心房細動は不整脈の1つで、それ自体は死に直結することは少ないです。しかし、動悸や息切れなどにより生活の質(QOL)が低下したり、放置することで後遺症を伴う脳梗塞を引き起こしたりすることがあります。今回は、心房細動のメカニズムや原因について、札幌心臓血管クリニックの北井 敬之先生にお話を伺いました。
心房細動は心臓のはたらきに異変が起こることで生じます。では、そもそも心臓はどのようなはたらきをしているのでしょうか。
心臓のはたらきが生きていくために欠かせないということは、誰もが知っていることではないかと思います。その心臓の大きなはたらきは、全身に血液を送り出すことです。心臓は、肺に血液を送り込み血液中に酸素を取り込みます。その後、再度心臓を経由した血液は全身へと送り込まれ、酸素や栄養を届けると同時に、二酸化炭素などの老廃物を回収しながらまた心臓へと戻ります。つまり、心臓のポンプ機能によって血液が体中をめぐることで、血液中に含まれた酸素や栄養などが全身に運ばれ、あらゆる体の機能が保たれているのです。これが、心臓のはたらきが生きていくために欠かせないといわれる理由です。
心臓は、4つの部屋に分かれており、左右は“中隔”という壁で、上下は血液が逆流しないようにするはたらきを持つ“弁”で仕切られています。上2つの部屋を心房、下2つの部屋を心室といい、心房は心室に、心室は全身に血液を送り込むという役割があります。
これら4つの部屋の外側は筋肉になっており、この筋肉が収縮することで血液が送り出されていきます。そして、筋肉を収縮させるために、心臓には微弱な電気信号が流れているのです。電気信号を発する部位は右心房の上部にあり、“洞結節”と呼ばれます。洞結節で発生した電気信号は、心房と心室の筋肉へと伝達されていきますが、心房から直接心室へと電気信号が伝えられるわけではなく、一度“房室結節”という中継所を通ります。一般的に安静時は1分間で60回程度、一定のリズムで電気信号が洞結節から送られており、1日でおよそ10万回もの拍動になるといわれています。
では、心房細動とは何を指し、どのようなメカニズムで起こるのでしょうか。心房細動は不整脈の1つで、その名のとおり心房がけいれんしたかのように細かく動く状態を指します。心房が細かく動いてしまう原因は、電気信号の乱れです。何らかの理由により洞結節以外の部位から電気信号が発せられ、心房内でいくつかの電気信号がぐるぐると回ることで、心房の異常な動きにつながります。
特に異常な電気信号を発することが多いのは、左の心房にある肺静脈の付け根です。心房細動は誰にでも起こり得るもので、4人に1人は心房細動になるともいわれています。
心房細動が起こると心房は毎分300~600回程度動きます。そのため心房は震えた状態となり血液のよどみができて血栓(血の塊)ができやすくなります。それに対して心室は、1分間に60~200回と非常に不規則な脈の打ち方になり、動悸や息苦しさといった症状が現れることがあります。
心房細動は、その状態が持続する期間によってそれぞれ“発作性”“持続性”“長期持続性”と分類されます。発作性心房細動は心房細動が起きて数時間~1週間以内で治まるものを指します。持続性心房細動の場合にはその状態が1週間以上続き、さらにそれが1年以上続いた場合には長期持続性心房細動と呼ばれます。初めのうちは発作性心房細動であっても、繰り返し心房細動が起こることにより持続性心房細動や長期持続性心房細動へと移行していくと考えられています。
心房細動を起こす方は、日本において2005年時点で約71万人いると推定されており、さらに2050年には約103万人、日本の総人口の約1.1%を占めるという予測もあります。これは、心房細動のリスクを高める要因の1つに加齢が挙げられることが関係しています。日本は今後も高齢化が進むといわれているため、それに伴い心房細動が起こる方も増えていくということです。また、加齢のほかにも心房細動のリスクを高める要因として以下が挙げられます。
これらの要因を改善することによって、心房細動の長期的な発症リスクを抑えたり、発症を遅らせたりできる可能性があります。
本ページでは心臓のはたらきや構造、心房細動が起こるメカニズム、原因について解説しました。では、心房細動にはどのような症状、危険性があるのでしょうか。次ページでは、心房細動の症状や合併症についてお伝えします。
医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 循環器内科
北井 敬之 先生の所属医療機関
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