概要
肛門皮垂とは、肛門の皮膚が外に飛び出した状態のことを指し、“スキンタグ”とも呼ばれます。嵌頓痔核や血栓性外痔核などの痔核の治癒後や、肛門の皮膚に繰り返し炎症が起こることで皮膚組織が硬くなり(線維化)、肛門皮垂を生じることがあります。
肛門皮垂は原因によって“特発性”と“二次性”に分けられ、明らかな原因のないものは特発性、痔核や肛門のかゆみ、出産などによって生じるものは二次性に分類されます。主な症状は、肛門周囲の違和感や不快感などです。
治療は外科的切除が基本であり、患者さんが希望する場合のみに行われます。
原因
肛門皮垂は、明らかな原因のない特発性と、何らかの原因によって生じる二次性に分けられます。
二次性の場合は、肛門のかゆみや裂肛(切れ痔)、内痔核、外痔核、便秘などの排便障害によって生じることがあります。また、出産を経験した女性に多くみられることから、妊娠や出産による刺激も原因になると考えられています。
これらの原因によって肛門皮膚の組織に線維組織が増殖し、しわができることで肛門皮垂を生じます。
症状
肛門皮垂では、肛門出口の皮膚がたるみ外に飛び出します。自覚症状がない場合もありますが、肛門周囲の違和感や不快感を生じることがあります。
通常は痛みを伴いませんが、皮膚組織内でむくみが生じているときには、痛くなったり腫れたりすることがあります。嵌頓痔核や血栓性外痔核に伴って生じた場合には、痔核の脱出や腫れ、痛みのほか、排便時に出血を伴う場合もあります。
また、肛門皮垂があることで排便後に肛門を綺麗に拭けず、何度も擦るなどして刺激が加わることでも痛みやかゆみを生じるケースもあります。排便時に肛門が外側に引っ張られ、切り傷(肛門内なら裂肛、肛門外なら裂創)ができて肛門皮垂が悪化したり、肛門ポリープができたりすることもあります。
そのほか、女性では生理によって肛門皮垂が汚染されたり、肛門カンジダを合併したりするケースもあります。肛門カンジダでは、肛門周囲の皮膚の皮がむけて白くなったり赤くなったりして、かゆみを伴うのが特徴です。
検査・診断
肛門皮垂の診断は、肉眼的に肛門の所見を確認することで行われます。
肛門皮垂では、直腸と肛門のつなぎ目から外側の外痔核を生じる部位の皮膚が厚くなっている所見を確認できます。また、肛門皮膚の組織を詳しく観察すると、線維組織が増殖し硬くなっている所見を確認できます。通常、皮膚組織が炎症を起こすことはありません。
治療
症状が肛門皮垂のみの場合には特別治療は必要ありませんが、患者さんが希望する場合や不快感が強い場合などは病変の外科的切除が行われます。
切除は通常、局所麻酔にて行われます。切除する範囲によって、痛みの程度や治癒するまでの期間が異なります。
予防
二次性の肛門皮垂は、便秘や痔核などによって生じることがあります。そのため、便秘や痔核の予防が肛門皮垂の予防につながるケースもあるといえます。
便秘を予防するためには、食習慣を見直すことが重要です。極端な食事制限は避け、1日3食バランスよく食事を取るようにしましょう。食物繊維や腸内環境を整える発酵食品などを食事に取り入れ、水分を十分に摂取することも有効です。
また、痔核は長時間トイレに座ったり排便時にいきんだりすることで、肛門部に負担がかかることで発症しやすくなります。痔核を予防するためには、便秘や下痢を起こさないよう気を付け、長時間の同一姿勢を避けることが重要です。
また、アルコールや辛いものなどの刺激物を控え、排便後には肛門周囲を清潔に保つようにしましょう。
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