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再発率が高い膀胱がんの特徴――リスク因子や症状、予防について

再発率が高い膀胱がんの特徴――リスク因子や症状、予防について
安達 高久 先生

地方独立行政法人 大阪市民病院機構 十三市民病院 副院長/泌尿器科 部長/医療安全管理部長

安達 高久 先生

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膀胱の内側を覆う膀胱粘膜の尿路上皮というところにできるがんである“膀胱がん”。筋層には達していない粘膜下層までの早期のがんであれば内視鏡手術で治療可能であるため、病気の兆候を見逃さずになるべく早く検査を受ける必要があるでしょう。また、再発率が高いがんであるため、発症リスクが高い方は特に予防に努めることが重要といえます。

今回は、大阪市立十三市民病院 泌尿器科部長の安達 高久(あだち たかひさ)先生に膀胱がんの特徴や注意すべき症状、予防策などについてお話を伺いました。

膀胱は腎臓でつくられた尿を一時的にためておき、一定の量に達したら尿道を通じて体外に排出するという役割を担い、腎盂(じんう)や尿管と同じ性質の尿路上皮という粘膜に覆われています。膀胱がんは膀胱の尿路上皮から発生するがんですが、まれに性質の異なる扁平上皮がんやそのほかのがんも発生します。高齢になるほど罹患率が高くなり、罹患者の男女比はおよそ3対1で、男性に多くみられます。

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膀胱がんのもっとも高い発症リスクは喫煙であり、喫煙者は非喫煙者の2~4倍の発症リスクがあるといわれています。一方で、禁煙により発症リスクが低下することが明らかになっています。そのほか、染料(芳香族アミン)や特定の化学薬品を扱う方に職業性膀胱がんの発生が認められ、フェナセチン含有鎮痛薬やシクロフォスファミド(抗がん剤)などの薬剤、カテーテル留置などの慢性刺激、ビルハルツ住血吸虫症(骨盤内の静脈内に寄生した虫による感染症)なども原因と考えられています。

国立がん研究センターがん情報サービスが発表している最新の統計データによると、膀胱がんの診断数や罹患率、5年相対生存率(日本人全体の5年後の生存率と、がんと診断された方の5年後の生存率を比較してどれだけ高いか示した指標。数値が高いほど5年後の生存率が高いことを示す。)などのデータは以下となっています(2022年12月時点)。

  • 診断数(2019年):23,383例(男性:17,498例、女性:5,885例)
  • 死亡数(2020年):9,168例(男性:6,244例、女性:2,924例)
  • 人口10万人あたりの罹患率(2019年):18.5例
  • 人口10万人あたりの死亡率(2021年):7.7例
  • 5年相対生存率(1993~2011年の診断例):限局*87.3%、領域**38.0%、遠隔***9.5%

*限局:膀胱に(主に筋層までに)がんがとどまっているもの。
**領域:膀胱に隣接する小骨盤内や総腸骨のリンパ節に転移が認められるもの。
***遠隔:膀胱から離れた臓器やリンパ節などに転移が認められるもの。

膀胱がんの再発頻度は非常に高く、非筋層浸潤がんでは5年膀胱内再発率はBCG膀胱内注入療法*を行わなかった場合では31~78%、本治療を行った場合では25.9~55.4%となっています(『膀胱癌診療ガイドライン2019年版』より)。

よって早期発見も大事ですが、手術後の定期的な通院や検査が特に重要です。同ガイドラインではリスク分類による定期的な膀胱鏡検査の実施が提唱されています。

*BCG膀胱内注入療法:がん細胞を攻撃する免疫を活性化させるために、結核予防のワクチンと同じBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療法。

大まかな膀胱がんのステージ診断を下図に示します。Ta、Tis、T1を非筋層浸潤がん、T2以上(~T4)を筋層浸潤がんと区分しています。

多くは非筋層浸潤がんで発見されるため内視鏡手術の適応となりますが、筋層浸潤がん(進行がん)になると膀胱全摘出術や尿路変向術が必要になり、治療の規模や術後の経過、生活などが大きく変わります。また初期治療の際に非筋層浸潤がんであっても、5年で筋層浸潤がんへ進展する確率が0.8~45%(BCG膀胱内注入療法を施行したものでは2.4~18.9%)あり、注意が必要です。

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初期段階では目立った自覚症状はありません。そのため、肉眼で確認できる血尿が出て異常に気付く場合がほとんどです。そのほか、頻尿、尿意切迫感、排尿時痛、残尿感などの膀胱刺激症状が現れる方もいます。また、ほかの病気などでCT検査や超音波検査を受けた際に、がんを疑う腫瘤(しゅりゅう)(固まり)が偶然見つかるケースもあります。また尿の細胞診検査を受けた際に、悪性を疑う腫瘍細胞が尿中に発見され、診断に至るケースもあります。

さらに膀胱がんが進行すると、尿が出にくくなったり、水腎症や腎機能障害の影響によってわき腹や腰、背中などが痛んだり、足のむくみ、全身性浮腫といった症状が出現したりします。

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膀胱がんがあると腫瘍の粘膜がこすれて出血をきたし、血尿が出ることがあります。しかし、膀胱がんがあるからといって血尿は頻繁に出るものではありません。「痛みを伴わないから」「一度出ただけだから」と、そのままにせずに泌尿器科を受診することが大切です。

膀胱がんは60歳前後からリスクが高まり、65歳以上の方が罹患者の80%を占めるため、特に60歳以上の方は、一度でも血尿が出たら膀胱がんを疑い、なるべく早く泌尿器科で検査を受けることをおすすめします。

そのほか、頻尿や尿意切迫感などの症状がある方、人間ドック健康診断などで尿検査の項目に異常があった方も、早めに泌尿器科を受診してください。

膀胱がんの発症予防につながる生活習慣は明らかになっていません。しかし、喫煙は膀胱がんのリスク因子ですので、禁煙することが重要であると考えられます。また、日頃から水分を十分に摂取して、排尿を促す習慣をつけるとよいでしょう。

リスク因子に挙げた特殊な染料(芳香族アミン)や特定の化学薬品は、染色工場や印刷工場などで使用されます。これらの染料や薬品を扱う仕事をされている方は、膀胱がんに罹患するリスクが高まると考えられるため、定期的に泌尿器科で検査を受けることをおすすめします。

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