概要
5p欠失症候群(5pモノソミー、5p-症候群)とは、5番染色体の一部分が失われることを原因として発症する病気です。数多くみられる症状のうち、猫が鳴くような甲高い声で泣くことが特徴の一つであり、「猫鳴き症候群」と呼ばれることもあります。
特徴的な泣き声以外にも成長発達の障害や筋緊張の低下などさまざまな症状が現れますが、生じる症状は人によってさまざまです。一つの診療科のみで対応することが難しい病気であり、数多くの専門家がチーム体制で診療にあたることが必要といえます。
原因
ヒトの遺伝子情報は、染色体と呼ばれるものの中に含まれています。染色体は、1番から22番までの番号が付いた常染色体と、性別を決定する性染色体があります。
5p欠失症候群は、常染色体の中でも5番目の染色体の一部が失われることを原因として発症します。失われる領域には数多くの遺伝子が存在していますが、なかでもCTNND2と呼ばれる遺伝子が、本疾患における知的障害と深く関係していると考えられています。
ただし、実際に失われる範囲は個々人によって異なるため、同じ疾患であっても症状の出方は異なります。基本的には遺伝性の疾患ではなく、突然変異が生じることから発症します。しかし、一部においては、両親いずれかが病気の素因を有していることも知られています。
症状
胎児期の成長がよくないことが多く、低出生体重児として産まれることが多いです。身体発達の遅れは出生後も続くことがあり、また新生児期から乳児期において筋緊張低下の症状がみられたり頭の小ささが目立ったりします。
特徴の一つとして、猫のような甲高い泣き声が挙げられます。出生後早い段階から泣き声の特徴は明らかであり、年齢を重ねるにつれて徐々にわかりにくくなります。
本疾患では目が離れている、耳の位置が低い、顎が小さい、顔が丸いなどの顔貌の特徴がみられることもあります。顔の形を含めた特徴は、年齢と共に変化します。
そのほかにも、精神発達面の遅れを見ることもまれではありません。運動機能の遅れから、首の座り、おすわり、独り歩きも遅れる傾向にあります。手先の器用さ、言語発達などに障害を受けることもあります。
また、食べることに関しても障害がみられることがあり、上手に哺乳ができなかったり、誤嚥を繰り返すことから肺炎を起こしたりすることもあります。
耳の聞こえや筋骨格系の異常、心疾患(動脈管開存症など)を合併したりすることもあります。そのほかにも、便秘や腎機能障害、停留精巣、尿道下裂、近視、乱視など、数多くの症状・病気を抱えることがありますが、どのような症状が出現するかはさまざまです。
検査・診断
5p欠失症候群は、特徴的な泣き声、小頭症、成長障害を認める場合に病気が疑われます。染色体の異常を確認することが確定診断になるため、血液を用いてFISH法と呼ばれる特殊な検査を行います。
そのほか、個人に応じて異なった症状が出現するため、症状に合わせた検査を行います。たとえば、心疾患に対しては心エコーや心電図、胸部エックス線撮影などが検討されます。
治療
5p欠失症候群は、生じてくる症状に合わせた治療が行われます。生後早期であれば哺乳障害が問題になることも少なくないため、経管栄養が行われます。
また、身体的な疾患としてけいれんや心疾患、泌尿器疾患、眼科系疾患などが併発することがあるため、内服薬、手術など適宜治療方法を決定します。
5p欠失症候群は、運動面の発達の遅れや精神発達遅滞を示すこともあります。そのため、発達段階にあわせたリハビリテーションも検討されます。
身体的な障害はもちろん、さまざまな側面を考慮したうえでのサポート体制を敷くことがとても重要な病気です。
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