全身性アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる異常蛋白質がさまざまな臓器に溜まることで、全身に機能障害を生じさせる疾患です。この全身性アミロイドーシスの進行は比較的速い点が特徴です。
では、疾患の進行を食い止めるためにはどのような治療が適応されているのでしょうか。また、今後期待されている治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。
熊本大学病院には、アミロイドーシスの診断・治療を専門とするアミロイドーシス診療センターがあります。引き続き、同センターのセンター長でいらっしゃる山下 太郎先生に全身性アミロイドーシスの治療と今後の展望についてお話しいただきました。
記事1『全身性アミロイドーシスとは? 原因や症状、種類について』でお話ししたように、アミロイドーシスの種類は多岐にわたります。ここでは、いくつかの全身性アミロイドーシスの治療例をお話しします。
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP, 遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス)では、遺伝子変異により変異型のトランスサイレチンが生成されることで発症します。この場合、原因となる物質を作っている肝臓を摘出し、新たな肝臓を移植する治療が根治的な治療法になります。
家族性アミロイドポリニューロパチーに対する肝移植による治療は20年以上の実績があり、一定の治療効果が認められています。しかしその一方で、日本には脳死ドナーの数が不足している現状があります。
そのため、部分生体肝移植と呼ばれる治療法が適応されるケースも少なくありません。これは、患者さんの肝臓を摘出した後に、家族から半分肝臓を移植する方法を指します。肝臓は大きさが半分ほどになったとしても2〜3か月経つと元の大きさに戻るという特徴があります。つまり、半分ほどあれば提供した方(ドナー)の肝臓も、受けとった患者さんの肝臓も後に元の大きさに戻ります。お話ししたように日本では脳死ドナーが不足している現状もあり、この部分生体肝移植を適応する例も多いでしょう。
これら肝臓の移植による治療は、特に疾患の初期であれば疾患の進行を大きく止めることにつながります。しかし、肝臓の移植により新たなアミロイドの沈着を止めることはできても、すでに全身に沈着しているアミロイドを除去することはできません。そのため、なるべく早期に治療を受けることが疾患の進行を止めることにつながるでしょう。
AAアミロイドーシスは、炎症とともに生じる全身性アミロイドーシスを指します。そのため、AAアミロイドーシスの診断では、採血によって炎症があると高くなる血清アミロイドA(SAA)の濃度を測ります。SAAの値が高い状態が続くと、アミロイドに変化し最終的に複数の臓器に障害を起こす全身性アミロイドーシスにつながってしまうからです。
このように炎症が原因となるAAアミロイドーシスの場合には、原因となる炎症性疾患を治療することが重要になります。昔は、結核や感染症により炎症が生じた場合に発症しやすいといわれていました。
近年では、リウマチ(関節や関節の周囲の骨、腱、筋肉などに痛みが起きる疾患の総称)が原因となることが多いので、リウマチの治療をすることで炎症を抑えることが効果的であるでしょう。
FAPの患者さんに対して、アミロイドの原因蛋白質を安定化することで、アミロイドになりにくくする薬が保険適用となっています。安全性も高く、日本を含め世界中で使用されています。
また、近年では、siRNAという薬剤が登場しています。これは、アミロイドーシスの原因となる肝臓で生成されるトランスサイレチンを、8割方抑えられる薬剤です。
このsiRNAを 3週間に1度点滴することで約8割のトランスサイレチンを除去することに成功するといわれており、大幅にアミロイド沈着の減少につながると考えられています。
2017年現在、siRNAは臨床治験が行われている段階です。適用が認められるようになれば、根本的な治療につながり大きな効果が期待できるでしょう。
免疫グロブリン性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)の治療には、早期に発見された場合には薬剤を用いた化学療法が適応されるケースが多いでしょう。
また、免疫グロブリン性アミロイドーシスに対しては、抗体を用いて沈着しているアミロイドを除去する治療が試験的に行われています。まだ海外における臨床治験の段階ではありますが、効果が期待されています。
免疫療法でアミロイドをすべて除去する完治は難しいのですが、生命予後を伸ばすことにつながるといわれています。これは、疾患の進行を抑えながら治療を続けることを可能とするとともに、生命予後が大きく改善すると期待されています。
