概要
小脳出血とは、大脳の後下方に位置する小脳と呼ばれる部位に出血が生じる病気のことです。
小脳は、姿勢や平衡感覚の維持、スムーズな運動などを可能にする機能を司ります。そのため、出血が生じると頭痛や嘔吐など一般的な頭蓋内圧亢進症状以外に、めまい、起立・歩行障害といった症状が現れるようになります。また、重度な場合には小脳が腫れて、前方に位置する脳幹を圧迫して呼吸機能の低下や重篤な意識障害などを引き起こすことも少なくありません。
小脳出血の主な原因は高血圧や糖尿病、脂質異常症などに起因する動脈硬化と考えられていますが、中には頭部外傷や脳動静脈奇形の破裂などが原因になることもあります。しかし、いずれにせよ発症した場合は早急な治療が必要であり、治療が遅れると命に関わることもあるため注意が必要です。
原因
小脳出血の原因としてもっとも多いのは、高血圧と考えられています。高血圧は血管の弾力性を失わせる動脈硬化を引き起こし、血圧が高くなるタイミングで血管が破れて脳出血を引き起こしやすくなるのです。
また、そのほかにも脳の血管の奇形である脳動静脈奇形の破裂、脳の細い血管にアミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積して脆くなっていくアミロイド・アンギオパチー、白血病などの病気に伴う血液凝固異常が原因となることもあります。
症状
小脳出血を発症すると、頭蓋内の圧力が上昇することにより、頭痛、吐き気・嘔吐など他部位の脳出血でも現れる一般的な症状(頭蓋内圧亢進症状)がみられるようになります。
また、小脳は姿勢や平衡感覚、滑らかな運動などを可能にする機能を司る部位であるため、出血が生じるとめまいや歩行障害、スムーズな運動ができなくなるといった症状が現れるのも特徴の1つです。
さらに、小脳は呼吸や心臓の拍動などの生命活動を司る脳幹の後方に位置するため、重症な場合は腫れた小脳が前方の脳幹を圧迫して意識障害や呼吸停止などを引き起こすケースもあります。
検査・診断
小脳出血が疑われる場合は次のような検査が行われます。
画像検査
小脳の出血の有無や重症度、脳幹などへの影響の程度を調べるには頭部CT検査が必要となります。多くはCT検査のみで診断することができますが、脳動静脈奇形などが疑われる場合は血管の状態などを詳しく調べるために、造影CT、MRI検査を行うこともあります。
血液検査
血液検査で小脳出血の診断をすることはできませんが、出血しやすくなるような血液疾患の有無や全身の状態を調べるために血液検査を行うのが一般的です。
脳血管撮影検査
足の付け根などの太い動脈からカテーテル(医療用の細い管)を挿入して、その先端を脳血管まで至らせ、造影剤を注入することで脳の血管の状態を詳しく調べることができる検査です。
脳動静脈奇形などが疑われる場合は、治療方針を決めるうえでも脳血管撮影検査を行うことがあります。
治療
小脳出血の治療方法は、出血の範囲や重症度によって大きく異なります。
出血の最大径が3cm以上であり、神経症状が増悪している場合、脳幹を圧迫している場合などは緊急手術によって血腫を除去する手術が必要になります。
一方で、少量の出血であれば時間の経過とともに脳に吸収されていきますので、出血の範囲が小さく神経症状も軽度な場合には、脳の腫れを予防する薬などを用いた薬物療法を行いながら経過を見ていく場合もあります。
また、重症な小脳出血は脳幹を圧迫し、脳室で産生される脳脊髄液の流出路が閉じる閉塞性水頭症を併発することがあります。そのような場合には、拡大した脳室内にたまった脳脊髄液を排出させるために脳室内に管を留置する“脳室ドレナージ術”が行われます。さらに、全身状態に応じて人工呼吸器による呼吸管理などが必要になるケースも少なくありません。
予防
小脳出血のもっとも多い原因は高血圧であるため、日ごろから食事や運動、睡眠などの生活習慣を整え、喫煙している場合は禁煙を心がけ、大量の飲酒を避けるようにしましょう。
また、血圧は定期的にチェックし、高値が続く場合は医療機関で適切な検査・治療を受けることも大切です。
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