概要
肺サルコイドーシスとは、肺に肉芽腫*が形成される病気です。全身のさまざまな臓器に肉芽腫が発症する病気をサルコイドーシスといいます。サルコイドーシスのはっきりとした発症メカニズムは解明されていませんが、微生物に対する免疫反応が関与している可能性が指摘されています。
肺サルコイドーシスは自覚症状がとぼしいため、健康診断や他の疾患の診療経過中に偶然発見される場合が多いとされています。かつては予後良好な病気として70~80%は5年以内に自然に回復し、特に若年での回復率が高いとされていましたが、この数十年で発症年齢は高齢化しており、診断から5年後の自然回復率は約30%と高くはありません。また、無症状の中で、定期的な経過観察をいつまで行っていくのがよいかはまだ分かっていません。
肉芽腫性病変は自然に消退することがあるため、症状がなければ無治療で経過観察を行うことが多いですが、何らかの症状や肺機能に障害がある場合にはステロイドや免疫抑制薬を用いた薬物療法が行われます。また、肺の機能が著しく低下している場合には肺移植が検討されることもあります。
*肉芽腫:リンパ球などの炎症や免疫に関わる細胞が集合してできる結節
原因
肉芽腫と呼ばれる結節が肺に発生することが原因で発症します。なぜ肉芽腫が形成されるか明確な発症メカニズムは解明されておらず、日本では難病の1つに指定されています。一方で、サルコイドーシスにおける肉芽腫形成には、アクネ菌や結核菌などの微生物の存在や免疫応答が関係している可能性が指摘されています。そのほか、遺伝的要因もサルコイドーシスの発症に関連していると考えられ、HLA遺伝子のほか、さまざまな遺伝子の関連性が報告されています。
症状
肺サルコイドーシスは自覚症状をともなうことがほとんどなく、しばしば自然に治ることが知られています。そのため、無自覚で病気が進行する場合があります。病状が進行すると、咳や息切れなどの呼吸に関する症状が出現することがあり、重症化すると肺の線維化(肺の組織が硬くなること)を引き起こすようになります。この段階になると、回復は困難になり慢性の経過をたどることがあります。呼吸に関する症状以外にも、疲れや痛み、発熱といった臓器非特異的な全身症状を引き起こすことがあります。
検査・診断
肺サルコイドーシスが疑われる場合は、以下の検査が実施されます。
画像検査
肺サルコイドーシスではほとんどの場合で胸郭内のリンパ節が腫れる特徴的な所見が現れます。そのため、診断には胸部X線やCTなどによる画像検査が必要となります。
血液検査
肺サルコイドーシスでは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性やリゾチームの値が上昇することが知られています。また、他の病気との区別のために、血液検査が行われます。
気管支鏡検査
内視鏡を気管支内に挿入して内部の状態を詳しく観察する検査です。肺サルコイドーシスの診断では、気管支肺胞洗浄液(気管支や肺胞を洗浄した液体)中のリンパ球の比率の変化を確認する気管支肺胞洗浄液検査が行われます。
また、この検査では病変部位の組織採取が可能で、採取した組織を顕微鏡で詳細に観察する病理検査を実施します。
治療
肺サルコイドーシスに対する根本的な治療法は、現時点では確立されていません。この病気は自然治癒することがあるため、無症状の場合は治療を行わないで経過観察を行うことが一般的です。症状が出現した場合や、肺機能の低下が懸念される場合には、治療介入の対象となります。治療の中心となるのは薬物療法であり、主にステロイドや免疫抑制薬が治療薬として使用されています。病気の進行によって、肺の機能の回復が見込めず、最終的に肺移植が必要となるケースもあるため注意が必要です。
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