消化管がんに対する内視鏡治療の技術を磨き続け、よりよい医療を提供したい

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消化管がんに対する内視鏡治療の技術を磨き続け、よりよい医療を提供したい

消化器内科医として、内視鏡の技術向上や若手医師の指導に力を注ぐ平澤欣吾先生のストーリー

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内視鏡部 准教授
平澤 欣吾 先生

内視鏡を専門とする消化器内科医の道へ

私が医師を志したのは、内科の医師である父の影響が大きかったのだろうと思います。父は、私が物心つくころには結核で闘病生活を送っていたので、実際に働いている姿を見ることはほとんどありませんでした。しかし、小さなころから父の話を聞いて育ち、結核と闘う姿を傍で見てきたからか、私も自然と医師になることを志していました。そして、高校卒業後、浜松医科大学医学部に進学しました。

研修医時代は、父の跡を継ぐのだろうと思いながら、内科や消化器内科など、複数の内科系診療科を回りました。そのなかで、「自分は手先が器用だから、外科手術のほうがそれを活かせるのではないか」と考えたこともありました。しかし、最終的には、細やかな手技が求められる内視鏡検査に取り組もうと思い、消化器内科を選びました。内視鏡検査では、患者さんの呼吸に合わせて内視鏡を挿入する技術や、空気を送り込みながら臓器の中を隅々まで観察する操作性が求められるからです。その後、消化器内科の分野では、ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)と呼ばれる内視鏡を用いた手術が登場したことで、手先の器用さをさらに活かすことができています。

病理を学んだ経験が、消化器内科医である私の基礎となった

2004年、横浜市立大学附属市民総合医療センターの消化器病センターに赴任しました。その後、2006年から1年間、国立がん研究センター中央病院で、病気の原因や進行度について診断を行う病理という分野を学ぶ機会を得ました。

消化器内科医として、日々の診療を行うなかで、胃がんや大腸がんなどの消化管がんの最終的な診断(確定診断)をより正確に行うためには、病理についての知識が必要だと考えたからです。そんなとき、国立がん研究センター中央病院には、内視鏡を専門とする消化器内科医向けに病理を学ぶシステムがすでに構築されていると知り、当時のがんセンターにいらした内視鏡部長経由で働かせてもらうことにしたのです。

国立がん研究センター中央病院では、内視鏡検査から内視鏡手術、病理診断までの内容を、全て内視鏡医が共有することになっていました。おかげで、自分が内視鏡治療で切除した病変が、どのように病理検査され、消化管がんの確定診断に至るのか、という一連の流れを学ぶことができました。このとき、治療方針を決めるために欠かせない病理を学んだ経験が、消化器内科医として診療を行う基礎になったと感じています。

見て学ぶことができる若手医師を育て、チーム全体のレベルアップへ

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センターに勤めて15年が経ちます。今では、指導医として若手医師を育て、内視鏡部のチームを引っ張っていく立場になりました。若手医師を教育するときに大事にしているのは、1から10まで丁寧に指導し過ぎないということです。医師は、見て学ぶスキルを高めることが手術などの技術の上達につながると考えているからです。特に、内視鏡は上級医の手技を見て学びながら、自分の手技に落とし込むことが大切であると教えています。そのため、各医師が自分に合ったやり方を選びながら、手技を軌道修正していく過程が成長につながります。もちろん、その途中で間違った方向に進まないようにアドバイスをしています。

診断に関しては、医師によって治療方針の差が生じないよう注意する必要があると考えています。そのため、カンファレンスを行い、治療方針をチーム内でそろえるように指導しています。

消化器内科が関われるがんに対しては、我々がしっかりと責任を持つことが重要です。ただし、患者さんのがんの進行度に応じて、必要な場合には、消化器外科に患者さんを引き継ぐことを念頭に置いて、診療にあたるべきであるとも考えています。消化器内科の治療範囲を超えるならば、消化器外科と連携を取って患者さんをスムーズに引き継ぐという切り分けを正確に判断してほしいと、若手医師には伝えています。

これからも、指導医としてスキルを磨き続けることで、チームの若手医師たちを牽引する存在でありたいと思っています。

医師として大切にしているポリシー

私は、技術を磨くために努力し続ける医師を目指しています。たとえば、職人が細部まで仕事にこだわるように、内視鏡の技術を追及していきたいと思っています。なかでも、消化管がんの内視鏡治療であるESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)や、消化管がんの診断に欠かすことのできない画像強調内視鏡の技術の向上に力を入れています。それとともに、がんを早い段階で見つけて正確に状態を把握するための、内視鏡診断の技術も重要です。

また、メリハリのある生活を心がけているので、趣味の時間も大切にしています。学生時代にはバンド活動やスポーツに打ち込みながら勉学を両立していたので、その経験が今に活きていると思います。仕事とプライベートで気持ちをしっかりと切り替えることによって、よりよい医療の提供に邁進できるのです。

患者さんに信頼してもらえるような、よりよい医療を提供したい

どのような手術でも、リスクがあります。消化器内科における内視鏡治療の場合、出血や穿孔(臓器の壁に穴が開くこと)などが起こる可能性があります。だからこそ、治療を任せてもらうためには、まずは患者さんに信頼していただかなければならないと考えています。

私自身、家族を持ち、医師だけでなく夫や父という立場も増えました。そして、子育てをするなかで、子どもがどのような生き方を選択してもその思いを尊重してあげたいと考えるようになりました。このことから、患者さんとよりよい関係を築くためには、一人ひとりの患者さんの気持ちに寄り添うことが大切さであると、あらためて実感しています。家族の存在が、医師としての姿勢を再確認させてくれたのです。

私は、患者さんに親しみやすく感じてもらえるように、言葉を選びながらコミュニケーションをとることを心がけています。しかし、それとは別に、信頼していただけるだけの技術と、医療の質を維持することが必要だとも考えています。これからも、消化器内科医として、よりよい医療の提供を目指し、内視鏡の治療と診断、どちらの技術についても研鑽に努めてまいります。

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  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内視鏡部 准教授

    1980年より消化器外科医師としてキャリアをはじめる。消化器内視鏡の診断と治療を専門とし、なかでも、拡大内視鏡・ESDに注力。内視鏡の手技を磨き続けることに留まらず...

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