つまり、根治というよりも疾患の進行をコントロールすることで健康な方と同じような生活を送ることができるようになると考えられているのです。
たとえば、免疫グロブリン性アミロイドーシスの場合、治療効果が現れない場合には1年ほどで心臓に障害をきたし亡くなってしまうケースも少なくありません。免疫療法は、それをコントロールすることで疾患の進行を食い止めることができるのではと期待されています。
私たち熊本大学病院はアミロイドーシス診療センターを設け、アミロイドーシスの診断・治療を専門的に行っています。
病理検査や遺伝子診断など、専門的な検査をさまざまな医療機関と連携をとりながら実現しています。お話ししたように、アミロイドーシスには36もの種類があります。最終的にどの種類かを明らかにするためには、免疫染色をはじめとする複数の検査が必要です。我々の施設では、かなり詳細な診断を可能にしています。
記事1『全身性アミロイドーシスとは? 原因や症状、種類について』でお話ししたように、全身性アミロイドーシスは早期発見・早期治療が重症化を防ぐ鍵になります。全身にアミロイドが蓄積してから治療をしても、疾患の進行を食い止めることが難しいケースも少なくないからです。
気になる症状があれば、なるべく早期に医療機関を受診することが重要となるでしょう。お近くのかかりつけ医から、我々のような専門機関に連携される体制も整いつつあります。早期受診・早期発見が疾患の治療につながるでしょう。
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心不全の治療について
時系列 昨年末 亜急性心不全にてカテーテルステント施術 本年1月 洞不全症候群にてペースメーカーの埋込施術 6月12日 慢性心不全増悪にて入院 6月20日 心筋シンチグラフィ 6月22日 カテーテル生検 6月23日6時 容態急変により心停止(蘇生まで30分程度)HCUへ移動 6月23日14時 再度心停止(蘇生まで10分程度) 6月27日 意識回復(手を握り返す) 6月28日 好きな野球チームの話しで笑う。 6月29日 人工呼吸器外し、酸素マスクに変更。 6月30日 生研の結果、心臓アミロイドーシスが確定 7月1日 声は出ないが、口の動きから私の名前を呼んでいることを確認 ----------------------------------- 輸血、透析、点滴等の治療にて、腎臓等の数値は回復しているが、 心肺機能は、かなり落ちていて、体力、気力も落ちている言われる。 今後、容態悪化の折は、麻酔をして再度、人工呼吸器をつけるか、判断を聞かれています。 主治医によると、麻酔をして人工呼吸器をつけると、覚醒する確率はかなり低いと言われました。 質問は、現況において、麻酔をして再度人工呼吸器つけると意識回復はしないものなのでしょうか。 また、つけた場合の余命は、どの程度になるでしょうか。 家族としては、ある程度覚悟はできておりますが、少しでも苦しまない状況を望んでいます。 ご助言頂ければ幸いです。
便に油が浮く
少し前から便に油が膜のようになって浮くことが多々あります。 毎回ではありませんが、5回に3回はそういうことがあります。 食事はこの症状が気になる前と変わっていません。朝食はきちんと食べる方ではありませんが、昼食と夕食は食べています。魚よりは肉類が多いですが、それは症状が気になら始めるよりもずっと前からです。野菜は1日に摂取すべき量よりは少ないと思いますが、ちゃんと食べています。 腹痛や嘔吐などはありません。 ただ、上記の症状が気になり始めたと同時に、胃が疲れやすくなったとも感じています。 一年前くらいまではなんともなかった食事量や内容でも胃もたれがして気持ち悪くなったりします。 ストレスを強く感じているときに、2日間食事量が少し増えただけで、下痢と嘔吐をし、二日間くらい下痢が続いてヨーグルトやゼリーしか食べられなかった時もありました。 現在は新しいバイトを始めたりしましたが、それほどストレスとは感じていません。 また、ここ1週間ほどは魚と肉はどっちが多いということもなく、野菜も毎食ちゃんと前よりも多く摂取していました。 食事が関係していたのかと思っていましたが、バランスの良い食事や生活リズムが整った生活を1週間していたのに、今日も便に油が浮いていました。 便に油が浮く理由、胃が疲れやすくなった理由、それらの改善策を教えていただきたいです。
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16歳の息子が超音波で脾臓が少し大きい。と言われました。追加検査は指示されてませんが、ほっておいて良いのでしょうか?
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