こうちゅうきゅうげんしょうしょう

好中球減少症

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概要

好中球減少症とは、血液中を流れる好中球の数が正常よりも減っている状態を指します。好中球減少症を呈している状態では、細菌や真菌に対して感染するリスクが高くなります。化学療法の治療経過中に好中球減少症を認めることが多く、そのほかにも重症感染症によるものや先天的なものなど原因は多岐に渡ります。

好中球が減少しているだけでは症状はありませんが、一度感染症にかかると重症化することもまれではありません。したがって、好中球減少症において感染症が発症したことが疑われる場合には、原因となりうる病原菌を念頭に置いて、迅速に抗生物質を投与することが必要になります。

原因

血液中には、白血球、赤血球、血小板といった、それぞれ違った役割を持つ細胞が存在しています。白血球さらに好中球、好酸球、リンパ球などに分類することができます。このうち、血液中に存在する好中球の数が正常よりも少なくなってしまっている状態が好中球減少症です。

好中球は、身体の外から体内に入り込んだ病原体と戦い、病原体による傷害から身体を守るために重要な役割を担います。好中球は病原体を取込み、好中球自身の中で病原体を殺菌します。最終的に好中球と病原体が戦った痕として、「(うみ)」が形成されることになります。以上のようなはたらきを持つ好中球が減少してしまう好中球減少症では、病原体に対しての防御反応が不足するため、細菌に対しての防御力が低下することになります。

病原体に対してどの程度防御反応が低下するかどうかは、血液中に存在する好中球の数に依存します。好中球の数が血液1μlあたりで500個(すなわち500個/μl)を下回る時には、感染症のリスクがよりいっそう高まることが知られています。人の身体の中には皮膚(ひふ)や口腔内、消化管などに幅広く「常在菌」が生息しています。常在菌は、好中球の数が正常であれば感染症症状を引き起こすことはありません。しかしながら、好中球の数が500個/μl未満の場合は、健康時には問題のない常在菌が身体に対して悪影響を及ぼすリスクも生じます。

好中球減少症の原因としてもっとも頻度が高いのは、化学療法に関連したものです。化学療法に使用される抗がん剤は、がん細胞を殺傷する効果があるのはもちろんですが、一方で好中球を始めとした正常な細胞に対しても毒性があります。そのため、正常な好中球も影響を受けることになり、好中球減少症が発症します。また、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)で使用されるプロピルチオウラシルや、アレルギーなどが関連して好中球減少症が発症することも知られています。

好中球は骨の中に存在する「骨髄(こつずい)」と呼ばれる場所で産生されている関係から、骨髄の病気が原因となって好中球減少症が発症することもあります。また、Kostmann症候群と呼ばれる病気では先天的に骨髄での好中球産生が低下しており、同じく好中球減少症の原因となり得ます。

また、感染症に関連して好中球減少症が発症することも知られています。代表的には麻疹敗血症肝炎ウイルスなどです。感染症に対応した好中球減少症は、骨髄での好中球産生が低下している、細菌と戦うために多くの好中球が使用されており骨髄での産生が間に合わない、などの機序が知られています。そのほかにも、脾臓(ひぞう)亢進症、巨赤芽球性貧血、自己免疫性好中球減少症など、その原因は多岐に渡ります。

症状

好中球が減少しているのみでは、明らかな自覚症状はありません。好中球減少症では細菌や真菌に対しての防御力が低下しており、病原体に対して感染が成立した際に症状が出現することになります。そのため、好中球減少症で感染症が発症した際に認める症状は、全身症状としての発熱、悪心、悪寒、ふるえなどです。

好中球減少症に感染症が併発した際に注意すべき点は、感染が成立した臓器における炎症所見が出現しにくい点です。たとえば、正常の好中球数がある状況で皮膚感染症を発症したら、発赤や腫脹、熱感、の形成などを見ることが一般的です。しかし、好中球減少症では炎症反応を引き起こす好中球そのものが減少している状況ですので、感染症を発症してもこうした炎症反応が発生しにくくなっています。

検査・診断

好中球減少症の治療は、血液検査にて好中球の数が減少していることから診断をします。好中球減少症で感染症が発症した場合には、血液中に細菌が混入することが多いため、血液培養と呼ばれる検査を行い病原体が血液中に混入していないどうかを確認することも重要になります。そのほか、肺炎髄膜炎などといった感染症も発症しやすく、痰の検査や髄液検査も行われることがあります。

さらに、感染が疑われる臓器に焦点を当てて画像検査が併用されることもあります。たとえば、肺炎であれば胸部レントゲン写真や胸部CT、腹部の感染症が疑われる場合には腹部CTが施行されることもあります。ただし、好中球減少症で注意すべき点は、の形成がされにくいと言う点です。そのため、好中球減少症おける感染症では、どの臓器が標的になっているのかを同定することは必ずしも容易ではありません。

治療

好中球減少症の治療においては、感染症に対しての治療、好中球減少症をきたしているものの原因除去、を主に挙げることができます。

好中球減少症時における感染症は、急激に状態悪化を引き起こすことがあるため、緊急に対応することが重要です。緑菌や黄色ブドウ球菌など、原因となりうる病原菌に対して幅広く対応できるように抗生物質を組み合わせて投与することが求められます。好中球減少症時における発熱が長引く際には、真菌に対しての対応も必要となるため抗真菌薬の投与も併用されます。そのほか、骨髄移植時などには予め感染症の予防策として、ニューキノロン系抗生物質が投与されることもあります。

また、好中球減少症を引き起こしている原因に対してのアプローチが必要になることもあります。たとえば、好中球減少症を引きおこす可能性のある原因薬剤を使用している場合は、それを中止することが必要です。

化学療法中などでは、原疾患との兼ね合いをみながら、好中球を増やすための薬剤(G-CSF:顆粒球(かりゅうきゅう)コロニー刺激因子)を投与することもあります。

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