1997年に現在の帯広市西4条南15丁目に新築移転をした帯広第一病院は、消化器内科疾患に特化した病院です。1928年に前身となる志田病院が開設され、1975年に現在の帯広第一病院へと名称が変更されました。病床数247床、診療科17科を有する帯広第一病院は、帯広市内で唯一「消化器内視鏡センター」を設置しているほか、高齢化が進む帯広地域を多方面で支える病院としても日々進化を続けています。今回は、在宅支援や緩和ケアにも力を入れる帯広第一病院院長の山並秀章先生にお話を伺いました。
帯広第一病院の母体である公益財団法人北海道医療団では、十勝・帯広地域内で3つの病院(帯広第一病院、帯広西病院、音更病院)を運営しています。そのほか、介護老人保健施設事業や居宅・訪問介護事業などをはじめとして、さまざまな社会福祉支援事業を行っています。同法人が掲げる「地域から求められる医療・介護・福祉サービスを提供する」の理念のもと、どのような患者さんでも受け入れられるように無料および低額診療を行っている点は、帯広第一病院の特徴でもあります。また、地域医療連携室の人員の豊かさや、年々レベルが高まっている消化器内科に加えて、2018年には緩和ケア病棟を新設するなど、高齢化が進む十勝・帯広地域内で包括的な支援のために努力を怠らないところも帯広第一病院の魅力です。
帯広第一病院には長い歴史があります。開院当初の志田医院は小児科を中心としていました。その後、東北大学病院の消化器内科より3名の医師を集めたことで、今日の診療体制の原型がつくられました。ほぼ同時期に帯広第一病院と改称しており、この時以来、救急医療に注力しています。現在は、時代の流れに応じながら幅広い診療科の医療レベル向上を図っています。
消化器内科を主軸として発展してきた帯広第一病院は、消化器疾患に関連する医療において十勝管内でもトップレベルを誇っています。消化器内科では、科内でのカンファレンスはもちろんのこと、外科との合同カンファレンスも積極的に開催しています。また、「消化器内視鏡治療センター」は、十勝管内唯一の消化器内視鏡治療に特化している施設です。消化器内視鏡治療センターには、消化器内視鏡専門医の常勤医が5名在籍しており、胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓など、あらゆる消化器疾患の患者さんが来院されます。患者さんは年々増加傾向にあり、多数の症例を診ています。内視鏡検査については年間8,000件を超えています。地域で唯一の、「消化器内視鏡センター」としての役割を担っている同センターでは、最新の内視鏡検査ユニットやスコープの新規導入および増設もしており、高度な医療レベルの提供に努めています。
以前より非常勤で肝臓専門外来を行っていた中村公英先生が2017年4月より常勤となったことで、より診療が充実しました。中村先生は、旭川医科大学で肝臓に関する研究を長期にわたり続けてこられた後、十勝管内にある大学で教授を勤められていました。同外来では、ウイルス性肝炎(とくに、C型肝炎、B型肝炎)をはじめとして、自己免疫性肝疾患、薬剤性肝炎、脂肪肝など多種多様な肝臓の病気の治療を行っています。ウイルス性肝炎に対しては、直接作用型ウイルス剤やインターフェロン、核酸アナログ製剤などの最新の抗ウイルス経口薬を使用しています。最近では、肝臓全般の悩みを解決するための「無料相談電話」にも力を入れはじめています。
総合診療科では、在宅医療を数年前から開始したほか、緩和医療も提供しています。そのなかで、高齢の患者さんやそのご家族から「可能であれば住み慣れた在宅で過ごしたい、過ごしてもらいたい」という声が増えてきました。そのような声を受け、総合診療科と緩和ケア専門外来のスタッフで協力し、できる限り要望に応じられるようにしています。帯広第一病院が提供している在宅・緩和医療は自由度の高さが特色でもあります。患者さんの状況に合わせて、施設に入っていただいたり、在宅で過ごしていただいたりなどと、患者さんの要望や体調、お住いの環境を勘案して柔軟な対応を取っています。柔軟な対応を可能にしているのは、総合診療科と在宅ケアセンターの連携がしっかりと確立されているためです。総合診療科の科長である副院長の酒井俊先生が在宅ケアセンター長も兼任しており、密に情報共有をしていることも理由のひとつです。また、酒井先生は消化器疾患・内視鏡の専門医、総合内科の指導医であるほか、漢方薬の専門医でもあります。加えて、総合診療科の医師たちはさまざまなバックグラウンドを持っており、個性豊かな人材がそろっています。同科に在籍している医師は、循環器内科の専門医、耳鼻科の専門医、元精神科医など、多岐にわたる分野で活躍してきているため、幅広く患者さんを診ることができます。また、このような多種の医師が在籍していることで、若手医師や研修医にとっては学ぶ場所として最適ともいえます。さらにいえば、200床という規模の病院だからこそできる、距離の近い関係を持つことができます。幅広い知識をじっくりと身につけることができるため、若手の医療従事者にとって素晴らしい環境となっています。帯広第一病院では、医療従事者に加えて初期研修医も積極的に受け入れています。
