千葉県浦安市にある東京ベイ・浦安市川医療センターは、地域の救急医療を中心に、周産期医療や小児医療などを担う総合病院です。24時間365日体制で救急医療に尽力する一方で、総合内科を構えACP(アドバンスケアプランニング・人生会議)にも取り組んでいます。
本センターの地域での役割や今後について、管理者である神山 潤先生に伺いました。
東京ベイ・浦安市川医療センターの歴史は、100年以上前にさかのぼり、1913年、伝染病の隔離病舎として開設されたことに始まります。その後、浦安市と市川市からの管理委託を受けた一般社団法人 地域医療振興協会(JADECOM)が2009年に当センターを開設し、2015年には災害拠点病院、2017年には救急基幹センター、そして2023年には救命救急センターに指定されました。
感染症病床4床を含む344床を有し、24時間365日体制で高度な救急医療を推進する総合病院として、多様な患者さんのニーズに応え続けています。
東京ベイの大きな特徴の1つが、急性期医療です。重篤な症状や突然の発症、交通事故などの外傷に対応できる設備・スタッフを備え、救急集中治療科とともに一般外科、脳神経外科、整形外科、循環器内科と心臓血管外科で構成されるハートセンターなど、多彩な専門医が連携しながら重症患者を受け入れる体制を整えています。こうした“最後の砦”としての役割が地域から高く評価されています。
特に、迅速な救命処置を要するケースでは、各領域の専門医が密接に連携するチームアプローチが大きな強みです。多職種が一丸となって患者さんの病態を総合的に判断し、適切な治療方針を検討・実行していくことで、スピードと質の両立を図っています。
東京ベイは産科・婦人科・小児科医療にも力を注いでいます。妊娠・出産に伴うトラブルや合併症がある方にも対応し、安全な分娩環境を整備しています。婦人科では、良性腫瘍(子宮筋腫や卵巣嚢腫など)の手術症例が多いことが特徴で、患者さんの年齢やライフステージに合わせた治療を提案しています。
また、小児医療においては、専門外来を複数設置し、子どもたちの幅広い疾患に対応できる体制を構築。保護者とのコミュニケーションを大切にし、“親子一体となったケア”を実践することで、小児患者の治療経過をより良好に導いています。
東京ベイでは、患者さんが納得しやすい丁寧な説明と、分かりやすい医療の提供を重視しています。総合内科がその中心となり、特に急性期からACP(アドバンス・ケア・プランニング)を取り入れることで、患者さんが望む医療とケアをともに考える仕組みを整えています。
さらに、MRIやCT、内視鏡などの先端機器を導入し、画像診断科を中心に病変の早期発見と正確な診断に努めています。整形外科や消化器内科・外科の内視鏡・腹腔鏡手術、低侵襲手術(ミックス)やTAVI、TEERといったハートセンターでのカテーテル治療でも実績を上げており、身体の負担を軽減しながら早期回復を目指す医療を提供しています。
急性期の治療が完了した後のリハビリテーションや在宅復帰支援も、東京ベイの重要な役割です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのセラピストが、患者さんの身体機能や生活環境を考慮しながらリハビリプランを作成し、医師や看護師、ソーシャルワーカーと連携して退院後まで見据えたサポートを行っています。
また、地域の医療機関や介護事業所との協力体制にも力を注いでおり、情報共有や合同カンファレンスを定期的に開催。地域包括ケアシステムの拠点として、患者さんが安心して自宅や施設で生活を続けられるようフォローアップ体制を整えています。
看護部はチーム医療の要として、各診療科や職種と協働しながら患者さんのケアにあたっています。患者さん一人ひとりの病態や生活背景をしっかりと把握し、適切な看護を提供するためにコミュニケーションを重視。救急対応から急性期、回復期、在宅復帰まで、あらゆるステージで“寄り添う看護”を実現しています。
また、看護師の教育制度も充実しており、専門看護師や認定看護師の育成、院内研修プログラムの整備など、看護の質を高める取り組みにも積極的です。こうした活動を通じて、常に患者さん一人ひとりに適切な看護を考え、実践し続けています。
東京ベイは診療だけでなく、教育・研究の拠点としても機能しています。医学生や看護学生、研修医に対して研修プログラムや勉強会を提供し、専門医や認定看護師の指導のもと、最新の医学知識や技術を学ぶ機会を積極的に設けています。学会での研究発表や論文執筆にも取り組むことで、院内外における医療水準の向上を目指しています。
東京ベイが目指すのは、単なる“治療を行う場所”にとどまらず、地域住民にとって身近で頼れる存在となることです。“患者さん一人ひとりと向き合う”という基本理念のもと、診療科や職種を越えた協力体制を築くことで、誰もが安心して治療を受けられる環境づくりに取り組んでいます。
東京ベイ・浦安市川医療センターは、救急医療から専門的治療、リハビリテーション、在宅復帰支援まで、幅広い領域で地域の健康を支える総合病院です。高度な医療技術とチームアプローチによる迅速かつ的確な対応、そして患者さんの立場に寄り添うホスピタリティが融合し、地域から厚い信頼を得ています。アクセスの良い東京湾岸エリアという地の利も相まって、今後さらに発展が見込まれる医療拠点として注目されています。
質の高い医療を身近に提供すると同時に、予防医学や教育・研究にも大きく貢献する東京ベイ。常に患者さんの安心と安全を優先しながら、医療ニーズの変化に柔軟かつ先進的に対応し続ける姿勢こそが、その大きな魅力と言えるでしょう。
当センターは救急医療を中心に、24時間365日体制で地域住民の皆さんの健康を守るために日々尽力しています。現状に満足せず、今後も地域の方々に信頼される医療機関として、さらなる発展を目指してまいります。
また、少子高齢化が進んでいますが、この地域でもそれは例外ではありません。今後も周産期や小児、高齢者の方々への適切な医療提供に力を入れながら、地域の皆さんが安心して暮らせるよう尽力してまいりますので、よろしくお願いいたします。
当院では現在、ラピッドカーの購入を目標にクラウドファンディングに取り組んでいます。ラピッドカーとは、医師や看護師などが同乗し重症な患者さんのもとへかけつけ、いち早く救命治療を開始するための緊急自動車です。
詳細は以下よりご確認いただけます。
【住宅密集地においても医師が一刻も早く患者さんの元へ駆けつけるために】
※寄付募集は2025年3月31日(月)午後11:00までです。
*医師や提供している医療についての内容および、本文中の数字は全て2025年1月時点のものです。
神山 潤 先生の所属医療機関
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。