院長インタビュー

まごころを込めた医療を患者さんへ―相生山病院が考え実践する高齢者医療

まごころを込めた医療を患者さんへ―相生山病院が考え実践する高齢者医療
佐藤 貴久 先生

医療法人清水会 理事長、相生山病院 院長

佐藤 貴久 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年03月05日です。

愛知県名古屋市にある相生山病院(あいおいやまびょういん)は、24時間体制の内科系二次救急医療を担う、急性期病棟と回復期病棟、療養型病棟を有している病院です。

同院の院長を務めている佐藤貴久先生は、「まごころ」は医療の本質かつ原点であると考え、医療をつうじてまごころを患者さんに届ける病院づくりに取り組んでいます。

同院の特徴やリハビリテーション体制、高齢者医療の考え方について佐藤先生にお話を伺いました。

相王山病院 病院外観
病院外観

当院の基本理念は『「まごころ」を感じていただける温かみのある病院』です。

医療の中心は医療を求める患者さんであり、医師をはじめ医療従事者は医療を必要とする方に対して、適切な医療を提供することを求められます。

生活スタイルの変化や高齢化の進行によって医療ニーズは多様化しました。当院は、医療の主人公である患者さんに対して家族に接するときのように愛情を注ぎ、対話をつうじて患者さんの希望に最大限そった医療を提供します。病気が治った後の幸せな生活や望みを叶えるため、病気や不安を取り除き、誠心誠意対応することで、医療の本質であり原点でもある「まごころ」を感じていただけるような医療の実現に努めます。

超急性期、急性期、回復期、慢性期といった病院機能の分化と、病院機能にもとづく地域内での連携体制の構築が全国で進んでいます。

これに伴い医療の提供体制は、患者さんの診療を一病院で完結させる病院完結型医療から、病院それぞれの特性をいかす連携によって地域全体で患者さんを支える地域完結型医療へと移行しつつあります。

詳しくは『高齢者医療では自宅に返すことが大前提』『相生山病院が考える高齢者医療のあり方』でお伝えしますが、すべての高齢者の方が急性期医療を希望されるとは限らないことをふまえると、少子高齢化の進行に伴い、高度急性期医療が必要な方は減少して、高齢者医療や介護に対するニーズは増加していくだろうと考えられています。

豊明老人保健施設

豊明老人保健施設

当院では関連施設として介護老人保健施設と住宅型有料老人ホーム、当院と兄弟関係にある社会福祉法人勅使会では、特別養護老人ホーム、ケアハウス、地域密着型老人福祉施設、小規模多機能型居宅介護を有しています。これらは、いずれも回復期や慢性期に必要とされる医療や介護を提供しています。

グリーンヒルズケア相生
グリーンヒルズケア相生

複数の介護施設を運営し当院の医療と連携させることにより、高齢の患者さんの在宅復帰を実現してきました。退院後であっても、患者さんの状態や希望に応じて、それぞれの施設に移動して、医療・介護・福祉サービスを受けていただくことも可能です。

特別養護老人ホーム勅使苑
特別養護老人ホーム勅使苑

当院は、愛知県東部で急性期から介護サービスまで切れ目なく提供することを目的に設立された地域医療連携推進法人 尾三会に参加しています。この会の中で、当院は回復期および慢性期に必要な医療の提供に努めています。どの医療機関を受診された患者さんに対しても適切な医療・介護・福祉サービスを届けることにより、同じく参加する地域の医療機関とともに地域完結型医療の実現を目指しています。

リハビリテーションの様子
リハビリテーションの様子

リハビリテーションの本来の意味は、ふたたび人間らしい状態になることです。転じて今では、人間らしく・その方らしく生きること、そのために必要な心身の機能回復訓練のことなど、たくさんの意味を持つようになりました。

そのため、一言でリハビリテーションといっても、急性期は治療や入院に関連する身体機能の低下や廃用症候群による寝たきり防止、回復期では病気そのものや入院生活で低下した心身の機能回復と社会生活や在宅への復帰を見据えたトレーニング、慢性期なら身体機能の維持や廃用症候群予防といったように、患者さんによって目標と実施内容は大きく異なります。

