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Q熱

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概要

Q熱とは、「Coxiella burnetii」と呼ばれる細菌に感染することで引き起こされる病気の一種です。Q熱を発症するとインフルエンザに類似した症状が出ることもあり、ときに命にかかわる状態となります。

感染様式がとても特徴的な病気であり、病原体に感染した動物は症状がない(不顕性感染)ことが多いですが、病原体が尿、糞、乳汁などに排泄され、環境を汚染します。ヒトは主にこの汚染された環境中の粉塵やエアロゾールを吸入して、感染します。ヒツジやウシの未殺菌の乳製品・生肉などを摂食し感染することもありますが、まれです。ヒツジやウシなどを介して人が病気を発症する「人畜共通感染症」のひとつです。全世界どこでもみられる病気ですが、動物に接触する機会が多いほうがより発症リスクが高いです。一方で、ヒトからヒトへの感染はほとんどおこりません。

日本においては、法律上4類感染症に分類されており、全数把握対象疾患(患者を診断した医師から保健所への届け出が義務づけられている感染症)です。これにより感染動向をみると、2002年には50件弱とやや多い報告例がありましたが、それ以後は毎年0件から9件までの報告例が続いています(2015年までの報告)。ペットからの感染を起こすこともありますが、実際にどこから感染が成立したのか特定できない場合も多いです。

原因

Q熱の原因は、「Coxiella burnetii」と呼ばれる細菌に感染することです。「Coxiella burnetii」は「リケッチア」という細菌のグループに分類されており、自身が増えるためには動物の細胞内に感染する必要があるという特徴があります。動物の細胞内でのみ増殖できる偏性細胞内寄生細菌で、動物の株化細胞を用いて分離・培養させますが、人工培地での培養には成功していません。

その一方、環境中においては、増殖しないまでも安定な形でしばらくの間(数か月間)生存することが可能です。そのため、環境中が「Coxiella burnetii」で汚染されていると、ちりやホコリなどと混じり空気中に漂い、それを呼吸と共に体内に取り込むことから感染します。ひとつの細菌を摂取するのみで感染が成立するため、生物兵器としての使用も懸念されている病原体です。

「Coxiella burnetii」は、ウシやヒツジ、猫などの動物にも感染することが知られています。特に胎盤、羊水中に多く検出されることもあり、たとえば家畜やペットを飼っている環境では、出産などを契機に環境中がより病原体で汚染される可能性があります。さらに牛乳中にも病原体は分泌されており、事実消毒が不十分な牛乳を摂取することから感染した事例を多く認めていました。そのため、日本においては2002年から牛乳の消毒方法が変更されており、以降牛乳を介しての感染は報告されていません。

症状

Q熱の症状は、大きく急性期と慢性期に分けることができます。「Coxiella burnetii」に感染した後、およそ半数の方に症状が出現するといわれています。

急性期においては、「Coxiella burnetii」に感染した後、約2週間程度の潜伏期間を経て症状が出現します。認められる症状はインフルエンザによるものと似ており、発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、呼吸器症状などです。こうした症状は1、2 週間ほどの経過で改善します。

なかには肺炎や胸膜炎、肝炎などを合併症として発症することもあります。心内膜炎を主徴とする慢性型に移行することがあり、この状態になると、心臓の弁が破壊されて心臓の機能に異常を来し、死に至ることがあります。慢性型のQ熱を発症するまでの期間はまちまちであり、なかには数十年経過してから発症することもあります。

検査・診断

Q熱の診断の基本は、病原体に対する抗体を血液検査で検出することです。また、急性期の血液からPCR法と呼ばれる方法を用いて病原体に特徴的な遺伝子を検出することもあります。
 

治療

テトラサイクリン系の抗菌薬の使用が第一選択です。その他、ニューキノロン系も有効です。β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシドは無効です。発症後3日以内に内服するとより効果が高いともいわれており、より早期に治療を行うことが大切です。

Q熱の急性期の予後そのものは決して悪いものではなく、実際には抗生物質を内服しなくても自然に治る方も多いです。しかし、のちに発症しうる慢性型のQ熱の治療が困難であることも考慮すると、診断がされた場合には治療をおこなうことが推奨されます。

予防のためには病原体に接触しないような努力が有効です。病原体は、動物にも感染することがあり、そこから人へ感染します。病原体は羊水や胎盤中に特に多いことから、動物が出産した場合には感染リスクが高まるため、より取り扱いに注意することが必要です。