全身性アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状の異常蛋白質がさまざまな臓器に溜まることで、全身に機能障害を生じさせる疾患です。
この全身性アミロイドーシスには遺伝性ものと非遺伝性のものがあり、36もの種類があるそうです。近年、高齢化とともに、全身性アミロイドーシスは増加傾向にあるといいますが、それはなぜなのでしょうか。
熊本大学病院には、アミロイドーシスの診断・治療を専門とするアミロイドーシス診療センターがあります。今回は、同センターのセンター長でいらっしゃる山下 太郎先生に全身性アミロイドーシスの原因や症状についてお話しいただきました。
アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状の異常蛋白質がさまざまな臓器に溜まることで、機能障害を生じさせる疾患の総称です。
アミロイドーシスは、複数の臓器にアミロイドが沈着し全身に障害をきたす全身性アミロイドーシスと、ある特定の臓器に沈着することで障害を起こす限局性アミロイドーシスに分けられます。
体に存在しているさまざまな蛋白質は基本的に固まることはなく、通常は溶けた状態で体内に存在しています。しかし、遺伝子変異や濃度の上昇、加齢などにより、体内に沈着することがあります。
また、加齢の影響を受け、ある年齢になるとアミロイドの蓄積が生じるケースもあります。
近年の高齢化に伴い、全身性アミロイドーシスは増加傾向にあるといわれています。それは、加齢が全身性アミロイドーシスの危険因子になり得るからです。もちろん、すべての高齢者にアミロイドーシスが現れるわけではありませんが、高齢に伴い疾患に罹患しやすくなることが明らかになっています。
これは、いくつかのアミロイドーシスでは、疾患に罹患する遺伝子を持つ方が、ある年齢に達すると発症しやすくなるという仕組みになっているためです。遺伝子や年齢など複数の要因が相乗的に作用して発症する仕組みが、高齢の患者さんが多い要因になっていると推測できます。
また、理由は明らかになっていませんが、アミロイドーシス全体で、男性の患者さんが多いこともわかっています。これは、性ホルモンが関係している等さまざまな説がありますが、いまだ理由は明らかになっていません。
アミロイドーシスの種類は36にのぼり、それぞれの種類で疾患の原因や進行スピードが異なります。
全身性アミロイドーシスの代表的なものとしては、免疫グロブリン性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、AAアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP, 遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス) 、老人性全身性アミロイドーシス (野生型ランスサイレチンアミロイドーシス:SSA)などが挙げられます。
なかでも最も症例数が多いものは免疫グロブリン性アミロイドーシスであることがわかっています。
アミロイドーシスには、遺伝性のものと非遺伝性のものがあります。遺伝性のアミロイドーシスの代表的なものは、家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP)です。これは、トランスサイレチンという蛋白質の遺伝子異常を持つ方に生じる遺伝性のアミロイドーシスです。
一方、免疫グロブリン性アミロイドーシス、AAアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシスは、非遺伝性アミロイドーシスの代表的なものになります。
免疫グロブリン性アミロイドーシスとは、免疫グロブリン(血液中や組織液中に存在する蛋白質)の産生異常が原因となり発症する疾患です。特に、多発性骨髄腫(血液細胞の1つである形質細胞のがんを指す)により免疫グロブリンが過剰に生成されることがわかっており、多発性骨髄腫に罹患した方が発症するケースも少なくありません。
全身性アミロイドーシスの症状は多岐にわたる点が特徴です。それは、全身のあらゆる臓器に障害が発生しうる病気であるからです。たとえば、心臓の機能に障害が起こる心不全や不整脈が発生することもありますし、腎臓の障害による腎不全や蛋白尿、末梢神経や自律神経の障害によって手足の麻痺や立ちくらみ、排尿の異常や下痢などが起こることもあります。
なかでも、初期症状として心不全がかなり多いことがわかっています。また、手足に麻痺などが生じる末梢神経障害を起こす患者さんも非常に多いことが明らかになっています。ほかにも、腎臓の機能障害や不整脈など、症状は多岐にわたる点が特徴でしょう。
これらの症状は他の疾患との区別が難しく、患者さん自身で全身性アミロイドーシスへの罹患に気づくことは極めて難しいといわれています。
