けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう

血栓性血小板減少性紫斑病

同義語
TTP
最終更新日:
2023年02月03日
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2023/02/03
更新しました
2023/01/26
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概要

血栓性血小板減少性紫斑病(けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)(TTP)とは、全身の細い血管に血小板でできた“血栓”が詰まる病気です。

血液中の血小板の数が減少するほか、貧血や腎臓の障害、発熱、精神や神経に関する症状など、さまざまな症状が現れることがあります。国の指定難病にもなっています。

種類

血栓性血小板減少性紫斑病には、生まれつき生じる先天性のものと、歳をとってから発症する後天性のものがあります。血栓性血小板減少性紫斑病の95%以上は後天性であるといわれています。

先天性血栓性血小板減少性紫斑病

生まれつきの遺伝子異常による血栓性血小板減少性紫斑病で、“Upshaw-Schulman症候群(USS)”と呼ばれることもあります。ほとんどが生後まもなく発症し、重篤な黄疸(おうだん)*や血小板の減少がみられます。時に学童期や成人以後(特に妊娠中)に発症する方もいます。

*黄疸:血液中にビリルビンと呼ばれる成分が多く含まれることにより、皮膚や白目などが黄色くなる状態をいいます。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP)

年齢を重ねてから何らかの原因で起こる血栓性血小板減少性紫斑病をいいます。子どもから高齢者まで幅広い年齢の患者がみられ、全体的には患者の男女比は1:1といわれています。一方で、20~40歳代で発症する場合は女性の患者が多いことが特徴です。

なお、後天性TTPの中でも、原因となる病気が分からないものを“原発性”、何らかの病気が原因となっているものを“続発性(二次性)”と呼びます。

原因

血栓性血小板減少性紫斑病は、ADAMTS13と呼ばれる酵素のはたらきが弱まることによって発症します。ADAMTS13は血小板同士をくっつける(のり)の役割をする“フォンビルブランド因子(VWF)”を切断する酵素です。主に肝臓で作られています。

ADAMTS13のはたらきが弱くなってしまうと超巨大なVWFが作られ、血小板同士がくっついたまま“血栓”として血管内に詰まり、血流が悪くなってしまいます。

先天性血栓性血小板減少性紫斑病の場合

生まれつきADAMTS13に遺伝子異常があることによって生じます。両親ともこの病気に関連する遺伝子異常を持っていた場合に発症する可能性があります。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP)の場合

後天的にADAMTS13のはたらきが弱くなる原因としては、免疫の異常や重篤な肝臓の障害により、ADAMTS13の産生が十分にできなくなることなどが考えられます。

免疫は体の中に入ってきた異物から体を守るために、その異物に特化した“抗体”を作って異物を攻撃します。後天性TTPの場合、免疫の異常により誤って自身のADAMTS13に対する抗体を作ってしまうようになり、これによってADAMTS13のはたらきが弱くなります。

症状

血栓性血小板減少性紫斑病では古典的な5つの症状として、血小板の減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経障害が挙げられます。ただし、症状の現れ方には個人差があり、必ず全ての症状が出るとは限りません。

血小板の減少

血小板の減少により、出血が止まりにくくなったり、皮膚に紫色の斑点(皮膚出血のあと)が生じたりすることがあります。

溶血性貧血

血液中のヘモグロビン量が低下し、立ちくらみや息切れ、めまいなどの症状が起こることがあるほか、ときに黄疸の症状を伴うこともあります。

血管のさまざまな部位で血栓が詰まることにより、通常なら細い血管を通り抜けられるはずの赤血球が血栓に物理的に破壊され、溶血性貧血を引き起こします。また、破砕赤血球(破壊されて異常な形をした赤血球)を伴います。

腎機能障害

血尿などから腎臓の異常が疑われることもあります。そのほか、尿検査による尿潜血、尿タンパク陽性などが確認されます。

発熱

37℃以上の発熱がみられることがあります。時に、39℃などの高熱を出す方もいます。

精神神経障害

頭痛など軽度な症状から、せん妄や意識障害、重症例では体の麻痺、けいれんまで多様な症状が現れることがあります。

検査・診断

血栓性血小板減少性紫斑病の原因となるADAMTS13の確定診断には、ADAMTS13のはたらき(活性)を測定する検査とADAMTS13に対する自己抗体があるかを調べる2つの検査があります。これらの検査は、2018年より保険診療で行えるようになりました。

そのほか、血液中の血小板や赤血球の数、腎臓の機能を確認するために血液検査や尿検査などが行われます。

ADAMTS13検査

ADAMTS13検査は、原因の分からない血小板の減少がみられた際に行われることが一般的です。検査内容は大きく2つに分けられます。

1つは、ADAMTS13のはたらき(活性)を測定する検査です。具体的には活性が10%未満まで低下している場合には、血栓性血小板減少性紫斑病と診断されます。

2つめは、ADAMTS13の活性を低下させる自己抗体(インヒビター)があるかを調べる検査です。この検査で自己抗体がある(陽性)と判断された場合、後天性TTPと診断されます。一方、この検査でインヒビターがない(陰性)と判断された場合は先天性血栓性血小板減少性紫斑病が疑われます。

自己抗体が陰性であった場合

検査でインヒビターが陰性であっても、自己抗体が存在するという可能性もあるため、患者の年齢や症状、かかっている病気などに応じてより詳しい検査を行うことがあります。先天性血栓性血小板減少性紫斑病が疑われる例では、両親のADAMTS13活性検査や本人の遺伝子解析などを行い、確定診断に至ることもあります。

血液検査

血液検査で血小板が10万/μL未満の場合、ヘモグロビンが12g/dL未満の場合、血清クレアチニンが上昇している場合などは血栓性血小板減少性紫斑病が疑われます。

尿検査

尿潜血、尿タンパクの陽性などがみられた場合、血栓性血小板減少性紫斑病が疑われることがあります。

治療

先天性血栓性血小板減少性紫斑病の場合

一般的には、2週間に1回新鮮凍結血漿(しんせんとうけつけっしょう)(新しい血漿)を輸注することにより、ADAMTS13を補給し、発症予防を行います。しかし、中には発作が生じたときにのみ新鮮凍結血漿を輸注するだけで十分通常の生活ができる患者もいます。

なお、妊娠中は新鮮凍結血漿を定期投与します。

後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP)の場合

治療の第一選択肢としては、血漿交換療法が挙げられます。血漿交換療法とは患者の血液を抜き取り、代わりに新鮮凍結血漿を患者の体に入れる治療方法です。臨床的に後天性TTPが疑われたら、速やかに血漿交換療法を開始します。なお、後天性TTPの場合、血漿交換療法、副腎皮質ステロイドと抗フォン・ヴィレブランド因子抗体薬 カプラシズマブの併用が推奨されます。

難治性の場合

血漿交換療法を5回以上行っても病状が十分に改善しない場合などには、血漿交換療法に加えて抗CD20モノクローナル抗体薬 リツキシマブの投与が検討されることがあります。リツキシマブは2020年より後天性TTPに対して保険適用となり、主に難治例・再発例の患者に使用が検討されることがあります。

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