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インタビュー

膀胱がんの治療-経尿道的膀胱腫瘍切除術と膀胱全摘除術

膀胱がんの治療-経尿道的膀胱腫瘍切除術と膀胱全摘除術
戸邉 豊総 先生

済生会宇都宮病院 泌尿器科 主任診療科長

戸邉 豊総 先生

この記事の最終更新は2016年07月14日です。

膀胱がんの多くは粘膜の表面にとどまるため、根が浅い場合には内視鏡による手術が可能です。しかし根が深く筋層にまで達しているがんの場合には膀胱全体を手術で取り除く必要があります。膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術と膀胱全摘除術、そして膀胱全摘にともなう尿路変更について、済生会宇都宮病院泌尿器科主任診療科長の戸邉豊総先生にお話をうかがいました。

がんが膀胱の粘膜の表面にあり、根が浅いものを表在性膀胱がんといいます。分類上は筋層非浸潤性膀胱がんといい、膀胱がん全体の約8割を占めています。この筋層非浸潤性膀胱がんは経尿道的に内視鏡で手術することができます。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(済生会宇都宮病院 広報誌より引用)

 

膀胱がんは再発しやすいため、膀胱の中にBCG(結核予防ワクチン)を注入するという治療があります。BCG治療によって再発率を下げることができるため、表在性がんの中でも悪性度の高いものに対しては、このBCG治療が標準的な治療となっています。ただし、がんの根が深く筋層まで達している浸潤度の高いがんに対しては膀胱を全部取り除いて尿路の変更を行います。

膀胱を取ってしまった場合の尿路変更としては、尿管を直接皮膚に出す尿管皮膚瘻(にょうかんひふろう)という方法が一番シンプルなパターンです。そして次に回腸の一部を使って体の外にストマ(排泄口)をつけて、そこに尿管を吻合(ふんごう・つなぎ合わせること)するという方法があります。これを回腸導管(かいちょうどうかん)といいます。

回腸導管でストマを増設して、そこにパウチと呼ばれる袋を付けて尿をためる方法は一般的によく行われる尿路変更ですが、ストマが飛び出してしまうヘルニアなどの合併症もあり、審美的にも良くないという欠点があります。

そこでストマを従来よりも小さくして、尿をためる体内留置層を自分の腸で作る方法が開発されました。体の外にパウチをつけるのではなく、小さくなったストマにカテーテルを入れて、自分の意志で尿を出すことができます。

これが非失禁型自己導尿型リザーバーと呼ばれる方法で、小腸を使ったり大腸回盲部(だいちょうかいもうぶ・小腸と大腸がつながる部分)を使ったりしていました。1990年頃には一時期、この方法がさかんに行われていました。

ただし、この方法にも問題点がありました。腸粘膜から絶えず出てくる粘液を自分で洗うなど毎日の管理が必要なうえ、詰まってしまうとパウチの中に石ができてしまいます。尿路変更をするとただでさえ結石ができやすくなるため、結石ができないよう管理することは容易ではありませんでした。

非失禁型自己導尿型リザーバーは腸である程度の尿をためられる袋を作ることができるようになっていました。そこでスイス・ベルン大学のUrs E. Studer教授がそれを尿道につないで排尿できるようにする方法を開発しました。それがStuder式回腸代用膀胱造設術です。

Studer式回腸代用膀胱造設術(済生会宇都宮病院 広報誌より引用)

 

私は済生会宇都宮病院に来る前に千葉大学医学部附属病院にいたのですが、その当時、スイスに留学してStuder教授の下で直接指導を受け、このStuder式回腸代用膀胱造設術を導入しました。現在、済生会宇都宮病院でもこの術式を積極的に行っています。

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