概要
血管炎症候群とは、全身のさまざまな血管に炎症が生じる病気の総称です。発症すると血液の流れが悪くなることで臓器の機能に異常をきたすようになります。
血管炎症候群は、炎症が生じる血管の太さによって“大血管炎”、“中血管炎”、“小血管炎”という3つのタイプに大きく分けられます。そのほかにもさまざまな太さの血管に炎症が生じるタイプ、特定の臓器の血管のみに生じるタイプ、ほかの病気に起因するタイプなども知られています。また、大人になって発症するタイプの血管炎症候群は、重篤な臓器障害を引き起こして命に関わるケースもあります。いずれのタイプも免疫の異常により血管の壁に炎症が引き起こされることが原因と考えられていますが、明確な発症メカニズムは解明されてないのが現状です。
基本的な治療は、炎症や免疫のはたらきを抑えるためのステロイドや免疫抑制薬を用いた薬物療法です。また、血管の詰まりを解消、予防するため、血液を固まりにくくする治療をすることもあります。
原因
血管炎症候群の明確な発症メカニズムは、現在のところ解明されていません。しかし、血管炎は免疫に異常が起こり、誤って血管の壁が攻撃されることなどによって発症すると考えられています。
一方、血管炎の中にはC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、梅毒などの感染症や薬の副作用、がんによって引き起こされることが分かっているタイプもあります。
症状
血管炎症候群では、全身のさまざまな血管に炎症が生じます。基本的には血行が悪化することで臓器にダメージを引き起こし、原因不明の発熱、全身のだるさ、体重減少などの全身症状を伴うことが多いとされています。しかし、血管炎症候群にはさまざまな病気が含まれているため、症状もそれぞれ異なります。
大血管炎
太い血管に炎症が生じる大血管炎には高安動脈炎や巨細胞性動脈炎があります。高安動脈炎では左右の腕や脚に血圧の差が生じたり、巨細胞性動脈炎では側頭部痛や視力障害などを引き起こしたりします。
中血管炎
中動脈に炎症が生じる中血管炎には結節性多発動脈炎や川崎病が含まれます。大血管炎よりも発症が急で、血管の壊死や狭窄、炎症性動脈瘤を伴いやすいとされています。
小血管炎
細い血管に発症する血管炎には、ANCA関連血管炎や免疫複合体性血管炎が含まれます。症状の現れ方はそれぞれ異なりますが、細い血管に炎症が生じると内臓や皮膚の症状が出現し、あざや皮疹、糸球体腎炎、間質性肺疾患、神経障害などが引き起こされます。
検査・診断
血管炎症候群が疑われるときは、それぞれの病気によって異なりますが、以下のような検査が行われます。
血液検査
血管炎症候群はさまざまな症状を引き起こすため、炎症の程度などを把握するために血液検査が必要となります。また、血管炎症候群の中には原因となる自己抗体*が特定されている病気もあるため、それらの有無を調べることで診断に役立てることも可能です。
*自己抗体:通常は存在しない、自分の体の細胞などを攻撃する抗体。免疫の異常によって生じる。
画像検査
血管の状態などを評価するために、CT、MRIなどの画像検査や血管造影検査などを行うことがあります。特に大血管炎で必要な検査ですが、小血管炎の状態を評価するためにも必要な検査です。
生検
血管炎の診断には生検(組織を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査)が非常に重要です。また、血管炎症候群は炎症が生じる血管が細いほど、さまざまな臓器に症状が出やすくなります。そのため小血管炎の場合は、腎臓、神経、皮膚などの臓器の生検が特に重要になることが多くあります。
尿検査
血管炎症候群の中には腎炎を引き起こすものも多く、腎機能の状態などを把握するために尿検査を行うことがあります。
治療
血管炎症候群の治療方法は病気のタイプによって異なりますが、免疫のはたらきと炎症を抑えるために、ステロイドや免疫抑制薬を用いた薬物療法が行われます。血管炎症候群の中には血管が詰まりやすくなる病気もあるため、それを予防、解消するための治療を行うこともあります。また、大血管炎で血管が細くなったり詰まったりしている場合は、手術でバイパスを形成したりすることもあります。
予防
血管炎症候群の多くは明確な発症メカニズムが解明されていないため、確立した予防法はありません。
特に大人になって発症した場合は、自然に軽快することはまれで、命に関わることもあるため注意が必要です。全身のだるさや原因不明の発熱などの体調不良が続くときは、早めに医師の診察を受けるとよいでしょう。
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