院長インタビュー

川崎北部の中核的な病院として進化を続けていく、聖マリアンナ医科大学病院

川崎北部の中核的な病院として進化を続けていく、聖マリアンナ医科大学病院
大坪 毅人 先生

聖マリアンナ医科大学病院 病院長、消化器・一般外科 教授

大坪 毅人 先生

目次
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聖マリアンナ医科大学病院は川崎北部地域の中核的な病院として急性期医療を支えつつ、さまざまな難治性疾患を対象に高品質な医療の研究や治療を行う特定機能病院としての役割も持っています。
また、災害拠点病院として突発的な事態が発生したときにも積極的に対応を行うなど、川崎北部地域に住んでいる方の心の拠りどころとなっている病院といえます。
今回は同院の多角的な活動を指揮している聖マリアンナ医科大学病院長 大坪(おおつぼ) 毅人(たけひと)先生に同院の役割やビジョン、そして今後の展望についてお話を伺いました。

川崎北部医療圏に立地する聖マリアンナ医科大学病院(以下、当院)は、955床を持つ聖マリアンナ医科大学の附属病院です。1974年の開院以来、“生命の尊厳を重んじ、病める人を癒す、愛ある医療を提供する”という理念の下、良質で心の通い合う医療の提供に努めてきました。そのような当院は今、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)が第5類となったことを受け、新たなステージを目指し3つの方向性で進化を続けています。

1つ目は、約90万人が住む川崎北部2次医療圏の中核的な病院としての進化です。

当院はこれまでもこの地域のクリニックの先生方と連携し、お住まいの方に必要とされる医療の提供を行ってきました。今年はこれをより強化すべく、独自アプリ“マリアンナアプリ”を開発。これを通じて患者さん医療データや受診履歴を共有し、地域のクリニックの先生方との情報の壁を取り払うことができただけでなく、医師の専門性や強みをクリニックの先生方へ積極的に発信し、患者さんの紹介をスムーズに行えるようにしています。アプリは2024年3月現在で約5,000人の方にご利用いただくまでになりました。

病院そのものの進化も続いています。施設のリニューアルも進めており、時代のニーズに応えた新しい設備を備えた新入院棟が2022年にオープンしました。2024年度には新外来棟、新エントランス棟が完成する予定で、これにより患者さんはもっと快適に治療を受けられるようになると期待しています。

さらに当院は川崎市北部医療圏における唯一の救急救命センターとして2020年〜2022年は約6,000台前後の救急車の受け入れを行ってきましたが、現在は10,000台以上に増やせる体制の整備を進めています。

進化にあたっては新しい挑戦を続けるだけでなく、よいものは続けることを忘れないことも大事です。たとえば当院には、患者さんに寄り添い、触れ合うことで心の安らぎを提供する”勤務犬”がいます。彼らは医療の一部として患者さんから笑顔とともに評価をいただいており、当院独自の取り組みとして継続していくつもりです。

2つ目は、特定機能病院としての進化です。
当院は聖マリアンナ医科大学の附属病院としての責務を胸に、難易度の高い治療が必要な方や急性期の方の治療を行っています。

さらに、川崎北部地域の皆さまに遠隔地の東京や横浜に足を運ばずとも良質な治療を受けていただきたいとの思いから、特定集中治療室やハイブリッド手術室を始めとした新しい施設を設置。新しい医療技術や機器の導入も積極的に進めています。

また、聖マリアンナ医科大学の附属病院として、先進的な医療の研究にも取り組んでいます。現在、1,400を超える臨床研究と140以上の治験を実施しており、多くのスタッフが新しい治療方法や薬の開発に携わっています。

これらの特定機能病院としての役割のほかにも、当院は”地域がん診療連携拠点病院”、”がんゲノム医療拠点病院”、”総合周産期母子センター”などに指定されており、多くの病気治療や研究を進めています。
この地域に住まわれる方々が安心して高品質な医療を受けられるよう、我々はこれからも進化を続けていきたいと考えています。

3つ目は、災害拠点病院としての進化です。

災害拠点病院とは、”災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療専属の機関”のことです。当院はこれまで、さまざまな緊急事態に迅速に対応してきました。2019年より防災担当事務を配置し、日頃よりBCP(Business Continuity Plan)の作成等教職員の防災意識をたかめるよう取り組んできました。2019年は大型台風で多摩川の氾濫した時など災害対策本部を3回設置し、平時診療から有事診療へスムースに転換し突発的な事態に対して短期的な医療リソースの増強や迅速な対応を柔軟に行えるよう進化しています。

新型コロナウィルス感染症に対しても横浜にダイヤモンド・プリンセス号が入港しDMAT隊を派遣すると同時災害対策本部を設置いたしました。当院はこの船の乗客で患者となった方の治療や入院の受け入れを行いましたが、当初院内ではほかの病気の治療で入院中の患者への影響を懸念する声もありました。ですが、病院の理念に立ち返り、患者さんの受け入れを決断。災害対策本部を立ち上げて感染した乗客の治療、入院が必要な患者さんの受け入れを積極的に行ったのです。これにより、結果として当院は多くの患者さんの治療を行うと同時にCOVID-19に関する多くの知見を得て、その後の研究や治療に生かすことができました。現在でも当院が設置する”コロナ後遺症”外来(新型コロナウイルス感染症後外来)には他地域からも多くの患者が来院しています。

我々はこれら3つの進化を続けることで、これまで以上に川崎北部地域の皆さまの心の拠りどころといえる病院であり続けたいと願っています。

繰り返しになりますが、当院の理念は“生命の尊厳を重んじ、病める人を癒す、愛ある医療を提供する”です。そのような私たちが現在、特に注力しているのはメディカルスタッフの充実です。急性期の治療は確かに重要で、その分野での先生方の尽力には感謝してもしきれません。しかし実際には治療期間よりもその後の療養の期間のほうが長いのです。この療養期間の質が、患者さんの回復やQOL向上に大きく関わってきます。

療養の期間を有意義に過ごしていただくためには、看護師、管理栄養士、薬剤師、リハビリテーションスタッフといったメディカルスタッフの役割が非常に大きくなります。そこで我々は協働部門を設け、まずそれぞれの職種内でリーダーシップを取り、教育・研修内容を見直す。さらに縦のヒエラルキーではなく、横の連携を重視し多職種連携に繋げてゆく。患者さんのために最善を尽くすための組織を作りました。

この組織になって気付いたのは、”スタッフ自身が安心して充実した日々を過ごせる環境づくりが重要だ”ということです。私はスタッフが元気に楽しく仕事をすることで、そのポジティブなエネルギーが病院全体、そして患者さんへと伝わっていくと確信しています。これからも私たちは、患者さんが安心し、明るい気持ちで医療を受けられる病院を目指していきます。

今後も、当院の理念を胸に、地域の皆さまからの信頼をいっそう深めていくための努力を惜しまない所存です。引き続き、皆さまの健康と幸福のため、全力を尽くして参ります。

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