また、消化器内科や総合診療科ばかりでなく、消化器外科出身が多数在籍しており、腹腔鏡手術、開腹手術ともに手技レベルの高い外科、麻酔科ペインクリニック専門外来を併設している麻酔科、十勝・帯広管内ではめずらしい顎の骨切り術を施術している歯科口腔外科など、どの診療科にも力を入れています。脳外科医は一人のため、手術件数は少ないですが、懇切丁寧な外来対応では患者さんの厚い信頼を得ています。
時代が求める施設づくりにも注力する帯広第一病院では、2017年4月に地域包括ケア病棟を立ち上げました。地域包括ケア病棟は、帯広第一病院で手術や内視鏡治療を終えた患者さんが回復に時間がかかってしまう場合などに備えています。病棟では充実したリハビリテーションの設備を整えており、患者さんが少しでも回復しやすい環境づくりをしています。そのため、患者さんは住み慣れた自宅や施設に安心して戻ることができます。加えて、帯広第一病院では在宅療養後方支援病院としての指定を受けており、「なるべく在宅で過ごしたい、なおかつ適切な医療を受けたい」といった方々に向け、24時間いつでも診療・入院などの緊急対応を可能にする制度を導入しています。
2018年2月には、空いている病床を改築して18床の緩和ケア病棟を開設します。十勝管内では初の試みとなります。すでに緩和ケアを目的とした患者さんをほかの病棟で受け入れていますが、今後さらなる需要を見込んでいます。心身の不調を抱えて不安な気持ちになっている患者さんと、初期の段階から最期まで寄り添える病院を目指しています。
昨今、高齢化の波にともない「地域医療連携室」が増加しています。地域医療連携室の役割は、受診予約調整、退院時の社会資源などの紹介を含めた支援、介護保険、在宅ケア、経済問題をはじめとした療養上のさまざまな悩み相談、他院からの紹介への柔軟な対応などです。帯広第一病院は、この地域医療連携室に非常に力を入れており、社会福祉士資格保持者のMSW(医療ソーシャルワーカー)を5名配置しています。さまざまな機能を持つ帯広第一病院の地域医療連携室は、他院からの紹介件数がこの数年間で常に3,000件近くにのぼっており、たくさんの方々に利用されています。
地域医療連携室では、一般的な疾患治療の予約はもちろんのこと、上下部内視鏡検査予約、CDS受診予約などにも対応しています。CDSとは、Colon Direct Systemの略で、受診と同時に大腸内視鏡検査を行うことを目的とした帯広第一病院独自のシステムです。CDS受診予約をすると、消化器内視鏡センターから患者さんのご自宅へ検査食、下剤、説明資料が送られ、患者さんは自宅にいながら検査に備えることができ、受診にともなう負担を軽減することができます。たとえば、大腸ポリープ切除を行う場合は、1泊の入院で済み、検査の翌日には退院することができます。
帯広第一病院は、200床規模の病院であるため、400床以上の一般的な大病院などに比べれば劣るところが当然あります。しかし、大病院だからこそできることがあるように、この規模の病院だからこそできていることがあると考えています。それは、「スタッフが少数精鋭・多種多様」であること、後進に対して「じっくりと密な関係を築きながら育成している」点です。また、当院は臨床研修基幹病院でもあります。研修医それぞれの希望に合わせて親身になった研修が受けられます。医学生の皆さんはぜひ、まず見学に来てください。学ぶ環境として、自信をもって勧めることができます。
引き続き、消化器内科をレベルアップさせていき、地域で1番を目指します。地域の医療関係の方々には帯広第一病院の消化器内科の強みは知られてきていますが、一般の方々にはまだまだ十分に浸透していません。それらも踏まえて、今後はより積極的に疾患に関連する講演を行っていきたいと考えています。私たちの取り組みによって、地域の方々に医療の知識をつけてもらうことや、健康寿命を延してもらい、地域の活性化につながれば幸いです。
帯広第一病院 院長
帯広第一病院 院長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
1988年東北大学医学部卒業。初期研修終了後、東北大学第一外科へ入局。その後、仙北組合総合病院(現:大曲厚生医療センター)、宮城県立がんセンターで消化器外科医として多くの症例経験を積んだ。宮城県立がんセンターではJCOG胃グループに参加し、臨床研究にも携わった。2013年に帯広第一病院へ外科部長として赴任。2015年院長に就任。
山並 秀章 先生の所属医療機関
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。