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早期の段階で発見されやすい膀胱がんの予後とは?〜発症数や生存率、再発の可能性について解説〜

早期の段階で発見されやすい膀胱がんの予後とは?〜発症数や生存率、再発の可能性について解説〜
猪口 淳一 先生

九州大学大学院医学研究院 泌尿器科学分野 准教授

猪口 淳一 先生

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膀胱がんは60歳以上の男性に多くみられます。血尿や排尿痛などの症状が現れやすいため、比較的早期の段階で発見されやすいのが特徴です。

しかし、進行すると転移を生じることも珍しくなく予後は悪化していきます。また、発見された段階によって治療法が異なり、進行するほど治療が難しくなる傾向にあると考えられます。

本記事では膀胱がんの予後や治療法について詳しく解説します。

日本では年間約23,000人もの人が新たに膀胱がんと診断されており、膀胱がんの年齢調整発症率は10万人あたり7人です。男性の発症率のほうが女性より約3倍高くなっています。

がん”といえば死に直結するとのイメージがありますが、近年では治療技術などの進歩によって完治するがんも増えてきました。膀胱がんも比較的早期に見つかることが多いので治る見込みが高いがんの1つです。

がんが上皮のみに限局している早期の段階(ステージI)で発見された場合、5年生存率は87%と高い割合であることが分かっています。一方、がんが膀胱の筋肉にまで達している段階(ステージII、III)では43~57%、遠隔転移がある段階(ステージIV)では19%であり、進行するにしたがって5年生存率は低くなります。

また、膀胱がんが原因で1年間に死亡する人は、男性の場合は人口10万人あたり10.4人、女性の場合は4.6人です。全てのがんの中では決して高い数値ではありませんが、早期発見しやすいがんであるものの膀胱がんが原因で亡くなる人は一定数いるため注意が必要です。

膀胱がんの治療法は、がんの進行度や範囲によって大きく異なります。それぞれの主な治療法は次のとおりです。

経尿道的腫瘍切除術(TURBT)、膀胱内注入療法

尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を観察しながら同時にがんを切除する治療です。手術で腹部を切開する必要がなく、膀胱を残すことができるため体への負担が少ない治療法といえます。また再発を防ぐために切除後、膀胱内に抗がん剤やBCGの注入を行うことも少なくありません。

膀胱全摘除術

早期の段階であってもがんが広範囲に広がっているケースやTURBT後に再発を繰り返すケースでは、膀胱の全摘除が考慮されます。

膀胱全摘除術

がんが膀胱の筋肉の層にまで広がっている場合は膀胱を全摘除する必要があります。また、膀胱を摘除した場合は尿の排泄路を確保するため、尿管と腸をつなげる回腸導管造設術や代用膀胱を形成する新膀胱造設術を同時に行います。

抗がん剤治療、放射線治療

一般的には手術で膀胱を摘出する場合、手術の前に抗がん剤治療を行い手術後の再発を予防します。一方、合併症などのため手術が受けられない方や手術を拒否される方に抗がん剤治療、放射線治療を行うことがあります。

抗がん剤治療、免疫治療、放射線治療

肝臓や肺などへの転移がある場合は、がんを少しでも縮小させ延命することを目的として抗がん剤治療や免疫治療が行われます。また、骨転移など転移した場所の痛みに対して放射線治療を行うことがあります。

膀胱がんは進行の程度によって、上で述べたように治療法が大きく異なります。

がんの治療後に心配される再発リスクは患者さん一人ひとりの状態によって違いますが、一般的に早期膀胱がんは再発を繰り返しやすく定期的な検査を欠かすことができません。また、再発を予防するために膀胱内に抗がん剤やBCGを注入する治療も行われます。しかし、それでも再発を制御できない場合は膀胱全摘除術を検討する必要があります。

膀胱全摘除術を行う場合は再発を予防するため、一般的には手術の前に抗がん剤治療を行いますが、腎盂(じんう)や尿管などに新たながんができることもあります。また、抗がん剤や免疫治療は副作用があるため体調に合わせて慎重に行っていきます。

どのがんに関しても同様ですが、がんは早期発見・早期治療が何よりも大切です。

特に膀胱がんは早期の段階で治療すれば治る可能性が高いため、早い段階で発見することが望ましいと考えられます。また、治療に関しても早期の段階であれば膀胱を摘出せずに済むため、体への負担を最小限に抑えることが可能です。

血尿や排尿時の痛み、頻尿、尿の勢いの低下など、気になる症状がある場合はできるだけ早いうちに病院を受診するようにしましょう。

参考文献

  1. 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

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