しんないまくえん

心内膜炎

最終更新日:
2023年09月28日
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2023/09/28
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2023/09/13
更新しました
2017/04/25
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概要

心内膜炎とは、一般的に心内膜*や心臓弁**に起こる炎症のことを指します。

何らかの原因によって、心内膜や心臓弁に細菌が付着して細菌の塊(疣贅(ゆうぜい)もしくは疣腫(ゆうしゅ)と呼ばれる)ができたり、傷ついた心臓弁の表面に細菌を含まない線維性の血栓(無菌性疣贅または無菌性疣腫と呼ばれる)が形成されたりすることで、深刻な病状を引き起こします。

心内膜炎のうち、病原菌に感染して起こる感染症を感染性心内膜炎、感染はしていないが発生するものを非感染性心内膜炎といいます。日本における感染性心内膜炎の発生頻度は年間10万人に3~7人程度とされ、男性に多い傾向があります。

命に関わる病気であり、無治療だと発症から死亡まで平均1.5~3か月といわれています。非感染性心内膜炎も同様に予後は不良ですが、これは原因となる基礎疾患によるところが大きいと考えられています。

*心内膜:心臓の内側を覆っている組織

**心臓弁:逆流防止弁の役割を担う組織。心房と心室、心室と大動脈、心室と肺動脈の仕切りをしている弁膜で、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁の4つがある

原因

感染性心内膜炎の原因

感染性心内膜炎の原因となる病原体としては黄色ブドウ球菌、腸球菌、溶血性連鎖球菌が大部分を占め、そのほかウイルスや真菌などが原因になることもあります。

このような病原体は血液に乗って心臓に到達しますが、病原体が血液に侵入する原因でもっとも多いとされるのが虫歯です。口の中には常に多くの菌が存在しているため、抜歯などの出血を伴う歯科治療の際や、虫歯や歯周病を放置することで菌が血液の中に侵入するリスクが生じます。

口の中だけでなく、上下部消化管内視鏡での検査や処置、手術などの際に軟部組織(筋肉、腱、脂肪、血管、リンパ管、関節、神経など)や消化器などから病原体が入り込むこともあります。

なお、ファロー四徴症や心室中隔欠損の人、動脈管開存症などの先天的な心臓の病気がある人では、シャント血流などの加速血流により組織に損傷がみられることがあり、損傷部位に細菌が付着しやすいことから特に発症のリスクが高まるため、より注意が必要です。同様の理由により、僧帽弁閉鎖不全症などの弁膜症の人も発症するリスクが高いといわれています。

また、心臓病の手術歴があり心臓や血管に人工弁・人工血管などが入っている人もまれに発症する場合があります。

非感染性心内膜炎の原因

非感染性心内膜炎は、リウマチ熱自己免疫疾患などにより心臓弁が損傷を受けた結果、心臓弁の表面に細菌を含まない線維性血栓(無菌性疣贅もしくは無菌性疣腫と呼ばれる)が作られることで生じます。また、心臓カテーテル治療などにより心臓弁に損傷が生じ、発症に至ることもあります。

非感染性心内膜炎は細菌による感染ではないものの、場合によっては感染性心内膜炎につながることもあるため注意が必要です。

症状

感染性心内膜炎では、典型的には熱や全身倦怠感、食欲低下、体重減少などが起こり、心臓の弁が壊れると心不全症状***がみられるようになります。そのほか、悪寒、関節痛、顔が青白くなる、痛みを伴う皮下結節(Osler結節:皮膚の下にできるしこり)、眼底に出血斑を伴うRoth斑、混乱などが起こることもあります。

また、菌の塊の一部が剥がれて血管に詰まってしまうことがあります。これを塞栓症といい、脳の血管に詰まると脳梗塞(のうこうそく)などの重篤な病気を合併します。特に脳や肺、腎臓、脾臓(ひぞう)の血管に詰まることが多いといわれています。

さらに、塞栓が生じた部位によってはがたまったり、臓器の損傷が起こったりと、さまざまな病気を合併することがあります。

このような症状は、急激に起こる場合もあれば(急性感染性心内膜炎)、少しずつ進行する場合もあります(亜急性感染性心内膜炎)。

一方で非感染性心内膜炎においては、塞栓が起こったときに初めて症状が現れます。

***心不全症状:ぜーぜーと呼吸するような症状をきたす心臓喘息・息切れ・呼吸困難・足のむくみなど

検査・診断

心臓超音波検査で心臓弁に疣贅が認められると、心内膜炎と診断することができます。

心臓超音波検査では、一般的に経胸壁心臓超音波検査(体の外側から胸に超音波プローブを当てて行う方法)が行われます。経胸壁心臓超音波検査で得られる情報が乏しい場合には、経食道心臓超音波検査(口から超音波プローブを挿入して体の内側から行う方法)が行われます。

感染の有無については血液培養検査を実施し、採取した血液を培養して細菌を検出します。血液培養検査は、一度の検査では同定ができないこともあるため、複数箇所から複数回行うことが一般的です。培養検査でも細菌を検出できない場合には、非感染性心内膜炎の可能性を疑います。特定の原因物質を調べるための血液検査を行うこともあります。

治療

感染性心内膜炎で原因菌が判明している場合には、その菌に対して有効な抗生物質を用いて治療を行います。

抗生物質の効果が得られない場合や、すでに心臓の弁が破壊されており心不全の兆候がみられる場合には手術を実施することもあります。手術では壊れている弁の修復・置換が行われます。

また、合併症として動脈瘤(どうみゃくりゅう)を引き起こすことがあり、感染性心内膜炎と診断された場合には定期的な検査を行うことが大切です。動脈瘤の発見に至った場合には抗生物質を用いることで改善を試みますが、破裂に至った場合には早急に手術を行う必要があります。

非感染性心内膜炎に対しては、抗凝固薬を投与して血栓の形成を防ぐとともに、発症のもととなる基礎疾患に対する治療を行います。

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