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がん患者さんが“路頭に迷う”ことのないように――名古屋市立大学病院 臨床腫瘍部

がん患者さんが“路頭に迷う”ことのないように――名古屋市立大学病院 臨床腫瘍部
小松 弘和 先生

名古屋市立大学病院 臨床腫瘍部 部長、名古屋市立大学大学院医学研究科臨床腫瘍部 教授

小松 弘和 先生

目次
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名古屋市立大学病院 臨床腫瘍部は、肺がんなどの身近ながんをはじめ、難治がん、希少がんの診療にも対応し、がん患者さんが“路頭に迷わない”ようにサポートすることを目指す部門です。患者さん一人ひとりのご相談に応じる時間を大切にし、必要な場合は他診療科と連携して、総合的な角度からのケアに努めています。

今回は、臨床腫瘍部の取り組みと展望について、同部門の部長を務める小松弘和先生にお話を伺いました。

臨床腫瘍部は、“安全・安心・有効・効率”の4つをキーワードに掲げ、当院における抗がん剤治療をマネジメントする部門です。安全・安心を目指すと共に、たとえば、根拠なく薬を減らさない、副作用には迅速に対応するといった対策を徹底することで、有効な抗がん剤治療に努めています。また、限られた人材のなかで効率的に医療を提供しながら、医療レベルの向上を図っています。

厚生労働省の“第2期がん対策推進基本計画”でも課題として挙げられている、治療の難しい難治がん、患者数が少ない希少がんの診療を行っています。

難治がんや希少がんの患者さんは、身体的、精神的、社会的な面で、多くの課題を抱えています。そのため、外来だけでは十分に診療できず、路頭に迷うかのように院内で行き場をなくしてしまう患者さんが少なくありません。そこで当院は、診療科とは別に、臨床腫瘍外来や薬剤師外来という専門外来を設け、総合的にサポートする体制を整えています。

外来の医師は、日々多くの外来患者さんに対応し、5分や10分という短い時間で診察しなければなりません。そのため、患者さんがいろいろなことで悩まれていても、対応できるのはほんの一部分になってしまうこともあると考えています。臨床腫瘍外来や薬剤師外来でじっくり時間をかけて患者さんとお話しし、問題点を包括的に抽出できるようにしていきたいと思います。

当院の患者さんだけでなく地域にお住まいの方々にも啓発を行い、早期発見するための活動に取り組んでいます。がんは、進行して治療が難しくなる前に、早期発見することが重要だからです。

たとえば、名古屋市のNPO法人ミーネットが運営する患者会において、定期的にセミナーを行っています。この取り組みは、およそ10年前から続けているものです。今後は、小中高生を対象とした講義などにも参加していく予定です。名古屋市や、市内の各病院と協力しながら、施策的にがん教育を進めていきたいと思います。

臨床腫瘍部を立ち上げる前、当院の“がん相談支援室”の機能が充実していないという課題がありました。がん診療連携拠点病院は、がんの相談窓口を設置していることが要件のひとつであり、当院にも2室設置されています。しかし、がん相談支援室を訪れる方のご相談内容の多くは、治療に関する情報提供や、ご自身の不安やお悩みです。相談員(看護師)が踏み込んだアドバイスをすることは難しく、「主治医に相談してください」という段階に立ち戻ってしまうこともありました。そこで、臨床腫瘍外来では、診察の際に数十分ほど時間をかけて、じっくりとお話を聞くようにしています。

病気にかかったとき、もしも知り合いに医師がいたら、相談したくなるものだと思います。私も、家族や親戚から医師としてのアドバイスをよく求められます。そのちょっとしたアドバイスがとても役に立つと言われた経験から、患者さんに対しても同じように、気軽に相談に乗ることができればと考えています。

近年、抗がん剤治療が外来で行われるようになってきていることから、当院では薬剤師も外来を行う体制をとっています。

薬剤師外来では、がんに対する治療の内容や、副作用およびその対策などについて、がんの専門知識をもった薬剤師が説明しています。入院患者さんには病棟でご説明できることでも、外来では時間が足りないことが一般的です。薬局でも、厳しい管理が必要な抗がん剤について、十分なご説明をすることは難しいと思います。

薬剤師外来の受診を希望される方は、担当の医師にご相談ください。

当部門では、抗がん剤オーダーのコンピューター化を行っています。

近年、電子カルテが普及して、定期処方の登録や入力補助機能などにより、スムーズに抗がん剤オーダーを作ることができるようになりました。

しかし、電子カルテには、ヒューマンエラーを防ぐ機能はあまり備わっていません。たとえば、“1500mg”のつもりが“5100mg”と入力してしまった、“3日”のつもりが“4日”をクリックしてしまったなど、ミスによる過剰投与の危険があるということです。

そこで、当院では抗がん剤のレジメン(計画書)の登録をしてパターン化し、ヒューマンエラーをできる限り減らすための体制を整えています。間違った数値を入力するとエラーが出るシステムもあります。たとえば、3日間の投与が決まっている薬剤については、それ以外の日数はチェックできないようになっています。このように、コンピューターで徹底的に管理することで、誤投与の防止に努めています。

当院の特色のひとつは、診療科同士の垣根が低いことです。2週間~1か月に1回は、医師、看護師、薬剤師で集まり、話し合う場を設けています。よりよい診療体制を構築するために、看護師や薬剤師の提案を反映させることも大切にしています。最近では、診療の順番を変更したことで、ある待合室が急に混雑し始めたことに看護師が気づき、すぐに椅子の数を増やして対応することができました。また、何かトラブルがあればすぐに解決できるよう、電話で連絡を取り合う体制の強化も図っています。

各診療科も、協力して診療にあたっています。たとえば、患者さんの状態によっては、抗がん剤治療だけでなく、緩和ケアや皮膚科での診療が必要になることがあります。その場合、医師が在席している場合は、すぐに化学療法室に来てもらえるようにしています。ひどい痛みを訴えている患者さんの診療には、緩和ケアの医師や臨床心理士に加わってもらうこともあります。抗がん剤治療中に薬剤が漏れ出したときなどは、皮膚科の医師が迅速に処置を行います。

各部門の連携も図っています。当院の乳腺外科部長である遠山竜也先生が中心となって、新たにがんゲノム医療部ができました。私もがんゲノム外来担当医として、標準治療を終えて治療が難しくなった難治がんや希少がんの患者さんに対して、がんゲノム医療について説明し、保険適用となったがんゲノムパネル検査を実施するようになってきました。

乳がん治療・乳房再建センターとは、主にアピアランス(外見)に関する連携を重視しています。抗がん剤による脱毛の対策など、標準治療だけでなくQOL(生活の質)の向上を目指します。

このように、各診療科や部門でよい治療を心がけるだけでなく、コーディネートにも力を注ぎ、医療レベルの向上、ひいては患者さんの満足度の向上にもつなげていきたいと考えています。

臨床腫瘍部が開設されたのは、2019年5月です。今はまだ、がん診療・包括ケアセンターや、臨床腫瘍部の方針について、実現できていないものもあります。しかし、患者さんにご満足いただける診療を目指して、スタッフ一丸となって診療を行っています。

医療の現場において、ゴールを目指すのは、患者さんご自身です。私たちは、患者さんがゴールに到達するまでしっかりとアシストしていきます。患者さんと一緒に、よい方向に向かっていけるような病院を目指しますので、患者さんにもぜひ、同じ思いを持って診療を受けていただけたらと思います。

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