そのため、気になる症状や何らかの不調を感じることがあれば、なるべく早期に病院を受診することが早期発見のためには重要になります。心臓に異常を感じることがあれば循環器内科を受診したり、手足のしびれがあれば神経内科を受診するなど、まずは該当する臓器の診療科を受診することをお勧めします。
医療者側の啓発が進んでいることもあり、検査を受け原因不明の多臓器障害の場合であれば、全身性アミロイドーシスを疑う体制が築かれつつあるからです。
たとえば、手足のしびれがあり病院を受診したとします。その場合、通常の加齢現象の範囲ではなく、手足のしびれに加えて不整脈や心不全もある場合には全身的な疾患の可能性を疑うでしょう。
さらに検尿を行い、蛋白尿が検出された場合にも全身性アミロイドーシスを疑うことができます。このように、特定の臓器の診療科を受診した場合であっても、いくつかの臓器に障害がみられる場合にはアミロイドーシスの可能性が考えられます。
全身性アミロイドーシスの進行は比較的速い点が特徴でしょう。お話ししたように、アミロイドーシスにはさまざまな種類があり、それぞれ進行のスピードも異なります。
たとえば、免疫グロブリン性アミロイドーシスは、疾患の発見が遅れ治療効果が認められない場合や進行が速い場合には、発症後数年で亡くなってしまうケースもあります。しかし、なかには適切な治療により長生きされる方もいらっしゃいます。
家族性アミロイドポリニューロパチーの場合、症状が現れてから約10年生存するケースが多いです。現在では治療にも多様な選択肢があります。繰り返しになりますが、早期診断・早期治療が重症化を防ぐためには重要になります。
全身性アミロイドーシスの治療に関しては、記事2『全身性アミロイドーシスの治療-新たな薬剤の登場や免疫療法とは?』をご覧ください。
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心不全の治療について
時系列 昨年末 亜急性心不全にてカテーテルステント施術 本年1月 洞不全症候群にてペースメーカーの埋込施術 6月12日 慢性心不全増悪にて入院 6月20日 心筋シンチグラフィ 6月22日 カテーテル生検 6月23日6時 容態急変により心停止(蘇生まで30分程度)HCUへ移動 6月23日14時 再度心停止(蘇生まで10分程度) 6月27日 意識回復(手を握り返す) 6月28日 好きな野球チームの話しで笑う。 6月29日 人工呼吸器外し、酸素マスクに変更。 6月30日 生研の結果、心臓アミロイドーシスが確定 7月1日 声は出ないが、口の動きから私の名前を呼んでいることを確認 ----------------------------------- 輸血、透析、点滴等の治療にて、腎臓等の数値は回復しているが、 心肺機能は、かなり落ちていて、体力、気力も落ちている言われる。 今後、容態悪化の折は、麻酔をして再度、人工呼吸器をつけるか、判断を聞かれています。 主治医によると、麻酔をして人工呼吸器をつけると、覚醒する確率はかなり低いと言われました。 質問は、現況において、麻酔をして再度人工呼吸器つけると意識回復はしないものなのでしょうか。 また、つけた場合の余命は、どの程度になるでしょうか。 家族としては、ある程度覚悟はできておりますが、少しでも苦しまない状況を望んでいます。 ご助言頂ければ幸いです。
便に油が浮く
少し前から便に油が膜のようになって浮くことが多々あります。 毎回ではありませんが、5回に3回はそういうことがあります。 食事はこの症状が気になる前と変わっていません。朝食はきちんと食べる方ではありませんが、昼食と夕食は食べています。魚よりは肉類が多いですが、それは症状が気になら始めるよりもずっと前からです。野菜は1日に摂取すべき量よりは少ないと思いますが、ちゃんと食べています。 腹痛や嘔吐などはありません。 ただ、上記の症状が気になり始めたと同時に、胃が疲れやすくなったとも感じています。 一年前くらいまではなんともなかった食事量や内容でも胃もたれがして気持ち悪くなったりします。 ストレスを強く感じているときに、2日間食事量が少し増えただけで、下痢と嘔吐をし、二日間くらい下痢が続いてヨーグルトやゼリーしか食べられなかった時もありました。 現在は新しいバイトを始めたりしましたが、それほどストレスとは感じていません。 また、ここ1週間ほどは魚と肉はどっちが多いということもなく、野菜も毎食ちゃんと前よりも多く摂取していました。 食事が関係していたのかと思っていましたが、バランスの良い食事や生活リズムが整った生活を1週間していたのに、今日も便に油が浮いていました。 便に油が浮く理由、胃が疲れやすくなった理由、それらの改善策を教えていただきたいです。
脾臓が大きい
16歳の息子が超音波で脾臓が少し大きい。と言われました。追加検査は指示されてませんが、ほっておいて良いのでしょうか?
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