とブレインバンクとしての一面も持ち合わせており、脳や脊髄などの神経系組織を永続的に保存しています。剖検した組織は試料としてそれぞれの研究機関に提供しています。ブレインバンクとして試料を提供することで神経難病の解明や将来の医学の発展に貢献していきたいと思っています。

医師の働き方について、さまざまな議論がなされています。当院でも、より充実した医療の提供、医師の負担を軽減するためにできることは何なのかと思案してきました。そこで取り組んだのがタスクシフティングです。
当院では医師だけでなく、多職種での働き方改革に努めています。実際に非常勤の医師による当直体制の整備、事務作業を行う医師事務作業補助者の増員、看護師による診療補助領域の拡大をすることで医師の作業量の低減を行いました。また、自動受付機・精算機を設置するなどDXを推進することで職員の業務効率化も行いつつ、患者さんの待ち時間の低減も図っています。

看護師による診療補助を特定行為といい、看護師が行うことで医師の負担軽減につながります。特定行為は、高度かつ専門的な知識、技能が特に必要とされ、なおかつ現場でそれらの知識、技能を有効に扱えるように能力を理解し、判断できる能力が求められます。ジェネラリストである特定行為のできる看護師(以下、ジェネラリストナース)は、今後の在宅医療で大きな役割を果たしていくと考えています。

ジェネラリストナースの特定行為の幅が増えることで、それまで医師しか行えなかったために在宅復帰が難しかった患者さんの在宅でのケアも目指せる可能性があるからです。

そのため、当院でも特定看護師の育成に注力しており、2016年8月には指定研修機関の指定を受けました。群馬県内では当院が初めて指定を受けた医療機関です。2023年11月現在は気管カニューレの交換の他、胃ろう(ろう孔)の管理や傷の管理、口腔ケアや栄養管理が行える研修を実施し、在宅医療で特定看護師が行える領域を着々と増やしています。今後も当院ではジェネラリストナースの活躍の場を広げて、在宅医療を充実させていきたいと思います。

地域包括ケアや地域医療構想、専門医のあり方など、日々さまざまな情報が更新されていきます。その情報をキャッチして、実際にどのように病院の運営に生かすことができるのかが重要になってくると思います。ただの「情報」として終わらせるのではなく、自分たちでしっかりと理解し、活用していかなければなりません。たとえば、病院協会から送られてきた紙の資料をただ眺めて終わるのではなく、会議に出席し、議論の場に参加することで初めて情報をきちんと現場における問題として認識できるのだと思います。そういった会議の場に参加するときには、現場のスタッフに同行してもらっています。実際に話していることの理解が難しいこともあると思います。しかし、今後の日本の医療について考えている現場を体感することで、これからの日本がどう動いていくのか実感できるのではないでしょうか。

日々目まぐるしく変わっていく情報に向き合い、地域の医療の発展に貢献してまいります。

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  • 公益財団法人脳血管研究所 美原記念病院 院長

    美原 盤 先生

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