肌の乾燥は一般的には乾燥肌と呼ばれることもありますが、正式な病名を"乾皮症(皮脂欠乏症)"といいます。乾皮症の原因は乾燥だけでなく、加齢や入浴方法など多岐にわたり、病院で治療する以外に自宅でできるセルフケアの方法もいくつか存在します。
本記事では乾皮症の概要や症状、原因、治療と自分でできる対策について詳しく解説します。
乾皮症とは皮膚の乾燥のことです。一般には乾燥肌と呼ばれるほか、皮脂欠乏症ともいいます。
乾皮症の症状には角質の剥がれ、かゆみなどが挙げられます。最初は乾燥や角質の剥がれが見られ、かゆみも伴います。進行するとかゆみがさらに強くなり、皮膚はひび割れ、赤みも見られるようになります。さらに進行すると湿疹が引き起こされ、皮脂欠乏性湿疹に至ります。この段階まで来るとかゆみは夜中に目がさめるほどに強くなります。
また、乾燥した皮膚をかいたりこすったりすると傷になったり感染症につながったりすることもあるので注意しましょう。
皮膚のもっとも外側の層には脂分が存在し、これが皮膚の水分蒸発を防止しています。この脂分が何らかの原因によって失われることで乾燥するのが乾皮症(皮膚の乾燥)のメカニズムです。脂分が失われる原因には以下のようなものがあります。
空気が乾燥すると皮膚も乾燥しやすくなるため、外気の乾燥やエアコンの使用で湿度が低下することが乾皮症の原因となるとされています。また、乾皮症が引き起こされるのは空気が乾燥する秋冬が多いとされていますが、これは空気の乾燥だけでなく寒さも関係しています。
基本的には、エアコンなどを使用する際は加湿器などで室内を乾燥させないことが重要です。
入浴時に熱いお湯を使っていたり、入浴回数が多かったりすると皮膚表面の脂分が洗い流されて乾皮症の原因となることがあります。そのため、入浴時はぬるま湯に漬かることを心掛けるとよいでしょう。
また、洗浄力の強いせっけんは皮膚を刺激してしまいます。さらにナイロンタオルなどで強くこすることも刺激となるので、使用するせっけんは刺激の少ないものを選び、体を洗う際には優しく洗うように注意するとよいでしょう。
病気や加齢なども乾皮症の原因となることがあります。詳細は以下のとおりです。
アトピー性皮膚炎は赤みやかゆみなどの湿疹症状が繰り返し長期間にわたって見られる皮膚の病気です。しかし、ごく軽症の場合や治療によりよくなった患者さんでは炎症はなく、乾燥症状のみ生じることがあります。
皮膚の水分量を保っているセラミドは年齢とともに減少することから、加齢が乾燥肌の原因となると考えられています。加齢による皮脂欠乏や乾燥症状は下腿や背中に多く見られます。
乾皮症の適切な診療科は皮膚科です。治療の基本は保湿剤を使って皮膚に潤いを与えることです。炎症が生じて皮脂欠乏性湿疹まで症状が進んだ場合はステロイドの塗り薬が処方されることもあります。また、皮膚科で処方される薬を塗ると同時に乾皮症の原因となる行動を避けたり、セルフケアを行うことも大切だと考えられています。
すでに解説したように乾皮症のセルフケアのためには、入浴方法に注意する、室内を乾燥させないようにするなどの方法があります。部屋を乾燥させないためには加湿器などを使って部屋の湿度を上げる、エアコンを使用しすぎて湿度が下がらないように注意するといったことを心掛けるとよいでしょう。
また、かゆくてもかかない、刺激の少ない肌着(木綿など)を選ぶなど、肌への刺激を極力抑えるように心掛けましょう。そのほか、アルコールや辛いものを摂取すると体が温まってかゆみがひどくなることがあるため、控えたほうがよいとされています。これらのセルフケアは乾皮症の原因にかかわらず有効と考えられています。
乾皮症の原因にはさまざまなものが考えられています。まずは原因となるものを避け、セルフケアを行うとよいでしょう。かゆみや乾燥が強い、症状が長引くといった場合には皮膚科の受診を検討するとよいでしょう。
山梨大学医学部皮膚科学講座 教授
川村 龍吉 先生の所属医療機関
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