
膀胱がんは膀胱内を覆う上皮に発生するがんで、進行するにしたがって膀胱を形成する筋肉に浸潤し、リンパ節や骨、肺、肝臓などに転移します。
膀胱は腎臓で生成された尿を蓄える器官であるため、その内部にがんができると血尿や排尿障害などの症状が現れます。このため、早期の段階で発見されやすいがんといえますが、進行するとほかの重要な器官に転移を生じることも少なくないのです。
そんな膀胱がんにはいくつかの原因があることが科学的にも証明されており、“予防可能ながん”のひとつでもあります。
この記事では、膀胱がんの原因と予防法について詳しく解説します。
膀胱がんは人口10万人当たり10人程度の発症率とされており、日本では年間2万人もの人が新たに膀胱がんと診断されます。発症者は60歳以降の高齢者に多く、年齢が上昇するほど発症率が高くなるのが特徴です。また、男性は女性より3倍程度膀胱がんの発症率が高いことが分かっています。
膀胱がんは早期から、尿に血液が混ざる、排尿時に痛みが生じるといった症状が現れやすいため、比較的早い段階で発見されやすいがんです。しかし、早期段階での5年生存率は85%と高いものの、リンパ節転移が生じるような進行した段階では44%と低く、早期発見が重要と考えられます。
また、2006~2008年のデータによれば、男性の膀胱がん患者の5年生存率は78.9%であったのに対し、女性は66.8%でした。症状の現れ方に男女差はないため、女性のほうが血尿などの症状が見られた場合でも受診せずにいて発見が遅れる傾向にあるとされています。
膀胱がんの原因として科学的に証明されているのは“喫煙”です。
たばこの煙の中には発がん性物質を含む多くの有害物質が含まれているのは周知の事実であり、発がん性物質の数は50種類以上にも上ります。これらの発がん性物質の多くは血液中に溶けて全身を巡りますが、尿は血液の成分から生成されるため、尿中には多くの発がん性物質が含まれることになります。膀胱は尿を蓄えるための器官であり、内部の上皮が発がん性物質を多く含んだ尿にさらされることでがんを発症しやすくなるのです。
また近年の研究では、飲酒も膀胱がんの発症に関与することが示唆されています。アルコールは分解される段階でアセトアルデヒドと呼ばれる物質を生成します。このアセトアルデヒドにも発がん性があるとされており、多量飲酒によって多くのアセトアルデヒドが尿中に排出されることで膀胱がんを発症しやすくなると考えられているのです。
そのほか、膀胱がんの原因として科学的に証明されているものは、主に有機塗料に含まれるナフチルアミン、ベンゼン、アミノビフェニルなどの有害物質が挙げられます。これらの物質が含まれる塗料を習慣的に使用する人は、膀胱がんの発症率が高いことも分かっており、いわば“職業病”のひとつと考えてもよいでしょう。
また、寄生虫の一種であるビルハルツ住血吸虫の感染、一種の鎮痛剤や免疫抑制剤の長期使用、膀胱に近い臓器への放射線治療なども膀胱がんのリスクを上昇させる可能性があるとされています。
親や兄弟などの近い血縁者が膀胱がんになったことがある人は、膀胱がんの発症率がわずかに上昇することが分かっています。しかし、明らかな遺伝のメカニズムは解明されておらず、遺伝性はほぼないと考えてよいでしょう。
膀胱がんに限らず、さまざまながんの原因としてコーヒーを挙げたり、コーヒーの飲み過ぎはがんを招くと考えられていることがあります。しかし、コーヒーを日常的に飲んでいた場合でも膀胱がんの発症率が上昇するという科学的な根拠はありません。
国際がん研究機関(IARC)は、コーヒーに含まれるアクリルアミドと呼ばれる成分は“おそらく発がん性がある物質”と分類しており、近年アメリカの一部の州ではコーヒー販売業者に対して発がん性があることをパッケージに表示するか否かという議論が巻き起こっていました。このため、コーヒーはがんになるという説が出回ったと考えられています。
しかし、統計的にコーヒーを多く飲んでいる人ほど膀胱がんをはじめとしたさまざまながんの発症率が上昇するとの根拠はなく、因果関係はないと考えてよいでしょう。
膀胱がんを予防するには、上で述べたような発がん性を有する物質を生活の中からできるだけ排除することが大切です。特に喫煙は膀胱以外のがんの原因にもなるため、一刻も早い禁煙が推奨されています。
また、膀胱がんの原因となる発がん性物質は、濃縮されて尿中に含まれることで発症率を上昇させると考えられています。このため、膀胱がんを予防するには水分を多く取って尿の濃度を薄め、できるだけ早く膀胱内の発がん性物質を尿と共に排泄させることが大切です。
また、膀胱がんのもっとも頻度の高い症状は肉眼的血尿です。早期発見のためにも、目に見える血尿があった場合は泌尿器科や、かかりつけの内科に相談するようにしましょう。膀胱がんは自治体などが行うがん検診の項目には含まれていませんが、1年に一度は尿検査を行うようにしましょう。また、人間ドックなどで超音波検査などを定期的に受けるのもよいでしょう。
