概要
レーベル先天黒内障は、遺伝子異常によって視力に重度の障害が生じる病気です。見ためでは眼球に異常がみられないことが多いものの、重度の視力障害や眼球の揺れ(眼振)などがみられ、生後早期に発症するといわれています。
現在、一部のレーベル先天黒内障を除き有効な治療法は確立されておらず、視機能の低下に伴う日常生活の支障を改善するためのケアなどが行われています。
原因
レーベル先天黒内障は遺伝子の異常(変異)により視細胞が変性することで発症すると考えられており、原因となる遺伝子はこれまでに20以上確認されています。
たとえばRPE65という遺伝子が変異した場合は、網膜細胞が光を感知するために必要なビタミンを合成することが困難となり、視覚障害が生じると考えられています。
症状
生後間もない時期から、以下のような症状が現れます。
- 異常なまぶしさを感じる(羞明)
- 黒目が振り子のように揺れる(振り子様眼振)
- 視線が合わない
- 通常であれば目に光を当てると瞳孔が小さくなる“対光反射”がみられないか弱い
- 目を強く擦ったり押したりしている
一般的に、レーベル先天黒内障は目の症状のみに留まります。しかし、精神発達遅延や難聴、てんかんなどを合併することがあるほか、一部の乳児患者では発症後に腎疾患などを合併するケースがみられます。
レーベル先天黒内障の症状の進行などは、原因遺伝子によって異なります。たとえば、CEP290という遺伝子の変異が原因で発症した場合、乳児期は軽症で、10歳頃まで症状は緩やかに進行する傾向にあります。一方、GUCY2Dという遺伝子の変異によって発症している場合は、発症早期から重度の視覚障害が出現することがあります。ただし、症状の程度には個人差があります。
検査・診断
レーベル先天黒内障の診断では、問診や眼底検査、網膜電図、遺伝子検査などが行われます。
問診では、これまでに発症したことがある疾患の有無や、家族内にレーベル先天黒内障を発症している方がいるかなどを確認します。
眼底検査は瞳孔を散大させる点眼薬を使用して、網膜の位置する眼底を撮影します。レーベル先天黒内障患者は、網膜に色素沈着や血管が細くなるなどの症状が出るため、眼底検査で網膜の変化を確認します。
網膜電図は、網膜の電気信号を調べる検査です。一般的には、麻酔の点眼液をさした後に角膜に電極を乗せて検査を行いますが、最近では皮膚電極という機器を使用し、直接目に触れず網膜電図測定が可能なケースもあります。レーベル先天黒内障患者の場合、網膜電図では網膜からの電気信号が弱くなったり消失したりします。
遺伝子検査は、原因となる遺伝子を特定するほか、類縁疾患と鑑別するために行われます。
治療
RPE65遺伝子の変異が原因で発症した場合は、新しく開発された遺伝子治療が行われています。そのほかの遺伝子が原因の場合には現在のところ有効な治療法が確立されておらず(2023年11月時点)、症状に対するケアやサポートが行われます。
遺伝子治療
RPE65遺伝子変異が原因の場合は、正常なRPE65遺伝子を補充する治療が検討されます。遺伝子治療は、網膜下に治療薬を注射で投与することで、正常なRPE65遺伝子の発生を期待するものです。諸外国では、遺伝子治療によって視力や視野の改善が認められたケースが複数報告されています。
症状に対する対応
視力低下のほか近視や遠視、乱視などの屈折異常がみられる場合は、少しでも視力を維持できるよう、矯正眼鏡や遮光眼鏡の使用が検討されます。また、目を強く擦ったり押したりする行為は網膜剥離や白内障などにつながる可能性があるため、ゴーグルで保護するといった対応が行われます。運動障害を伴う場合は、必要に応じて車椅子や障害者用ベビーカーの使用が考慮されます。文字を書いたり飲食をしたりすることが困難な場合には、作業療法が行われることもあります。
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