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医療を提供するシステムの構築に尽力――名古屋市立大学病院 がんゲノム医療部、乳がん治療・乳房再建センター

医療を提供するシステムの構築に尽力――名古屋市立大学病院 がんゲノム医療部、乳がん治療・乳房再建センター
遠山 竜也 先生

名古屋市立大学病院 乳腺外科 部長、名古屋市立大学病院 がんゲノム医療部 部長、名古屋市立大学...

遠山 竜也 先生

目次
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名古屋市立大学病院のがんゲノム医療部は、患者さんの遺伝情報をもとに治療法を選択する“ゲノム医療”を担う部門です。乳がん治療・乳房再建センターは、遺伝性の乳がんを含め、ステージⅠからⅣまで乳がん患者さんの診療が可能な体制を整え、心のケアを含めたサポートを行っています。

2つの部門の部長を務める遠山先生に、各部門の特徴や取り組みを伺いました。

がんゲノム医療とは、患者さんのがんの原因をがん遺伝子パネル検査によって明らかにし、より適した治療薬を選択するという、新しいがん治療のひとつです。

これまで、がんの治療のために患者さんに用いる薬剤は、がんの種類ごとに保険承認されることが一般的でした。それに対して、患者さん一人ひとりのがんの原因を明らかにして、より適した治療薬を見つける検査方法が、2019年に保険適用されました。患者さんのがんに関する遺伝子を一度に100種類以上調べることができる“がん遺伝子パネル検査”という方法です。

この仕組みが登場したことで、たとえば、「乳がんの患者さんに、肺がんの患者さんと同じ遺伝子異常がみつかった。こちらの患者さんは、肺がんの治療に承認されている薬剤が効くかもしれない」という考え方をもとに、治療を行うことができるようになりました。

当院でがんゲノム外来を初めて受診される患者さんには、当院のがん医療支援部が窓口となり、診療をご案内しています。がんゲノム医療を受けるのがよいかどうかということも含めて、ご相談に応じています。

2018年4月、名古屋市立大学病院は“がんゲノム医療連携病院”に指定され、2018年10月に“がんゲノム外来”を開設しました。がんゲノム医療連携病院とは、がん遺伝子パネル検査や遺伝カウンセリングの実施、がんゲノム医療に関する情報提供などの役割を担う、国が定めた整備指針によって国に指定された病院のことです。

がんゲノム医療連携病院は、全国でおよそ150施設です(2019年4月時点)。がんゲノム医療を受けられる施設がまだ限られているからこそ、当院は、院外の患者さんからのお問い合わせにも対応し、院内外の患者さんをスムーズに受け入れる体制づくりに努めています。

また、がんゲノム医療を必要とするがん患者さんを継続的にサポートする体制づくりにも注力しています。たとえば、専門的な治療が必要な患者さんの場合、主治医が退職すると、同じ治療を継続することが難しくなることがあります。しかし、当院は、継続的に患者さんをサポートするために、医療を提供するシステムの構築に注力してきました。在籍する医師の専門分野に左右されず、同等の医療を提供できるよう努めていますので、安心してご通院いただければと思います。

患者さんの「こんな治療を受けていきたい」という声を伝えていくことが重要だと私は考えています。

たとえば、がんが再発した患者さんの治療は長期にわたることが多く、治療費が高額になることは、がんゲノム医療における大きな課題です。また、海外には、遺伝情報差別禁止法という法律がありますが、日本にはまだこのような法律がありません。がんゲノム検査を行うことで、偶発的に遺伝性疾患が見つかることもあります。遺伝情報が知られることで患者さんに不利益が生じないようにする仕組みを作ることが今後の大きな課題です。

ゲノム医療は、患者さんの声を国に届けることに大きな意義のある分野だと考えています。ゲノム医療においてお困りのことがあれば、患者さんからぜひ発信していただければと思います。

名古屋市立大学病院の乳がん治療・乳房再建センターは、ステージⅠからⅣまで幅広く乳がんの診療を行っています。放射線療法や、化学療法を組み合わせた治療も可能です。

また、乳がんの“乳房全切除術”という手術治療に加えて、“乳房再建術”も行えるようにしています。乳房再建術とは、乳房を切除する手術のあと、患者さんご自身の体から採取した組織や人工物などを用いて、新たに乳房をつくることをいいます。ご希望される方は、気兼ねなくご相談ください。

当センターでは、乳腺外科や形成外科に在籍する医師をはじめ、乳がん看護認定看護師、がんを専門とする薬剤師、臨床心理士、精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)などの多職種が連携して診療にあたっています。精神腫瘍医とは、がんに関するこころのケアを専門とする精神科の医師のことです。患者さんが前向きに治療に取り組んでいただけるよう、こころのケアの面でも、ご相談に応じています(詳しくは「がんの患者さんが抱える“つらさ”を和らげる、名古屋市立大学病院 緩和ケアチーム」をご覧ください)。

また、医師が患者さんにご説明をしたあと、もっと違う視点から説明を聞きたいというご要望があれば、看護師などのメディカルスタッフがご相談に応じます。医師には言えなくとも看護師には話しやすいということもあるかと思いますので、遠慮なくご相談ください。

当院では、患者さんが参加する会のサポートに力を入れています。

乳腺外科の患者会である“希望会(のぞみかい)”は、当院で乳がんの治療を受けた患者さんたちによって始まりました。現在は、院内だけでなく、他の病院で治療をされている患者さんにも門戸を開いた患者会となっており、患者さん同士で悩みを話し合い、情報交換できる場となっています。医師や看護師が参加して、乳がんに関する疑問に直接お答えすることもあります。

“乳がんヨガ教室”は、乳がんを経験した方が主催するヨガ教室です。当院の患者さんのなかに、元々ヨガ講師をしていた方がいらっしゃったことがきっかけで始まりました。乳がんの術後のエクササイズには、がんの再発を予防し、精神的に安定した状態を保つ効果があるといわれています。当院の乳腺外科の医師を中心としたメディカルスタッフが、開催の準備などをサポートしています。

当院は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC syndrome、以下「HBOC」)の診療にも対応しています。HBOCは、BRCA1またはBRCA2という遺伝子の変異が原因で、乳がんや卵巣がんなどのがんを発症しやすくなる病態です。

当院では、臨床遺伝部に在籍する認定遺伝カウンセラーが、乳がんの診療に関わっています。患者さんには、「もしもご自身に遺伝性のリスクがある場合、それを知りたいかどうか」を初診時にお聞きしています。ご希望の場合は、院内の臨床遺伝部に在籍する認定遺伝カウンセラーが、当院を受診した乳がんの患者さんの遺伝性乳がんのリスクを確認します。

遺伝情報は、患者さんご自身だけでなく血縁者にも関わる情報です。遺伝情報を知って、今後どのように対応していくか、ご相談いただければと思います。

当院は、患者さんに安心してご受診いただけるよう、安全な治療に努め、満足度の高い医療を提供することを目指しています。そのために、医師や看護師をはじめとしたメディカルスタッフの連携のさらなる充実を図っています。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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  • 名古屋市立大学病院 乳腺外科 部長、名古屋市立大学病院 がんゲノム医療部 部長、名古屋市立大学病院 乳がん治療・乳房再建センター センター長、名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野 教授

    遠山 竜也 先生

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