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非筋層浸潤膀胱がんに対するTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)、膀胱内注入療法

非筋層浸潤膀胱がんに対するTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)、膀胱内注入療法
安達 高久 先生

地方独立行政法人 大阪市民病院機構 十三市民病院 副院長/泌尿器科 部長/医療安全管理部長

安達 高久 先生

目次
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膀胱がんの中でも“非筋層浸潤がん”と呼ばれる膀胱表面の粘膜にとどまり、筋層にまで達していないがんは、内視鏡手術であるTUR-Bt(経尿道的(けいにょうどうてき)膀胱腫瘍(ぼうこうしゅよう)切除術(せつじょじゅつ))が主な治療選択肢になります。ただし、非筋層浸潤がんの場合、腫瘍を取り除いただけでは再発率が高いため、がんの再発や進展を予防するためにTUR-Btの治療後に抗がん剤やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を注入する膀胱内注入療法を行う場合もあります。

今回は、大阪市立十三市民病院 泌尿器科部長の安達 高久(あだち たかひさ)先生に TUR-Btならびに膀胱内注入療法について詳しくお話を伺いました。

TUR-Btとは、内視鏡を用いて腫瘍を取り除く治療です。筋層までは及んでいない膀胱がん(T1以下の非筋層浸潤がん)が適応となり、非筋層浸潤がんであればTUR-Btが主たる治療選択肢といえます。

TUR-Btを行った後に、再発予防や上皮内がん*の治療を目的として抗がん剤やBCGという薬を注入する膀胱内注入療法を行う場合があります。

*上皮内がん:膀胱の壁のもっとも内側にある粘膜上皮内にとどまるが、広範囲に平らに広がってできるがん。

尿道から膀胱内へ直径8mm程度の内視鏡を挿入し、腫瘍の場所を確認します。内視鏡の先からループ状の電気メスを出し、生理食塩水などで洗いながら腫瘍を削り取ります。削った部分は電気メスで焼いて止血します。がんの大きさにもよりますが、手術時間は1時間程度を想定いただくとよいでしょう。

MN
TUR-Bt

TUR-Btで採取した病変については病理検査で悪性度や深達度を評価します。その結果、悪性度が高い場合や、腫瘍が非常に広範囲に複数あり、腫瘍残存の可能性が高い場合などには、あまり日にちを空けずに2~3週間後に追加のTUR-Btを行うケースもあります。

手術直後は出血を起こしやすいため、飲酒を避ける、入浴で体を温めすぎない、下腹部に強い力をかけないなどの注意が必要です。術後1~2週間ほど経過すれば、特に日常生活に制限はないので運動をすることもできます。一方で膀胱がんは非常に再発率が高いがんですから、術後も必ず定期的に通院し、検査を受けるようにしてください。

非筋層浸潤膀胱がんは再発率が高いがんです。そのため、TUR-Bt後の再発や進展を予防する目的で膀胱内注入療法を行う場合があります。膀胱内注入療法は、使用する薬の種類によって抗がん剤注入療法とBCG 膀胱内注入療法の2種類に分けられます。膀胱内注入療法が必要かどうかは主治医の判断になりますが、再発を繰り返す兆候がある方、悪性度が比較的高い方に対しては実施を検討することになります。

抗がん剤注入療法と BCG 膀胱内注入療法の効果について、それぞれお話しします。

TUR-Btでは削った腫瘍の切除片が膀胱内に飛散するため、術後に生理食塩水などで洗い流しますが、これで全ての切除片を取り除けるとは限りません。残った小さな切除片や腫瘍細胞が粘膜に付着すると再発につながる可能性もあるため、再発率の低下を目的として抗がん剤を膀胱内に注入します。ただし、治療によって時に膀胱炎や痛みといった副作用が出る場合があります。

BCGとは結核の予防接種に使われるワクチンと同じもので、牛に感染する結核菌を弱毒化したものを用います。BCGを膀胱内に注入することで、膀胱粘膜に作用し、がん細胞を攻撃する免疫を活性化させるはたらきが期待できます。

BCG膀胱内注入療法は、主に上皮内がんの治療に行われますが、TUR-Bt後の再発や進展のリスクが高い患者さん、上皮内がんを併存している患者さんに対しても行われ、1週間に1回のペースで数回(6~8回が標準的)にわたって外来で実施します。

治療効果

上皮内がんは上皮の中だけに発生し、盛り上がることなく平らに粘膜上皮に沿って広がっていくため、見た目だけでがんの位置や範囲を特定するのは非常に困難です。そこで、BCGを膀胱内に注入し、隠れた上皮内がんの治療や再発予防を目指します。つまり、TUR-Btがピンポイントでがんを取り除く治療であるのに対し、BCG注入は広範囲にわたるがんを治療する方法といえます。なお、上皮内がんの治療については抗がん剤と比較するとBCGのほうが治療効果は高いとされています。

治療における注意点

BCGを膀胱内に注入したら、2時間ほど排尿を我慢する必要があります。なお、繰り返し治療を行えば上皮内がんの治療に高い効果を発揮しますが、免疫反応が強く出るため、痛みや発熱、頻尿、膀胱炎などの副作用が生じやすくなります。そのような症状が出た場合には、治療スケジュールの変更などを検討することになります。

膀胱がんに限った話ではないですが、多くのがんは早期の段階で見つけられれば治療できる可能性は高いといえます。進行がんになってしまうと治療選択肢が限られてしまうため、人間ドック健康診断で異常を指摘されたら必ず精密検査を受け、がんの早期発見に努めていただきたいと思います。なお、喫煙は膀胱がんの発症リスクを高める大きな要因ですから、喫煙している方は特に定期的に検査を受けることをおすすめします。

また、非筋層浸潤膀胱がんは再発率が高いという特徴があります。ただし、たとえ再発が起こったとしても早期に発見できれば内視鏡手術で対応できる可能性が高いですから、手術後も継続して通院し、定期的な検査を受けることが大切です。

当院では、患者さんの年齢や生活背景などを考慮し、ご本人やご家族の意思を尊重して治療の選択肢を提示しています。患者さんに応じた治療方針、納得して受けていただける治療の提供を目指していますので、気になる症状がある方や膀胱がんの治療を希望されている方はぜひ一度受診していただければと思います。

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