概要
鎮痛薬とは、痛みを取ることを目的とした治療薬のことです。作用機序や目的とする痛みの種類によってさまざまな種類があり、代表的なものにはアセトアミノフェン、NSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド系抗炎症薬)、オピオイドなどがあります。
鎮痛薬が使われる場面は幅広く、頭痛、腰痛、関節の痛み、歯痛といった日常的に経験することの多い痛みから、手術時や手術後の強い痛み、がん性疼痛と呼ばれるがんによる痛みまでさまざまです。
鎮痛薬は種類によって痛みを取り除く効果と副作用の種類や現れ方が異なります。比較的安全性の高いものはドラッグストアなどで市販薬として手に入れることができます。
目的・効果
鎮痛薬は痛みを取り除いたり、和らげたりするために用いられる薬です。
痛みには3つの要素として、侵害受容性と神経障害性、痛覚変調性があり、主に鎮痛薬が効果を示すのは損傷部位の炎症反応によって引き起こされる侵害受容性の痛みに対してです。
侵害受容性疼痛は一般的に急性痛といわれる痛みのほとんどが該当し、鎮痛薬のアセトアミノフェンや抗炎症薬のNSAIDsなどが効きやすい痛みです。
神経障害性疼痛は、痛みを伝える神経の損傷や病気が原因で発生すると考えられている神経の痛みです。侵害受容性の要素に有効なタイプの鎮痛薬では効果がみられないことが多く、抗うつ薬、抗けいれん薬などが用いられます。また、それでも効果が得られない場合にはオピオイドの使用が検討されます。
なお痛覚変調性疼痛は、皮膚や筋肉などのけがや神経・脳に損傷がないにも関わらず痛みが生じている状態です。ストレスや不安など心理社会的な要因が大きく関係していると考えられており、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に痛覚変調性疼痛が加わることで痛みが強くなりやすいといわれています。
種類
鎮痛薬には、大きく分けてオピオイド性鎮痛薬と非オピオイド性鎮痛薬があり、非オピオイド性鎮痛薬にはアセトアミノフェンとNSAIDsがあります。
アセトアミノフェン
鎮痛薬の中でも炎症を抑える作用は弱いものの、一般的な使用では副作用が起こりにくく安全性の高い薬です。詳しい鎮痛作用の機序はまだ分かっていません。
NSAIDs
NSAIDsは非ステロイド性抗炎症薬の略称であり、シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる物質を阻害し、鎮痛効果、抗炎症効果をもたらします。具体的な医薬品名としてはアスピリン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、メフェナム酸、セレコキシブなどがあります。
オピオイド
脳や脊髄などに存在し、痛みの伝達に関わるオピオイド受容体に作用する薬のグループです。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、トラマドールなどがあります。強い鎮痛作用があり、手術時の痛みやがんによる痛みのように、NSAIDsなどのほかの鎮痛薬では効果が不十分な侵害受容性の痛みに対して用いられます。
その他
そのほか、痛みの治療に用いられる薬剤として抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、抗不安薬、ステロイドなどがあります。
これらの薬は本来別の目的で使用される薬ですが、鎮痛効果を示す場合があることから鎮痛補助薬として用いられることがあります。
リスク
鎮痛薬の使用時には、何らかの副作用が現れることがあります。鎮痛薬の副作用は薬の種類によって異なり、代表的な鎮痛薬の副作用には以下があります。
アセトアミノフェンの副作用
鎮痛薬の中では副作用の少ない薬ですが、まれにアレルギー症状や過敏症状、肝機能障害などが起こる可能性があります。
また、過剰量の使用で重篤な肝障害が現れることがあります。特に、日常的にアルコールを摂取する人ではそのリスクが高まるとされています。
NSAIDsの副作用
もっとも代表的な副作用の1つが消化管障害です。ほかに、腎機能障害、肝機能障害、血小板・心血管系障害、アスピリン不耐(過敏)症などがあります。
副作用の現れやすさは、使用するNSAIDsの種類と使用する患者さんの特性によって異なります。
オピオイドの副作用
オピオイドの副作用には便秘、吐き気、嘔吐、かゆみ、眠気、尿が出にくくなる、呼吸抑制などがあります。頻度が高いものは便秘と眠気、吐き気で、手術時の鎮痛薬としてオピオイドを使用したときはかゆみが起こりやすくなるといわれています。
適応
鎮痛薬の適応は薬の種類によって異なります。また、同じ成分であっても剤型の違い(内服薬か注射薬かなど)によって適応が異なることもあります。
よく用いられる経口薬のNSAIDs(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)やアセトアミノフェンでは、頭痛、腰痛、筋肉痛、打撲痛、月経痛、歯痛、手術や歯科治療後の痛みなど幅広い痛みに効果が期待できます。また、これらは病院で処方されるものと同じ成分の市販薬も販売されています。ただし、慢性の痛み(3か月以上続く痛み)に自己判断で連用するのは副作用などの面から好ましくありません。専門の医師の診察を受けることをおすすめします。
オピオイドは手術時や手術後の痛み、外傷による痛みなどの強い痛みに対して用いられます。また、がんによる痛み(がん性疼痛)のコントロールでは中心的な薬です。オピオイドは医師の処方によってのみ使用できる薬で、市販薬で手に入れられるものはありません。
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