院長インタビュー

行政と力を合わせ、市民の健康や仕事と治療の両立支援に尽力する富山労災病院

行政と力を合わせ、市民の健康や仕事と治療の両立支援に尽力する富山労災病院
平野 典和 先生

富山労災病院 名誉院長

平野 典和 先生

目次
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富山労災病院はもともと、ダム建設などに伴う労働災害の患者さんに対応するために開設されました。その後、時代の流れとともに診療科と病床を増やし、現在は労災病院として“患者さんの仕事と治療の両立支援”などを行うとともに、救急医療やがん診療などを含め、地域医療に貢献しています。「富山県魚津市と互いに協力しつつ、地域に愛される病院を目指している」と話す院長の平野 典和(ひらの のりかず)先生に、同院の特色や強みについてお話を伺いました。

富山労災病院の外観
富山労災病院の外観

当院はもともと高度経済成長の時代に当地のダム建設に伴う労働災害の増加という背景をふまえ、その対応を目的として1958年に開設されました。開設当時の診療科は三つ(内科、外科、整形外科)、病床数は40床でした。このように国の政策病院として始まった当院ですが、その後、時代の流れとともに診療科と病床を増やし、現在は23の診療科と263の病床を備え、魚津市とも良好な関係を築きながら、市民病院の役割を担って地域に貢献しています。

当院は、患者さんに身近な地域で医療を提供するための“地域医療支援病院”に指定されており、かかりつけ医(地域の診療所など)を支援しています。また、救急受け入れに関して可能な限り断らないことを大原則としています。消防や救急と密接な関係を保ち、しっかりと連携を取りながら一次救急に取り組んでいます。

救急医療への取り組み
救急医療への取り組み

当院は、労災関連の病気の診療に積極的に取り組んでいます。

たとえば、呼吸器科にアスベスト疾患センターを設置し、アスベスト(石綿)関連疾患や塵肺などの診療を行っています。アスベスト関連業務に従事した経験がある方や、近所にアスベストを扱う工場があった方、それらが原因で病気になったのではないかと不安に思われている方などは、ぜひ一度ご来院いただければ幸いです。また、「労災として国の補償を受けたい」といったご相談もお受けしています。

内科(消化器科)ではB型、C型肝炎の診療にも取り組んでいます。特にC型肝炎は慢性化する可能性が高いため、適切な評価を行いながら治療を行います。

当院は、富山県が指定する“地域がん診療連携拠点病院”として、がん診療に取り組んでいます。具体的には、消化器科における入院治療や、外来でのがんに対する化学療法、早期の胃がんに対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などが挙げられます。内視鏡を用いるESDは、開腹手術と比べて患者さんの身体的な負担が少ない治療方法です。

また魚津市や金沢医科大学と協力し、女性特有のがんの検診を充実させる取り組みも行っています。その一つとして、子宮頸がんに対するHPV併用検診という新しい検査法を令和2年度から実施予定です。

当院には、整形外科専門医(日本整形外科学会認定)が私のほかに常勤で2人在籍しており(2019年12月現在)、1人は人工関節を、もう1人は内視鏡手術を専門としています。また、脊椎を専門とする医師を富山大学から非常勤で招いており、成人脊柱変形(背骨が曲がる病気)の患者さんに対して、手術による治療などを行っています。成人脊柱変形の手術は身体的な負担が大きく、全ての患者さんが適応となるわけではありませんが、治療によって少しでもQOL(生活の質)を向上させることを目指しています。

当院における泌尿器科の治療として特徴的なものは、尿失禁に対する手術治療です。尿失禁は女性に多く見られる泌尿器の病気です。「病院を受診するのが恥ずかしい」という理由で我慢してしまう方がいらっしゃいますが、手術によって改善する症例もあります。お悩みの方はぜひ一度、ご相談いただければ幸いです。

泌尿器科の強みの一つは、前立腺がんに対する内視鏡(腹腔鏡)手術です。腹部に小さな穴を数か所開け、内視鏡で患部を観察しながら前立腺を摘出します。患者さんの体にかかる負担や術後の痛みが少ないという特徴があります。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

労災病院として、患者さんが仕事と治療を両立するための支援に力を入れています。

医学の進歩により、昨今は病気になったからといって仕事を辞めるのではなく、“治療をしながら働く(仕事と治療を両立する)”ことが一般的になりつつあります。しかしその一方で、現在でも「病気になったら働けない」と考える患者さんがおられます。このような流れのなかで、私たちは両立支援を行うコーディネーターを養成し、患者さんへのはたらきかけを行う役目があると考えています。

また、富山県魚津地域産業保健センター(行政)と連携を取りながら、産業医を擁していない中小企業の産業保健活動を中心に取り組んでいます。この取り組みの背景には、産業医がいない企業で日々の仕事に従事されている方々の健康管理をできるだけサポートしたいという思いがあります。

魚津市医師会や魚津市と共同で市民公開講座を定期的に開催しています。講座の内容は毎回テーマを変えて皆さんに興味を持っていただけるように努めております。また、今年度は婦人科の医師が地域の中学校や高校に赴き、性教育の講座を開きました。性に関する正しい知識を持つことは大切である一方、家族と話すのが難しいテーマです。そのため、私たちの公開講座が正しい知識を身につける機会になれば本望です。このような活動は、行政との関わりが深い当院だからこそ行える活動だと自負しています。

当院は、地域連携における富山大学医学部の研修協力機関として医学部生を受け入れており、地域医療研修の研修医の受け入れにも対応しています。また、薬学部や看護学部、看護専門学校の学生も定期的に実習に来てくださっています。

このように医学部生や研修医、学生に医療を教えることは、私どもにとっても非常に勉強になります。私たちは今後もこのような研修を積極的に行い、医療従事者の教育に貢献していきたいと思います。

地域の医療従事者を対象とした講習会の様子
地域の医療従事者を対象とした講習会の様子

平野先生

当院は、開設以来60年以上にわたって、魚津市の行政と共に歩んできました。これからも今まで以上に、魚津市の皆さんのための病院であり続けたいと思います。そのためにたゆまぬ努力を続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

医師というのは、非常にやりがいの大きい仕事です。自身のキャリア形成ももちろん大切ですが、同時に周囲から信頼される医師を目指してください。一つ一つの症例と真摯に向き合い、患者さんを大切にしながら医療に携わり続けてほしいと思います。

あわせて、先輩の医師や医師以外の人たちとの関係も大事にしてほしいです。特に当院のような一般病院では、自分の所属教室以外の先生方からも多くを学ぶことができますから、そのような機会を通じて、ぜひ自分自身の視野を広げてください。

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