院長インタビュー

地域に必要とされる病院になるために-小樽市立病院の取り組み

地域に必要とされる病院になるために-小樽市立病院の取り組み
並木 昭義 先生

小樽市病院局 病院事業管理者・病院局長

並木 昭義 先生

この記事の最終更新は2017年12月06日です。

小樽市立病院は2014年12月に、市立小樽病院と小樽市立脳・循環器・こころの医療センターの2つの病院が合併して開院しました。病床数388床・診療科26科を構え、地域住民に救急医療と高度医療を提供しています。

同院の取り組みや今後めざす姿について、病院事業管理者である並木 昭義局長と院長である近藤 吉宏先生にお話を伺いました。

当院は、人口減少と少子高齢化が進む、小樽・後志地区の基幹病院となっています。

病床数388床のうち、80床は精神科、4床は結核病棟が有しています。専門外来や専門センターも数多く備え、地域のさまざまなニーズに応えられる体制を整えています。

当院の前身となる病院のひとつである「市立小樽病院」は、分娩や小児医療にも対応でき、多くの診療科をそろえた、歴史ある総合病院でした。そしてもうひとつの前身病院となる、「小樽市立脳・循環器・こころの医療センター」は、脳神経外科と心臓、精神科をメインに、救急医療を行っていた病院です。地域で唯一、手術ができる脳神経外科と心臓血管外科のある病院であり、多くの患者さんを受け入れていました。この2つの病院は互いにない医療機能を持っていたため、スムーズに統合に至りました。

当院のある小樽・後志(しりべし)地域は、人口そのものは少ないですが、非常に広い地域です。基幹病院としてこの地域を支えるべく、新築移転時に最新の医療機器を備えました。

今後は、全方位の疾患に対応できる総合病院として、医療の質の向上を図るべく努力しているところです。

当院が診療において柱としている分野が、「がん診療」「脳卒中」「心臓血管疾患」「認知症」の4つです。

当院は、地域がん診療病院の指定を受けています。がんのなかでも症例数の多い消化器がんに関しては、「消化器病センター」を設置し、医師や看護師、薬剤師、栄養士などの他職種のスタッフで治療する体制を整えています。

また、小樽・後志地区では唯一となるPET-CTや、放射線治療が可能なリニアックを導入しました。これにより、高精度の検査と患者さんに負担の少ない治療が可能となりました。

当院の前身病院である、小樽市立脳・循環器・こころの医療センターの専門分野であった、脳・心臓血管疾患の治療は、合併後も「脳卒中センター」と「心臓血管センター」を設立し、各診療科で連携しながら行っています。ハイブリッド手術室や3T-MRIを導入し、より高度な医療を提供しています。

また、救急搬送体制は24時間365日受け入れ、ヘリポートも常備しております。

当院は、2014年に北海道の認知症疾患医療センターとして指定を受けました。専門医師による診療を行うほか、相談員による医療相談を受けられる体制を整えています。

地域の方々へ向けた情報発信や、新しい人材を育成するための研修も、積極的に行っています。

当院が現在力を入れているのが、予防医学です。当院では、「けんしんセンター」を整備し、各種検診・健診や人間ドック、PET-CTを使った検診を行っています。

病気や治療に関する広報を行うと同時に、実際に病院で検診し、病気になる前(あるいは早期)に発見・治療するように努めています。当院の患者さんは今後、予防がメインの患者さんと重症疾患を患う患者さんへと二極化していくのではないかと考えています。

これからは、病院のなかだけで患者さんを待ち、医療を提供する時代ではありません。そのため当院でも、地域医療連携室を中心に地域の病院との連携を深め、患者さんを紹介してもらっています。

そして、地域住民のみなさまとのコミュニケーションも深めていかなければなりません。

当院で何を行っているのか、院内紙と広報誌を発行して、地域の方々に病院のことを知ってもらえるように努力しています。当院を受診したいと思ってもらえるように、サービス面も含め、さまざまな改善を行い、病院が最良の状態で患者さんをみられる体制を整えていきたいと思っております。

今後は、地域医療支援病院と、がん診療連携拠点病院の指定を受けることを、目指してまいります。

地域医療支援病院に関しては、紹介率などの条件を満たせるように努めてまいります。

がん診療に関しては現在、地域がん診療病院の指定を受けている状態です。認定当時は放射線治療医がいなかったため、連携拠点病院への認定には至りませんでしたが、現在は人員が確保されているので、認定をめざしてまいります。

これからは研修医の先生にも積極的に来ていただいて、病院を活性化させたいと考えています。そのためには、大学との連携もさらに強化する必要があると考えています。

そしてもうひとつ、当院が理想としているのが、患者さんに「この病院で診てもらえてよかった」と思ってもらえることです。

医療技術が高いのはもちろんですが、最終的に重要となるのは人間関係だと思います。病院全体にサービス精神があることが大切です。職員同士がきちんとコミュニケーションをとり、病院全体で患者さんをみていける体制を整えてまいります。

当院は、地域のみなさまの苦痛を取り払い、安心・安全な医療を提供することが使命だと考えています。そのうえで大切なことは、患者さんと医療従事者が同じ目線で、共に病気を治すという気持ちを持つことだと思っております。

地域のみなさまが少しでも気軽に当院にお越しいただけるよう、院内の講堂では健康教室や市民公開講座を行っています。ただ治療を受けるだけではなく、病気について、自分自身のことを考える機会にしていただきたいですね。

住民のみなさまには、当院をみんなで育てて行くという気持ちを持っていただければ、ありがたいです。地域の医療機関や介護施設と連携を図り、民間企業の方々ともコミュニケーションをとりながら、理想の病院を実現できるよう、努めていきたいと思っています。

若手の医師の方々には、1人でも多くの患者に接して、成長してほしいですね。目標とする医師のよいところをどんどん吸収して、看護師や薬剤師など他職種の方々と協働するということを、しっかり学んでいってほしいです。

当院では救急医療をはじめとした、幅広い分野の医療に携われますし、各診療科の先生とも気軽にコミュニケーションが取れます。そういった環境づくりを徹底し、教育体制を整えていくことに今後も力を入れていきたいです。

看護師の資格取得に関しても、積極的に支援したいと思っています。認定看護師や専門看護師など、本人の要望に合わせて取得に挑戦してもらっています。そのような資格を持った看護師たちを増やし、医療・看護の質をさらに向上させていきたいです。

この病院がそういった活動を継続していくには、経営がきちんとしていることが前提です。働いている職員も、そういった意識を持つことが必要です。

そのうえで、医師には質の高い医療を実践してもらい、まわりの職員はそれぞれの先生が医療に専念できるようにサポートする、チーム医療を進めることが大切だと考えています。

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