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膀胱がんの原因〜喫煙や飲酒と膀胱がんの関係とは〜

膀胱がんの原因〜喫煙や飲酒と膀胱がんの関係とは〜
小林 一樹 先生

国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 診療部長/泌尿器科部長

小林 一樹 先生

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この記事の最終更新は2020年02月21日です。

膀胱がんは膀胱内を覆う上皮に発生するがんで、進行するにしたがって膀胱を形成する筋肉に浸潤(しんじゅん)し、リンパ節や骨、肺、肝臓などに転移します。

膀胱は腎臓で生成された尿を蓄える器官であるため、その内部にがんができると血尿や排尿障害などの症状が現れます。このため、早期の段階で発見されやすいがんといえますが、進行するとほかの重要な器官に転移を生じることも少なくないのです。

そんな膀胱がんにはいくつかの原因があることが科学的にも証明されており、“予防可能ながん”のひとつでもあります。

この記事では、膀胱がんの原因と予防法について詳しく解説します。

膀胱がんは人口10万人当たり10人程度の発症率とされており、日本では年間2万人もの人が新たに膀胱がんと診断されます。発症者は60歳以降の高齢者に多く、年齢が上昇するほど発症率が高くなるのが特徴です。また、男性は女性より3倍程度膀胱がんの発症率が高いことが分かっています。

膀胱がんは早期から、尿に血液が混ざる、排尿時に痛みが生じるといった症状が現れやすいため、比較的早い段階で発見されやすいがんです。しかし、早期段階での5年生存率は85%と高いものの、リンパ節転移が生じるような進行した段階では44%と低く、早期発見が重要と考えられます。

また、2006~2008年のデータによれば、男性の膀胱がん患者の5年生存率は78.9%であったのに対し、女性は66.8%でした。症状の現れ方に男女差はないため、女性のほうが血尿などの症状が見られた場合でも受診せずにいて発見が遅れる傾向にあるとされています。

膀胱がんの原因として科学的に証明されているのは“喫煙”です。

たばこの煙の中には発がん性物質を含む多くの有害物質が含まれているのは周知の事実であり、発がん性物質の数は50種類以上にも上ります。これらの発がん性物質の多くは血液中に溶けて全身を巡りますが、尿は血液の成分から生成されるため、尿中には多くの発がん性物質が含まれることになります。膀胱は尿を蓄えるための器官であり、内部の上皮が発がん性物質を多く含んだ尿にさらされることでがんを発症しやすくなるのです。

また近年の研究では、飲酒も膀胱がんの発症に関与することが示唆されています。アルコールは分解される段階でアセトアルデヒドと呼ばれる物質を生成します。このアセトアルデヒドにも発がん性があるとされており、多量飲酒によって多くのアセトアルデヒドが尿中に排出されることで膀胱がんを発症しやすくなると考えられているのです。

そのほか、膀胱がんの原因として科学的に証明されているものは、主に有機塗料に含まれるナフチルアミン、ベンゼン、アミノビフェニルなどの有害物質が挙げられます。これらの物質が含まれる塗料を習慣的に使用する人は、膀胱がんの発症率が高いことも分かっており、いわば“職業病”のひとつと考えてもよいでしょう。

また、寄生虫の一種であるビルハルツ住血吸(じゅうけつきゅう)(ちゅう)の感染、一種の鎮痛剤や免疫抑制剤の長期使用、膀胱に近い臓器への放射線治療なども膀胱がんのリスクを上昇させる可能性があるとされています。

親や兄弟などの近い血縁者が膀胱がんになったことがある人は、膀胱がんの発症率がわずかに上昇することが分かっています。しかし、明らかな遺伝のメカニズムは解明されておらず、遺伝性はほぼないと考えてよいでしょう。

膀胱がんに限らず、さまざまながんの原因としてコーヒーを挙げたり、コーヒーの飲み過ぎはがんを招くと考えられていることがあります。しかし、コーヒーを日常的に飲んでいた場合でも膀胱がんの発症率が上昇するという科学的な根拠はありません。

国際がん研究機関(IARC)は、コーヒーに含まれるアクリルアミドと呼ばれる成分は“おそらく発がん性がある物質”と分類しており、近年アメリカの一部の州ではコーヒー販売業者に対して発がん性があることをパッケージに表示するか否かという議論が巻き起こっていました。このため、コーヒーはがんになるという説が出回ったと考えられています。

しかし、統計的にコーヒーを多く飲んでいる人ほど膀胱がんをはじめとしたさまざまながんの発症率が上昇するとの根拠はなく、因果関係はないと考えてよいでしょう。

膀胱がんを予防するには、上で述べたような発がん性を有する物質を生活の中からできるだけ排除することが大切です。特に喫煙は膀胱以外のがんの原因にもなるため、一刻も早い禁煙が推奨されています。

また、膀胱がんの原因となる発がん性物質は、濃縮されて尿中に含まれることで発症率を上昇させると考えられています。このため、膀胱がんを予防するには水分を多く取って尿の濃度を薄め、できるだけ早く膀胱内の発がん性物質を尿と共に排泄させることが大切です。

また、膀胱がんのもっとも頻度の高い症状は肉眼的血尿です。早期発見のためにも、目に見える血尿があった場合は泌尿器科や、かかりつけの内科に相談するようにしましょう。膀胱がんは自治体などが行うがん検診の項目には含まれていませんが、1年に一度は尿検査を行うようにしましょう。また、人間ドックなどで超音波検査などを定期的に受けるのもよいでしょう。

膀胱がんは5年生存率が高いとされていますが、発見が遅れると予後が悪くなるがんのひとつでもあります。しかし、科学的に証明されている発症原因があるため、予防できるともいえるでしょう。

膀胱がんの原因として知られるのは喫煙や化学塗料に含まれる有害物質などです。膀胱がんを予防するには、これらの物質をできるだけ遠ざける生活を心がけましょう。

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