当院の特徴は、異なる職種のスタッフがそれぞれの強みをいかしながら、患者さんの状態にあわせたリハビリテーションを提供していることです。

リハビリテ―ション室の患者さんと
リハビリテ―ション室の患者さんと

当院は、各診療科による検査や治療が必要な患者さんが入院される急性期病棟と、在宅復帰を目指す回復期病棟、病状が比較的安定している方を中心に受け入れる療養型病棟を有しています。

一つの病院のなかで性質の異なるリハビリテーションが可能なのは、医師と理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のみならず看護師や介護士など現場の各種専門職との距離が近く、良好な関係にあるからです。また医師はカルテに患者さんの病態について詳しく記載しており、当院では専門職のスタッフもカルテを読み込んで、疑問やわからないことがあれば医師に質問し、医師は患者さんの状態や注意点などについて伝え、患者さんの情報や疾病に対する知識を共有できていることが、適切かつ効果の高いリハビリにつながっています。

たとえば、大腿骨を骨折した患者さんが入院した場合、医師は患者さんの状態やリハビリテーション含め治療に対する希望をカルテに記載します。リハビリテーションを担当する専門職のスタッフは、カルテや医師との情報交換をもとに、寝たきりや筋力低下を防ぎ社会復帰とともに患者さんの将来の望みを叶えるためにどのようなリハビリテーションが必要か考え実践します。

このように、医師と専門職の間で日頃から意思疎通と連携がとれていること、患者さんの病気や状態などについて専門職のスタッフも積極的に情報収集を行った上でリハビリテーションを行っていることが、当院のリハビリテーションの特徴であるといえるでしょう。

ミーティング風景
ミーティング風景

これまで医療は、患者さんの命を救うために病気を治す、もしくは患者さんに少しでも長生きしてもらうために行われるものが主流でした。私自身、大学病院や急性期病院などでの勤務経験もあり、その時代の最高の医療を求める患者さんから寄せられる期待に応えられるよう努力を重ねてきました。

しかし、これ以上の治療を希望せず、静かに最期を迎えたい方も少なくないこと、そうした方が望む医療の提供体制は整備されていないことを知りました。言い換えれば、延命措置を含め患者さんの命を守るために行った医療が、かえってその患者さんが自分らしく人間らしくあることを妨げている可能性もあったのです。

こうした過去の経験から、高齢者医療の重要性を痛感しました。

日常風景
日常風景

高齢者医療とは、高齢者が病気にならず自宅で生活できる状態を維持することと、病気になるのを未然に防ぐために必要な医療です。病気になった場合には、年齢や状態ご本人の希望を考慮した柔軟性が求められます。また高齢者とそれ以外の年齢層の患者さんでは、必要な治療方法や服薬量のほか、自宅退院後に多職種で支える体制など、注意点が異なります。そのため高齢者医療では、病気のみでなく患者さん全体を俯瞰できる、人を診る医師が求められます。

高齢期の生活における理想と目標は、住み慣れた環境で家族や知り合いに囲まれながら自立した毎日を過ごすことだと考えています。そのためには、病気にならない・病気を早期発見早期治療できる体制のみでなく、その方が自立できるよう生活背景を考慮しながら、日常生活を支障なく送るのに必要な体力や身体機能の回復させるために必要なリハビリテーションや、介護・看護によるきめ細かい生活支援も欠かせません。

当院屋上にて撮影
当院屋上にて撮影

一人ひとりの力は小さくても、大勢が集まって協力し合えば大きな力を発揮できます。当院ならびに医療法人 清水会はこれからも、職員一人ひとりが優しさについて考え、他職種が集まって専門性をいかして連携することで、患者さんや高齢者の皆さんが元気と笑顔、そして自分らしさを取り戻し、幸せや望みを叶えるためのサポートをし続けます。

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  • 医療法人清水会 理事長、相生山病院 院長

    佐藤 貴久 先生

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