院長インタビュー

知命堂病院の地域での役割とは?─地域に心優しい医療の提供

知命堂病院の地域での役割とは?─地域に心優しい医療の提供
森川 政嗣 先生

医療法人 知命堂病院  病院長

森川 政嗣 先生

野村 穣一 先生

医療法人 知命堂病院 理事長

野村 穣一 先生

矢澤 正知 先生

医療法人 知命堂病院 地域医療介護連携センター長

矢澤 正知 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月12日です。

知命堂病院は新潟県上越市で一般病棟、療養病棟をもち、地域医療に貢献しています。同院の矢澤医師は、急性期から慢性期の医療提供をするためには医療機関での連携が重要だと話します。また野村理事長は、同院は地域において頼られる病院であり、最後の砦としての役割があると考えています。同院について、医療法人 知命堂病院 理事長 野村穣一先生、院長 森川政嗣先生、矢澤先生にお話を伺いました。

知命堂病院、隣接する老人保健施設くびきの(知命堂病院よりご提供)

知命堂病院は一般診療のほかに療養病床をもち、急性期医療が終わり在宅復帰に向けたリハビリテーションに取り組む患者さんや慢性期の患者さんを受け入れています。また、訪問看護ステーションや介護老人保健施設、居宅介護支援センター、地域包括支援センターを併設しており、回復期から在宅復帰、介護を提供することができます。

地域包括ケアシステムの構築が叫ばれている中で、急性期医療を提供する市内の医療機関のサポートとなる、訪問介護や訪問看護の必要性は増してきていると思います。高齢化が進み地域の患者さんも高齢者が増え、今まで以上に急性期医療から在宅医療まで地域の医療機関が密接に連携していかなくてはなりません。

当院の位置する上越市は、急性期医療を提供する公的病院が2018年7月時点で3施設あります。上越医療圏であれば糸魚川市にも1施設あり広大な医療圏を4施設でカバーしています。その4施設をサポートするかたちで当院が慢性期医療を提供しています。

知命堂病院 受付(知命堂病院よりご提供)

当院の療養病棟に入院している患者さんは病状から生活背景までさまざまです。病状でいうと、気管切開をしているために施設への入所が難しい方や寝たきりになり褥瘡(じょくそう)床ずれ)がみられる方、神経難病の患者さんなどです。そういった病状の患者さんは在宅介護や訪問看護、ご家族のサポートだけでは対応が難しくなります。

当院では1年以上入院している患者さんもおり、地域の慢性期医療を支えていくうえで重要な役割を担っていると実感しています。

※気管切開……気管にあたる首の前側を切開し、チューブまたはカニューレを挿入する気道確保の方法のひとつ

療養病棟や介護老人保健施設では長期の入院や入所をされている患者さんの口腔ケアが重要になってきます。口の中を清潔に保つことで、虫歯の予防だけでなく誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの感染症の予防にもつながります。

実際には、近隣の歯科医院と連携を取り院内で口腔ケアの講習を実施しています。介護スタッフや看護師がその講習を受けて、患者さんの口腔ケアに努めています。

リハビリカンファレンスの様子(知命堂病院よりご提供)

当院の薬剤師は、入院患者さんへの回診の際、週に1回医師に付き添っています。入院患者さんへの薬の処方せんを出す目的もありますが、薬剤師自身が患者さんの状態を確認し、適切な薬剤の処方、切り替えを行う目的もあります。そのため、医師と一緒にカルテを確認することもあります。

外来の患者さんにはおくすり手帳を提出してもらい、過去にどんな薬を処方されたことがあるのか、現在はどのような薬を服薬しているのかをチェックします。入院患者さんの場合はおくすり手帳をお預かりし、処方した薬を記録しています。

療養病棟や外来では、高齢の患者さんが増えています。高齢の患者さんは、いくつもの病気を抱えていることが多く、高血圧糖尿病などさまざまな種類の薬を服薬している方も珍しくありません。そのため、おくすり手帳で患者さんの服薬を確認することは医療を提供するうえでとても重要です。基本的なことですが、医師と薬剤師とで役割分担、連携してこそ、患者さんが安心できる医療が提供できると考えています。

おくすり手帳(知命堂病院よりご提供)

当院では、検査スタッフと薬剤師が連携し、患者さんのおくすり手帳に外来で実施した検査結果を記録しています。通常、検査や診断の結果は別紙でもらうことが多いと思います。しかし、書類が複数枚になると紛失の危険性が増し、いざ別の医療機関で検査結果の提示を求められた場合に、再発行が必要になることも少なくありません。病院、患者さん双方にとってよい方法を考えた結果、おくすり手帳を用いることになりました。

また、検査スタッフは入院患者さんの検査に関しても医師と連携しています。長期の入院患者さんはだいたい1年に1回検査をしていますが、医師は多忙ということもあり、日付を間違えてしまうこともあります。そんなときに検査スタッフが率先して声をかけて、「この患者さんはそろそろ検査をする時期です」という風に声をかけ、入院患者さんの検査を適切な時期に実施することができます。

左から矢澤先生、野村理事長、森川院長

地域包括ケアシステムの構築や慢性期医療の充実など行政が抱える問題は多くあり、地域の医療機関はそれに柔軟に対応し、地域医療を提供していかなくてはなりません。そのためには地域の医療機関が連携し、急性期から慢性期、または施設の入所まで一連の医療からサービスまでの提供に尽力していかなくてはならないと考えています。当院では、地域医療介護連携センターを設置し、地域連携に尽力しています。ここからは、日々の診療を行いながら、センター長として地域連携に尽力している矢澤医師、野村理事長にお話ししていただきます。

地域と連携し、特に当院では急性期治療後の患者さんのリハビリテーションや慢性期の患者さんの治療を行なっています。以前までは上越市内の医療機関から患者さんをご紹介いただいていたのですが、最近では市外の医療機関から患者さんの受け入れをすることが増えてきました。

それは新潟県内に慢性期医療を提供する医療機関が少ないことに起因するのではないかと考えています。しかし、地域包括ケアシステムの中では急性期病棟の縮小や、慢性期や訪問医療の充実が叫ばれています。医療機関の連携は地域で実施している病院長会議で森川院長が尽力してくれています。

今後は当院のようなケアミックス病院が増えていくことが理想ですが、まだ数が多くないのが現状です。まずは当院が新潟県を牽引できるよう、できることをしっかりと地域に提供していきたいと強く思います。

森川院長、矢澤センター長のお話にあるように、ケアミックス病院として地域の慢性期医療や介護を牽引していかなくてはならないと思っています。地域の高齢化にともない、患者さんの中には独居や介護するご家族も高齢になっているなどさまざまな問題があります。そのような地域情勢の中で患者さんの頼りになる医療機関であり続けられるよう、今後も取り組んでまいります。

当院は、地域の要望に何でも応えていける病院を目指しています。急性期の治療後のリハビリテーション、施設への入所や在宅での介護が難しい患者さんへの治療など、現在の上越市に求められる後方支援を関連施設と密接な連携を取って提供していきます。地域で急性期医療を提供する医療機関のサポート的な立場で地域を支えていきたいと思います。

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