膀胱がんは5年生存率が高いとされていますが、発見が遅れると予後が悪くなるがんのひとつでもあります。しかし、科学的に証明されている発症原因があるため、予防できるともいえるでしょう。
膀胱がんの原因として知られるのは喫煙や化学塗料に含まれる有害物質などです。膀胱がんを予防するには、これらの物質をできるだけ遠ざける生活を心がけましょう。
国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 診療部長/泌尿器科部長
周辺で膀胱がんの実績がある医師
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 泌尿器科 副医長
国立病院機構 東京医療センターー低侵襲な医療を患者さんに提供することで地域医療に貢献する
区西南部医療圏の医療を支える東京医療センターによる、前立腺がん・子宮体がん・胃がん.大腸がん・慢性中耳炎.真珠腫性中耳炎の治療をテーマにした特集です。
内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線診断科、放射線治療科
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順天堂大学医学部附属練馬病院 泌尿器科 教授・診療科長
順天堂大学医学部附属練馬病院―“ワンチーム”で充実した医療を地域に届ける
練馬区の医療を支える順天堂大学医学部附属練馬病院によるを不整脈・子宮頸がん・大腸がん・前立腺がんテーマにした特集です。
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医療法人インテグレス 新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
胃・大腸カメラを“眠ったまま”で、消化器と泌尿器の症状を幅広く診療
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック(東京都港区新橋1丁目11-5 コルティーレ銀座ビル 7F 8F:JR・東京メトロ・都営線・ゆりかもめ「新橋」駅 徒歩1分)の病院ページ。
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再発リスクの評価
表在性膀胱癌の手術を6月に行い、単発抗がん剤注入を受けました。 その後、先9月の膀胱鏡検査では、再発をしていませんでした。 比較的簡易な処置で済む癌ですが、1年以内の再発率60%程度と高く、一度再発すると2度目は70%、3度目80%、とさらに上がるそうです。 よって近場の泌尿器科のクリニックでがん細胞診の尿検査を毎月受け、3ヶ月毎に膀胱鏡検査をすることにしています。 しかし、その確率の高さを考えると憂鬱です。先手を打ち再発リスクを下げる方法はないのでしょうか? また、よしんば再発が免れたとしても、いったいあと何年再発への注意をしなければいけないのか?見通しが欲しいです。
治療方法など
2018.6に非浸潤型膀胱がん発症、2ヶ所Ta、ローグレード 2019.5再発2ヶ所、2020.5再発2.5ヶ所手術は実施予定 (2018.11、2019.12は再発せず) いずれもTURBT手術を実施 手術後、抗がん剤注入せず 抗がん剤注入しないのは効果が変わらない 又同病院ではやっていない とのこと (病院は、がんを診察したクリニックからの紹介) 質問 1.抗がん剤の効果は無いのか 2.再発時の手術後、抗がん剤は注入しないのか 3.将来、BCG注入必要になった際、BCGは副作用があり、その代替で抗がん剤注入しないのか 4.転院しても抗がん剤注入した方が良いのか 5.転院は簡単に出来るのか 6.転院の手続きはどうするのか 7.BCG注入で萎縮の副作用があれば、膀胱を切除するしかないのか 以上
86歳、膀胱癌で手術後のBCG注入治療は必要か教えてください。
86歳で膀胱癌と診断され手術後BCG注入治療を勧められたのですが、介護施設の主治医に副作用が大変だから勧められないと言われ治療をお断りしたら再発・再発で1年間に3度の手術を受ける結果となりました。3月3日に手術をしましたのでまた1ヶ月後に治療を勧められると思います。癌は再発、転移するので治療が絶対必要だとおっしゃる先生と、高齢で進行がゆっくりなのに副作用が大変な治療をする必要はないとおっしゃる介護施設の主治医、知識や経験が全くない私はどちらを選択すれば良いのか悩んでおります。良きアドバイスをどうぞよろしくお願い致します。
膀胱がんでのBCGについて
来月からBCGを開始するのですが 1.BCGはやるべきか 2.一般に生じる副作用はどのようなものか 3.BCGは恐ろしい気がするのですが
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