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膀胱がんの検査の種類とは?〜受診から診断までの流れや治療方針について解説〜

膀胱がんの検査の種類とは?〜受診から診断までの流れや治療方針について解説〜
猪口 淳一 先生

九州大学大学院医学研究院 泌尿器科学分野 准教授

猪口 淳一 先生

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膀胱がんは膀胱にできるがんのことです。早期に発見できれば治癒が見込めるがんであり、気になる症状があればなるべく早いタイミングで医療機関を受診することが大切になります。

それでは、どのような症状が出たときに、膀胱がんを疑うことができるのでしょうか。また、膀胱がんが疑われると、どのような検査が行われるのでしょうか。

膀胱がんでよくみられる症状が痛みを伴わない血尿です。血尿は、尿に血が混じっていることが見てわかる“無症候性肉眼的血尿”であったり、見た目では分からず尿検査でのみ分かる“顕微鏡的血尿”である場合があります。また、血尿より頻度は低いですが、排尿時の痛み、残尿感、頻尿といった膀胱炎によく似た症状がみられることもあります。

膀胱がんは、このような症状をきっかけとして医療機関を受診することで見つかることがほとんどです。また、健康診断の尿検査で潜血を指摘され、精密検査を行うことでがんが見つかることもあります。自分では深刻に捉えていなかった症状が思わぬ病気につながることもあるため、気になる症状があれば泌尿器科やかかりつけの内科等に相談することが大切です。

医療機関を受診して膀胱がんが疑われた場合、まず行う検査が尿を用いた検査、超音波検査、そして膀胱鏡検査です。

尿を用いた検査として、尿細胞診検査や腫瘍マーカーの検査がありますが、これらの検査だけで診断を確定することはできないため、精密検査を行う前のスクリーニング検査や、診断の補助として行うことが一般的です。膀胱鏡検査や尿細胞診検査で異常が認められた場合は、膀胱に内視鏡を挿入して組織を採取する経尿道的膀胱腫瘍切除術により膀胱の腫瘍組織を一部採取し、がん組織を顕微鏡で直接観察する病理検査をって、診断を確定します。

尿を採取し、尿中にがん細胞がないかを観察します。痛みのない検査ですが、患者によってはがんがあってもがん細胞が観察されないことがあります。しかし、より悪性度が高いがんでは異常がみられる頻度が高くなります。一般的に、スクリーニング検査や診断の補助として行われます。

膀胱がん患者の尿に特徴的にみられる物質の有無を観察します。NMP22、サイトケラチン8・18の2種類の腫瘍マーカーがあります。全ての患者で陽性となるわけではないため、スクリーニング検査や診断の補助として用いられます。

体の表面に機器を当て、超音波を放出することで膀胱の様子を観察します。がんのタイプによってはこの検査で見つけにくいものもあるため、膀胱鏡検査や尿細胞診検査も同時に行われることが一般的です。

尿道から膀胱鏡(内視鏡)を挿入して膀胱内を観察します。がんの発生部位や大きさ、大まかなタイプなどを確認することができます。

膀胱に内視鏡を挿入して組織を採取し、採取した組織を顕微鏡で観察してがんの種類や広がり方を観察します。確定診断のために行われる検査ですが、治療(がんの切除)と同時に行われる場合がほとんどです。

これらの検査のほか、膀胱がんと診断された場合は、合併症やがんの転移の有無を調べるためにCT、MRI検査などを行うこともあります。

膀胱がんの治療は大きく分けて手術、膀胱内注入療法、薬物療法(化学療法など)、放射線治療の四つがあります。どの治療を選択するかは症状や患者の生活環境等によっても異なります。

広がりが浅いがんでは経尿道的手術後に膀胱内への薬剤の注入を行う治療ができる場合もあります。一方、がんが膀胱の深くまで広がっているような場合は膀胱の摘出手術が必要になることがあり、この場合はある程度長い期間の入院が必要になることがあります。化学療法はがんが転移していて手術が難しい場合や、手術と組み合わせて補助的に用いる場合があります。この場合、入院が必要になるかどうかは治療法や症状によって異なります。

膀胱は尿を排出するための重要な器官で、膀胱の摘出手術を行った場合は手術前とは違う方法で尿を体外に排出する必要があります。そのための手術は尿路変向術と呼ばれ、小腸の一部を切り離し一方に尿管をつなぎ、反対側を腹壁に開けた孔から出す(ストーマ)回腸導管という方法が一般的です。

どのような治療を行ったとしても、治療後は定期的に医療機関を受診し、検査を行う必要があります。

膀胱がんが疑われたときは痛みが少ない検査を中心に実施し、これらの検査で異常が認められた場合に病理検査を行います。膀胱がんでみられる血尿は痛みを伴わないことも多く、忙しいと放置してしまうこともありますが、気になる症状があれば病院を受診し、早期発見につなげるようにしましょう。

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