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早期の段階で発見されやすい膀胱がんの予後とは? 〜発症数や再発の可能性について解説〜

早期の段階で発見されやすい膀胱がんの予後とは? 〜発症数や再発の可能性について解説〜
猪口 淳一 先生

琉球大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学講座 教授

猪口 淳一 先生

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膀胱がんは60歳以上の男性に多くみられます。血尿や排尿痛などの症状が現れやすいため、比較的早期の段階で発見されやすいのが特徴です。

しかし、進行すると転移を生じることもあり、また発見された段階によって治療法が異なります。

本記事では膀胱がんの予後や治療法について詳しく解説します。

日本では年間約23,000人が新たに膀胱がんと診断されており(2019年時点)、人口10万あたりの罹患率は18.5例です。男性の発症率のほうが女性より約3倍高くなっています。

膀胱がんは、発症初期に痛みを伴わない血尿がみられるほか、頻尿や排尿痛、残尿感などを生じることがあり、多くは比較的早期に見つかります。なお、がんが膀胱の表面を覆う粘膜(尿路上皮)のみに限局している早期の段階(ステージI)で発見された場合、5年生存率は82%と高い割合であることが分かっています。

膀胱がんにはさまざまな種類がありますが、90%以上は尿路上皮がんです。尿路上皮がんは進行度によって、尿路上皮にがんがとどまっている“表在性膀胱がん(筋層非浸潤がん)”と、膀胱の筋肉層までがんが広がっている“浸潤性膀胱がん(筋層浸潤性膀胱がん)”に分けられます。表在性膀胱がんの場合、予後は良好ですが膀胱内に再発するケースが多いため、定期的に検査を行い観察する必要があります。

一方、浸潤性膀胱がんの場合は、がんが転移しているかどうかによって治療方法や予後が異なります。

膀胱がんの治療法は、がんの進行度や範囲によって大きく異なります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、膀胱内注入療法

尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を観察しながら同時にがんを切除する治療です。手術で腹部を切開する必要がなく、膀胱を残すことができるため体への負担が少ない治療法といえます。また再発を防ぐために切除後、膀胱内に抗がん薬やBCGの注入を行うこともあります。

膀胱全摘除術

早期の段階であってもがんが広範囲に広がっているケースやTURBT後に再発を繰り返すケースでは、膀胱の全摘除が考慮されます。

膀胱全摘除術

がんが膀胱の筋肉の層にまで広がっている場合は膀胱を全摘除する必要があります。また、膀胱を摘除した場合は尿の排泄路を確保するため、尿管と腸をつなげる回腸導管造設術(かいちょうどうかんぞうせつじゅつ)や代用膀胱を形成する新膀胱造設術(しんぼうこうぞうせつじゅつ)を同時に行います。

抗がん薬治療、放射線治療

手術で膀胱を摘出する場合、手術後の再発を予防するために手術の前に抗がん薬治療を行います。そのほか、合併症などのため手術が受けられない方や手術を希望しない方に抗がん薬治療、放射線治療を行うことがあります。

抗がん薬治療、免疫治療、放射線治療

肝臓や肺などへの転移がある場合は、がんを縮小させることを目的として抗がん薬治療や免疫治療が行われます。また、転移した場所の痛みに対して放射線治療を行うことがあります。

がんの治療後の再発リスクは患者さん一人ひとりの状態によって異なりますが、一般的に早期膀胱がんは再発を繰り返しやすいため、定期的な検査が欠かせません。また、再発を予防するために膀胱内に抗がん薬やBCGを注入する治療も行われ、それでも再発を制御できない場合は膀胱全摘除術を検討する必要があります。

膀胱と同じ尿路上皮で覆われる腎盂(じんう)や尿管などに新たながんができた場合や、膀胱全摘除術時の病理検査結果で進行したがんが残っている場合は、抗がん薬や免疫治療などによる補助療法が行われます。ただし、これら抗がん薬や免疫治療は副作用が生じる可能性があるため体調に合わせて慎重に行います。

どのがんに関しても同様ですが、がんは早期発見・早期治療が何よりも大切です。

特に膀胱がんは早期の段階で治療すれば治る可能性が高いため、早い段階で発見することが望ましいと考えられます。また、治療に関しても早期の段階であれば膀胱を摘出せずに済むため、体への負担を最小限に抑えることが可能です。

血尿や排尿時の痛み、頻尿、尿の勢いの低下など、気になる症状がある場合はできるだけ早いうちに病院を受診するようにしましょう。

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