膀胱がんの中でも“非筋層浸潤がん”と呼ばれる膀胱表面の粘膜にとどまり、筋層にまで達していないがんは、内視鏡手術であるTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)が主な治療選択肢になります。ただし、非筋層浸潤がんの場合、腫瘍を取り除いただけでは再発率が高いため、がんの再発や進展を予防するためにTUR-Btの治療後に抗がん剤やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を注入する膀胱内注入療法を行う場合もあります。
本記事では TUR-Btならびに膀胱内注入療法について詳しく解説します。
TUR-Btとは、内視鏡を用いて腫瘍を取り除く治療です。筋層までは及んでいない膀胱がん(T1以下の非筋層浸潤がん)が適応となり、非筋層浸潤がんであればTUR-Btが主たる治療選択肢といえます。
TUR-Btを行った後に、再発予防や上皮内がん*の治療を目的として抗がん剤やBCGという薬を注入する膀胱内注入療法を行う場合があります。
*上皮内がん:膀胱の壁のもっとも内側にある粘膜上皮内にとどまるが、広範囲に平らに広がってできるがん。
尿道から膀胱内へ直径8mm程度の内視鏡を挿入し、腫瘍の場所を確認します。内視鏡の先からループ状の電気メスを出し、生理食塩水などで洗いながら腫瘍を削り取ります。削った部分は電気メスで焼いて止血します。がんの大きさにもよりますが、手術時間は1時間程度を想定いただくとよいでしょう。
TUR-Btで採取した病変については病理検査で悪性度や深達度を評価します。その結果、悪性度が高い場合や、腫瘍が非常に広範囲に複数あり、腫瘍残存の可能性が高い場合などには、あまり日にちを空けずに2~3週間後に追加のTUR-Btを行うケースもあります。
手術直後は出血を起こしやすいため、飲酒を避ける、入浴で体を温めすぎない、下腹部に強い力をかけないなどの注意が必要です。術後1~2週間ほど経過すれば、特に日常生活に制限はないので運動をすることもできます。一方で膀胱がんは非常に再発率が高いがんですから、術後も必ず定期的に通院し、検査を受けるようにしてください。
非筋層浸潤膀胱がんは再発率が高いがんです。そのため、TUR-Bt後の再発や進展を予防する目的で膀胱内注入療法を行う場合があります。膀胱内注入療法は、使用する薬の種類によって抗がん剤注入療法とBCG 膀胱内注入療法の2種類に分けられます。膀胱内注入療法が必要かどうかは主治医の判断になりますが、再発を繰り返す兆候がある方、悪性度が比較的高い方に対しては実施を検討することになります。
抗がん剤注入療法と BCG 膀胱内注入療法の効果について、それぞれ解説します。
TUR-Btでは削った腫瘍の切除片が膀胱内に飛散するため、術後に生理食塩水などで洗い流しますが、これで全ての切除片を取り除けるとは限りません。残った小さな切除片や腫瘍細胞が粘膜に付着すると再発につながる可能性もあるため、再発率の低下を目的として抗がん剤を膀胱内に注入します。ただし、治療によって時に膀胱炎や痛みといった副作用が出る場合があります。
BCGとは結核の予防接種に使われるワクチンと同じもので、牛に感染する結核菌を弱毒化したものを用います。BCGを膀胱内に注入することで、膀胱粘膜に作用し、がん細胞を攻撃する免疫を活性化させるはたらきが期待できます。
BCG膀胱内注入療法は、主に上皮内がんの治療に行われますが、TUR-Bt後の再発や進展のリスクが高い患者さん、上皮内がんを併存している患者さんに対しても行われ、1週間に1回のペースで数回(6~8回が標準的)にわたって外来で実施します。
上皮内がんは上皮の中だけに発生し、盛り上がることなく平らに粘膜上皮に沿って広がっていくため、見た目だけでがんの位置や範囲を特定するのは非常に困難です。そこで、BCGを膀胱内に注入し、隠れた上皮内がんの治療や再発予防を目指します。つまり、TUR-Btがピンポイントでがんを取り除く治療であるのに対し、BCG注入は広範囲にわたるがんを治療する方法といえます。なお、上皮内がんの治療については抗がん剤と比較するとBCGのほうが治療効果は高いとされています。
BCGを膀胱内に注入したら、2時間ほど排尿を我慢する必要があります。なお、繰り返し治療を行えば上皮内がんの治療に高い効果を発揮しますが、免疫反応が強く出るため、痛みや発熱、頻尿、膀胱炎などの副作用が生じやすくなります。そのような症状が出た場合には、治療スケジュールの変更などを検討することになります。
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再発リスクの評価
表在性膀胱癌の手術を6月に行い、単発抗がん剤注入を受けました。 その後、先9月の膀胱鏡検査では、再発をしていませんでした。 比較的簡易な処置で済む癌ですが、1年以内の再発率60%程度と高く、一度再発すると2度目は70%、3度目80%、とさらに上がるそうです。 よって近場の泌尿器科のクリニックでがん細胞診の尿検査を毎月受け、3ヶ月毎に膀胱鏡検査をすることにしています。 しかし、その確率の高さを考えると憂鬱です。先手を打ち再発リスクを下げる方法はないのでしょうか? また、よしんば再発が免れたとしても、いったいあと何年再発への注意をしなければいけないのか?見通しが欲しいです。
治療方法など
2018.6に非浸潤型膀胱がん発症、2ヶ所Ta、ローグレード 2019.5再発2ヶ所、2020.5再発2.5ヶ所手術は実施予定 (2018.11、2019.12は再発せず) いずれもTURBT手術を実施 手術後、抗がん剤注入せず 抗がん剤注入しないのは効果が変わらない 又同病院ではやっていない とのこと (病院は、がんを診察したクリニックからの紹介) 質問 1.抗がん剤の効果は無いのか 2.再発時の手術後、抗がん剤は注入しないのか 3.将来、BCG注入必要になった際、BCGは副作用があり、その代替で抗がん剤注入しないのか 4.転院しても抗がん剤注入した方が良いのか 5.転院は簡単に出来るのか 6.転院の手続きはどうするのか 7.BCG注入で萎縮の副作用があれば、膀胱を切除するしかないのか 以上
86歳、膀胱癌で手術後のBCG注入治療は必要か教えてください。
86歳で膀胱癌と診断され手術後BCG注入治療を勧められたのですが、介護施設の主治医に副作用が大変だから勧められないと言われ治療をお断りしたら再発・再発で1年間に3度の手術を受ける結果となりました。3月3日に手術をしましたのでまた1ヶ月後に治療を勧められると思います。癌は再発、転移するので治療が絶対必要だとおっしゃる先生と、高齢で進行がゆっくりなのに副作用が大変な治療をする必要はないとおっしゃる介護施設の主治医、知識や経験が全くない私はどちらを選択すれば良いのか悩んでおります。良きアドバイスをどうぞよろしくお願い致します。
膀胱がんでのBCGについて
来月からBCGを開始するのですが 1.BCGはやるべきか 2.一般に生じる副作用はどのようなものか 3.BCGは恐ろしい気がするのですが
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