大阪府大阪市北区に病院を構える医療法人伯鳳会 大阪中央病院(以下、大阪中央病院)の肛門外科では、排便や肛門に関する幅広い悩みに対応するため、診療内容の充実と診療体制の拡充を図っています。
大阪中央病院 肛門外科の扱う肛門疾患には、どのようなものがあるのでしょうか。今回は、同院において特別顧問を務め、肛門外科の医師として診療も行う齋藤 徹先生に大阪中央病院 肛門外科の診療内容や強みなどを伺いました。
当院の肛門外科では、肛門三大疾患と呼ばれる、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)を中心に診療を行っています。そのほか、直腸脱や肛門狭窄、肛門周囲の皮膚病変に対する治療にも対応しています。
また、肛門外科とコメディカルが連携を図りながら排便機能障害の診療も行っています。
痔は、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3つに大きく分類されます。それぞれについて、次で詳しくお話しします。
痔核は、歯状線よりも上にできたものを内痔核、下にできたものを外痔核に区分します。
痔核は、いきんだことによってうっ血し、静脈が膨張してこぶのような形になることによって生じます。
便秘の方や排便回数が多い方、便座に長時間座っている方は痔核になりやすいといわれています。なお、痔核は45~65歳の方の有病率が高いと考えられています。
痔核は、できた場所によって現れる症状が異なります。
*脱出:肛門の外へ痔核が出てくること
裂肛は、急性裂肛と慢性裂肛に大別されます。
裂肛は、肛門の皮膚が切れることで生じます。硬い便や下痢、肛門がよく締まることで血流が悪化したことなどが要因として考えられます。
便秘や下痢、排便回数が多い方が裂肛になりやすいとされています。加えて、内肛門括約筋の緊張が強い場合にも裂肛がみられることがあります。
裂肛は、男性よりも女性に多い傾向があり、男女ともに若い方に多くみられます。
急性裂肛か慢性裂肛のどちらなのかによって現れる症状が異なります。
痔瘻は、肛門の壁内に細菌が侵入したことによって生じる感染症です。細菌感染による炎症を繰り返すことで肛門内と外をつなぐ膿の通り道ができ、体外に膿が出てきます。
下痢や水っぽい便などによって細菌が肛門の壁内に入り込み、炎症を引き起こすことが痔瘻の発症につながります。
痔瘻は、女性よりも男性に多い傾向があります。また、年齢としては30歳代から40歳代の方が多いです。
細菌に感染したことによって膿がたまります。この状態を肛門周囲膿瘍と呼びます。炎症を繰り返すことで肛門内から外部へ膿の通り道ができ、そこから膿が体外に出てきます。これが痔瘻です。炎症が起きている肛門周囲膿瘍では痛みが生じますが、痔瘻では痛みはあまりありません。
直腸脱とは、直腸が肛門から脱出した病態です。
排便でいきんでいる頻度が多いことが直腸脱の主な原因です。それ以外にも、S字結腸の固定が悪い場合なども発症につながると考えられています。
直腸脱は高齢の女性に多くみられますが、男性も発症する病気です。男性は34.8歳、女性は72.9歳が平均発症年齢となっています。
女性の場合、高齢・小柄・やせ型・猫背という条件が当てはまる場合に、体が前屈みになったときに直腸の壁を腹圧で押すことにより直腸脱になりやすいと考えられています。
もっとも多い症状は直腸の脱出です。また、脱出に伴い直腸粘液が肛門周囲につくことで皮膚がかぶれたり、直腸粘液や摩擦による直腸の出血で下着が汚れたりすることもあります。
直腸粘膜脱とは、直腸粘膜や粘膜下組織が脱出した病態です。直腸粘膜脱をそのままにしておくと、直腸脱を引き起こす可能性もあります。
直腸粘膜脱は、排便時などのいきみが原因となって生じます。
排便時の出血や残便感などの症状が現れます。
肛門狭窄では、肛門が狭くなり排便に影響が現れます。
肛門狭窄は、以下の3つの原因によって生じます。
肛門の狭窄に伴い、排便しづらくなります。
当院の肛門外科には、日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医ならびに指導医が2名、日本臨床肛門病学会の技能指導医が2名在籍しています(2021年1月時点)。そのため、専門知識を有する実績を重ねた医師が治療にあたることが可能です。また、若手医師の指導にも力を注ぎ、診療科全体のレベルアップも図っています。
蓄積している知識は、応用できなければ意味がありません。座学で病気や手術について平面的に理解していたとしても、立体的な人体を前に知識を応用して適切に対応できるかといえば難しいと言わざるを得ないでしょう。そこで当科では、指導医の診察について実際に患者さんを診たり、患部を触ったりすることで若手医師が持っている知識を知恵として身につけられるように指導を行っています。
上記のグラフのとおり、直腸脱を除いて当科の手術件数は年々増加しています。直腸脱の場合、腹腔鏡下手術で行うと予後がよいため、腹腔鏡下手術が適用の患者さんは消化器外科で手術を行っています。それ以外の患者さんは肛門外科で肛門内手術を実施しています。
これからも治療を必要とする患者さんに適切な治療が提供できるよう、診療体制の拡充に努めてまいります。
肛門からの出血はあるけれども痛みがない場合には、肛門疾患以外に大腸がんの可能性があります。ですから、なるべく早く消化器内科あるいは肛門外科を受診ください。
肛門に何らかの症状があったとしても、すぐに病院を受診することが難しい方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長期間治療せずにいると、患者さんの負担が少ない治療が適応外となってしまうこともあるため注意が必要です。たとえば、内痔核であった場合に長期間治療せずにいると外痔核も脱出してきます。そうなると、内痔核に薬を注射することで治療できる硬化療法は適応外になることがあります。時間が経過してしまうと切除を伴う患者さんの負担が大きな治療法を検討しなければならなくなるため、症状が現れたら放置せず速やかに肛門外科に受診いただければと思います。
医療法人伯鳳会 大阪中央病院 外科 特別顧問
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