けっかんえんしょうこうぐん

血管炎症候群

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

全身各所には、大血管から毛細血管まで様々な大きさの血管が広く分布しています。

血管炎症候群は、血管に対して異常な炎症が生じ発症する病気の総称です。具体的には、以下のような病気が挙げられます。

など

全身の血管の大きさはさまざまであり、疾患によってどの部位の血管障害が生じやすいかが異なってきます。障害を受ける臓器として、全身のありとあらゆる場所に血管が走っているため、皮膚、神経、腎臓、肺、消化管、心臓など実に多彩です。さらに、同じ診断病名であっても、個々の患者さんで同じような症状が現れるとは限らないため、血管炎症候群をより一層複雑なものとしています。

原因

単一の原因ではなく、遺伝的体質と細菌感染などの環境因子による複数の要因が組み合わさって、本来ウイルスや細菌などの異物に対して自分の体を守る免疫システムが異常となり、自分の血管に対して自分の免疫細胞が異常に攻撃し、血管に炎症が生じると推定されています。

また、顕微鏡的多発血管炎多発血管炎性肉芽腫症好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者さんでは、抗好中球細胞質抗体( antineutrophil cytoplasmic antibody, ANCA)という自分の好中球細胞に対する抗体(自己抗体)が陽性となり、これらの病気はANCA関連血管炎と言われます。このような自己抗体の産生が病気の発症に関与していると考えられています。

一方、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、梅毒、薬剤、がんなど血管炎症候群を2次的に引き起こす明らかな原因が隠れていることもあります。

症状

数多くの疾患を包括的に含む血管炎症候群ですが、疾患に共通する症状として、発熱、体重減少、倦怠感といった体内で炎症が生じている状況を反映した症状です。

また、血管炎症候群では、病気に応じて障害を受ける血管のサイズや臓器が異なります。体内で一番太い血管で心臓とつながっている大動脈やそこから枝分かれする比較的太い血管に炎症が生じる高安動脈炎巨細胞性動脈炎では、頭痛、目が見えにくい、ものを噛み続けた際の顎の痛み、めまい、耳鳴り、首の痛、腕や手の痛み・しびれ・だるさ、手の脈が触れにくい、胸や背中が痛いなど、様々な症状が現れます。

一方、小さい血管に炎症が生じるANCA関連血管炎では、皮膚症状(あざやただれ)、神経症状(手足の力が入りにくい、しびれ)、呼吸器症状(咳、血痰(けったん)喘息、動くと息苦しい)、腎機能障害(体のむくみ、蛋白尿、血尿)といった多彩な症状が現れます。

検査・診断

血管炎症候群が発症した際には、原因となっている疾患が存在していないかどうかを確認することが重要です。肝炎ウイルス抗原・抗体、梅毒反応、自己抗体(MPO-ANCA, PR3-ANCA)を含めた血液検査を行います。

また、血管炎症候群では、血液検査、尿検査、CT(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)や超音波検査などの画像検査、眼科での診療など、どの血管が障害されているのか評価することも大切です。場合によってはPET(がんなどに用いられる検査の一種。特殊な薬とカメラを使って全身の腫瘍や炎症の病変を調べる検査。血管炎では健康保険の適応外検査。)が行われることもあります。

血管炎症候群では皮膚に症状が現れることが多いので、皮膚生検(皮膚の組織を採取)で血管の炎症がみられれば確定診断に至る場合があります。また、蛋白尿や血尿が目立つ場合には、腎臓の状態を評価するために、腎生検(腎臓の組織を採取)をすることもあります。

治療

血管炎症候群は、血管に炎症が生じる病気です。そのため、炎症をコントロールすることが重要であり、治療には副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が用いられます 。

一般的に血管炎症候群の治療経過は長く、薬剤を長期使用することもあり、副作用にも注意が必要です。特に、ステロイドの内服治療に関して、易感染性や骨粗しょう症糖尿病胃潰瘍などの副作用が出現することが懸念されます。そのため、ステロイド以外の免疫抑制剤を治療早期より用いることで、ステロイドの減量や病気の再発予防を図ります。

ANCA関連血管炎のような肺や腎臓などの内臓に病気が生している場合には、病気の勢いを抑える治療(寛解導入療法)として、シクロホスファミドやリツキシマブといった免疫細胞であるリンパ球を制御する免疫抑制薬を併用します。また、再発予防の治療(維持療法)として、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用します。また、炎症を引き起こす物質であるIL-6という炎症性サイトカインを選択的に阻害するトシリズマブというお薬が、高安動脈炎巨細胞性動脈炎で使用可能となりました。

血管炎症候群による症状は全身各所に渡るため、一つの診療科のみで対応することは難しいことが多いです。そのため、さまざまな診療科の先生と協力して治療を行うことが重要です。

 

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血管炎症候群を得意な領域としている医師

  • 順天堂大学医学部附属浦安病院 膠原病・リウマチ内科 准教授

    • 関節リウマチ
      • 様々な免疫抑制剤や免疫調節剤、生物学的製剤等を用いた集学的治療
    • 全身性エリテマトーデス
      • 様々な免疫抑制剤や免疫調節剤、生物学的製剤等を用いた集学的治療
    • リウマチ性多発筋痛症
      • 様々な免疫抑制剤や生物学的製剤等を用いた集学的治療
    • 血管炎症候群
      • 様々な免疫抑制剤や生物学的製剤等を用いた集学的治療
  • 東北医科薬科大学病院 皮膚科 科長、東北医科薬科大学病院 アレルギーセンター 副センター長、東北医科薬科大学 皮膚科学 教授

    • 白斑
    • アトピー性皮膚炎
    • ベーチェット病
    • 帯状疱疹後神経痛
    • 血管炎症候群