概要
壊疽性膿皮症(PG)とは、皮膚に炎症が生じて膿や痛みを伴った水ぶくれや赤い斑点、皮膚の潰瘍などがみられる病気です。病変は主に膝から足首の間に生じることが一般的ですが、時にお腹や顔などにみられることもあります。
壊疽性膿皮症は自己炎症性疾患の1つで、自然免疫の異常によって生じるといわれています。
発症頻度は、年間100万人あたり3~10人程度といわれていて、発症年齢は幅広く主に20~60歳代と報告されていますが、子どもや高齢の方にみられることもあります。男女比はやや女性に多いことが分かっています。
種類
壊疽性膿皮症には、潰瘍型、膿疱型、水疱型、増殖型、ストーマ周囲型など複数の種類があります。頻度としては、潰瘍型が80%程度ともっとも多いことが特徴です。
潰瘍型
潰瘍型は古典型PGとも呼ばれ、もっとも多くみられます。主に下腿(膝から足首の間)に生じることが一般的です。
膿疱型
膿疱型は赤味を伴う膿のたまったできもの(膿疱)が生じます。主に頭や体幹、手足にみられることが一般的です。
水疱型
水疱型は血液疾患を合併している方に多く、手の甲や腕、下腿などによく現れます。
増殖型(表在型)
増殖型は、潰瘍のように皮膚がへこむのではなく、周囲よりも盛り上がる(隆起する)ことが一般的です。
ストーマ周囲型
ストーマ周囲型は、手術によって作られた人工肛門の周辺に生じます。
原因
壊疽性膿皮症が起こる原因については、まだ分かっていません。免疫システムの異常が関与していると考えられています。壊疽性膿皮症の炎症には “TNFα”と呼ばれる炎症物質などが深く関わっているといわれており、これらの物質が増加することによって症状が悪化したり、長期化したりするといわれています。
また、壊疽性膿皮症は特定の病気を持っている方に起こりやすいほか、時にけがや外的刺激、薬剤などがきっかけで生じることもあります。壊疽性膿皮症を合併しやすい病気としては、具体的に以下のような病気が挙げられます。
壊疽性膿皮症と合併しやすい主な病気
症状
壊疽性膿皮症では病型によっても異なりますが、病変部分に炎症が生じ、水ぶくれや赤い斑点、潰瘍などが生じます。強い痛みが生じることも多く、進行とともに病変が広がっていくことも少なくありません。
検査・診断
壊疽性膿皮症は病型が複数あり、時間の経過などの影響で所見が変わってくることもあるため、診断の難しい病気として知られています。海外でいくつかの診断基準が提唱されていますが、現在のところ、日本で統一された診断基準はありません。
すでにかかっている病気や血液検査、病理組織検査などから判断されます。
血液検査
炎症が強いときにはCRPや赤血球沈降速度などの数値が上昇することがあります。また末梢血では白血球数や好中球数の増加が確認されます。
病理組織検査
病変部分の一部(組織)を採取し、顕微鏡で観察する検査です。みられる所見は病気の進行度合いや分類によっても異なりますが、主にがんや血管炎、感染症との見分けをつけるときに役立ちます。
治療
壊疽性膿皮症では、炎症を抑えて潰瘍を小さくすることを目的に治療が行われます。好発部位である下腿に病変が生じている場合、特に安静が必要となるため、入院が必要となることも少なくありません。病変部分は外用薬や傷を覆う道具を使ってある程度湿度を保ったうえで保護します。また、むくみが生じることもあるため、包帯を巻くこともあります。
何らかの病気に合併して起こっている壊疽性膿皮症では、その病気の治療を優先しながら、壊疽性膿皮症の治療を検討する必要があります。
壊疽性膿皮症に対する具体的な治療方法としては、薬物療法が検討されます。
薬物療法
軽症の壊疽性膿皮症の場合、ステロイド剤や免疫抑制剤の塗り薬が検討されることが一般的です。
中等症以上の壊疽性膿皮症の場合、ステロイド薬や免疫抑制剤の飲み薬が検討されることが一般的です。また、2020年に生物学的製剤“アダリムマブ”が使用できるようになり、注射で壊疽性膿皮症を治療することも可能になってきています。医師の許可があれば、自己注射も可能です。
アダリムマブはもともと関節リウマチや尋常性乾癬、クローン病などさまざまな病気に使用されていた治療薬で、壊疽性膿皮症の炎症の原因となる“TNFα”のはたらきを抑えることで症状を和らげる効果が期待できます。
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