うぇるなーしょうこうぐん

ウェルナー症候群

最終更新日
2023年02月20日
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2023/02/20
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

ウェルナー症候群とは思春期を過ぎた頃から白髪、脱毛、両目の白内障など、加齢によって生じやすい症状が現れる遺伝子の異常による病気です。急速に老化が進んでいき、実年齢よりも年を取って見えるようになることから、“早老症”の1つといわれています。

見た目の症状以外にも、糖尿病脂質異常症がん悪性腫瘍(あくせいしゅよう))、動脈硬化などにかかりやすいことが分かっており、以前は40歳代で亡くなる方も少なくありませんでした。しかし近年では治療の進歩などにより、少しずつ平均寿命が延伸していることが分かっています。

ウェルナー症候群は国の指定難病でもあり、日本の患者数は700~2,000人程度と考えられています。また世界中で報告されている患者のおよそ60%が日本人であり、日本人に多い病気として知られています。ただし、発症する確率はおよそ5~20万人に1人といわれ、日本人においても比較的まれな病気といえます。

原因

ウェルナー症候群は“WRN”と呼ばれる遺伝子の異常が原因で発症することが分かっています。ただし、この遺伝子に異常があるとなぜ老化が進んでしまうのかについては、まだ分かっていません。

また、ウェルナー症候群は生活習慣に関係なく発症すると考えられています。病気の原因となるWRNの遺伝子異常が“常染色体潜性(劣性)遺伝”という遺伝形式で、親から子へ遺伝した場合に病気が発症することが特徴です。

常染色体潜性(劣性)遺伝とは

人間は父親・母親からそれぞれ1つずつ遺伝子を受け継ぎ、1対の遺伝子を持ちます。常染色体潜性(劣性)遺伝とは、病気の原因となる遺伝子が常染色体の中に含まれており、両親から受け継いだ遺伝子の両方に遺伝子異常があることによって病気が発症することをいいます。

つまりウェルナー症候群の場合には、両親それぞれがWRNの遺伝子異常を持っており、それが両方とも子どもに引き継がれた場合に病気を発症します。1対の遺伝子の両方に異常がないと病気は発症しないため、両親は病気を発症していないことがほとんどです。

また、患者の兄弟姉妹で同じウェルナー症候群にかかる確率は、およそ4人に1人ということになります。

症状

ウェルナー症候群では、20歳代以降になると高齢者に生じやすいさまざまな症状が現れます。ただし知能などは衰えず、年齢のとおりに経過すると考えられています。

見た目で分かる症状

見た目で分かる症状としては白髪や脱毛などの毛髪の変化や、手足(四肢)の痩せなどが挙げられます。皮膚も硬くなり、特に足(指・踵・くるぶし)、すね、肘などに傷ができた際に治りにくくなる“難治性皮膚潰瘍(なんちせいひふかいよう)”を繰り返すことで、なかには下肢(大腿・膝・下腿など)の切断が必要となってしまう方もいます。

また、ウェルナー症候群の患者は身長が低い傾向にあり、X線検査ではアキレス腱や皮膚の下にカルシウム成分が蓄積する“石灰化”がみられることもあります。なお、声は甲高くかすれたような声になっていくことが一般的です。

合併症

ウェルナー症候群では、白内障糖尿病動脈硬化症、脂質異常症がん(悪性腫瘍)、性腺機能低下症など高齢者に起こりやすい病気が合併症として現れることがあります。なかでも、動脈硬化症とがんは命に関わる可能性の高い合併症として知られています。

検査・診断

ウェルナー症候群は、以下の診断基準に基づいて診断されます。2012年に発行された“ウェルナー症候群の診断・診療ガイドライン”によれば、確定診断となるのは10~40歳までに以下に示した主要徴候が全てみられる方、あるいは主要徴候が3つ以上あり、遺伝子変異が認められる方です。

また、主要徴候である“毛髪の変化”と“両目に生じる白内障”があり、それ以外の徴候が2つ以上認められる場合には、“ウェルナー症候群疑い”と判断され、経過観察や治療が検討されることもあります。

ウェルナー症候群の診断基準

主要徴候

  • 白髪や脱毛など毛髪の変化
  • 両目に生じる白内障
  • 皮膚の萎縮や鶏眼(うおのめ)・たこの出現、皮膚の傷が治りにくい“難治性潰瘍”の形成
  • アキレス腱など軟部組織の石灰化
  • 鼻がとがった顔つき(鳥様顔貌)
  • 甲高い、かすれた声

その他の徴候

  • 糖や脂質の代謝異常がある
  • 骨粗鬆症など骨の異常がある
  • 非上皮性腫瘍や甲状腺がんがある
  • 血族結婚で生まれた
  • 狭心症心筋梗塞(しんきんこうそく)など動脈硬化に関連した病気が早期に現れる
  • 原因の分からない性腺機能の低下がある
  • 身長が低い、体重が軽い

遺伝子変異

  • WRN遺伝子の変異がある

治療

ウェルナー症候群を根本的に治療する方法や、見た目に現れる変化に対する治療方法などはまだ確立されていません。ただし症状や合併症に合わせた治療を行うことで、患者の寿命を延ばし、生活の質を高めることができます。

症状や合併症に対する治療方法は、ウェルナー症候群が原因ではない場合とほとんど変わりません。たとえば、白内障では手術治療が検討されるほか、糖尿病脂質異常症などでは薬物療法が検討されることが一般的です。また四肢の難治性皮膚潰瘍に対しては、傷を作らないこと、手足を清潔に保つことなどが指導されますが、悪化した場合にはほかの部位の皮膚を移植する手術が検討されることもあります。

なおウェルナー症候群では糖尿病や脂質異常症、がん(悪性腫瘍)、動脈硬化症などが生じやすいことが分かっています。そのため定期的に医療機関を受診し、病気や異常の早期発見に努めることも大切です。

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