院長インタビュー

受診してよかったと思ってもらえる病院に−脊椎脊髄分野に特化して一貫した治療を提供する総合せき損センター

受診してよかったと思ってもらえる病院に−脊椎脊髄分野に特化して一貫した治療を提供する総合せき損センター
前田 健 先生

独立行政法人 労働者健康福祉機構 総合せき損センター 院長

前田 健 先生

目次
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福岡県飯塚市にある総合せき損センターは、全国各地にある労災病院の運営主体でもある独立行政法人労働者健康安全機構が運営する病院です。全国でも数少ない脊髄損傷の専門病院として同センターがどのような医療を提供しているのか、センター長の前田(まえだ) (たけし)先生に伺いました。

総合せき損センターの外観
総合せき損センターの外観(総合せき損センターご提供)

当センターの名前にある“せき損”とは脊髄損傷の略で、労働災害や交通事故で脊髄を損傷した方を専門的に治療する全150床の病院です。設立は1979年で、以来25,000件以上の脊椎・脊髄疾患の外科手術を行ってきました。

設立当時、日本の脊髄損傷医療はとくにリハビリテーションや復帰の点で欧米に対して遅れていました。当センターは世界の脊髄損傷医療をリードするロンドンのストーク・マンデヴィル病院をモデルに、①臨床(外傷、一般疾患)、②研究(学会での発表等)、③教育、研修(医師や看護師向けのセミナー等)、④患者さんの退院後のケア(自立支援)を行っており、患者さんの急性期~社会復帰までのサポートとともに研究、教育面でも日本の脊髄損傷医療を牽引する役目を担っています。

当センターは開設以来、脊髄損傷のみならず腰部脊柱管狭窄症椎間板ヘルニア側弯症などの脊柱変形、脊椎・脊髄腫瘍など、ほとんど全ての脊椎・脊髄疾患にも対応してきました。日本有数の脊椎手術症例数を誇っており、九州における総合的な脊椎脊髄疾患治療のメッカといってよいでしょう。診療には高度な脊椎・脊髄外科のトレーニングを受けた10名以上の整形外科専門医(日本整形外科学会認定)が対応します。また、脊髄損傷に伴う神経因性膀胱の治療も高い専門性をもって行っており、他にも前立腺肥大などの一般的な泌尿器科の病気の診察も実施しています。当センターには女性泌尿器科外来もあり、膀胱炎尿失禁など女性に多い病気での診察も受けやすくなっています。

治療においても、年々新しい術式や医療機器が登場し、低侵襲(体に負担が少ない)な治療が増えています。また、整形外科医だけでなく泌尿器科医や内科医、麻酔医、看護師、理学療法士、作業療法士といった多職種によるチームが手術、リハビリテーション、その先のご自宅、職場、学校等への復帰までを担当し、患者さんやご家族と連携しながら治療を進めています。

当センターでは低侵襲な治療のため、先進的な医療機器を導入しています。その1つがO-armという医療機器で、椎体(椎骨の円柱状の部分)を高精細な2次元、3次元画像で手術中にリアルタイムで表示することにより、これまでよりも正確に、安全に手術を行うことができる手術支援医療機器です。

これにより、手術時の医師の負担が大きく軽減され、誤差が少ない画像をもとに精度の高い手術が行えることで低侵襲性も大きく向上しました。

導入にあたっては福岡市の会社経営者である中本博雄氏から多額の寄付をいただきました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。また、当センターへのO-armの導入は福岡県初の事例でしたが、その有用性からさらにもう1台増え、現在は2台のO-armが活躍しています。

O-arm
導入されたO-arm(総合せき損センターご提供)

当センターには“医用工学研究室”という部署があり、特に麻痺のある患者さんのニーズに応えてリハビリテーション用具などの開発を行っています。麻痺などがある手でも市販の歯ブラシを使って歯磨きをしたいという要望に合わせ、歯ブラシを手に巻いたベルトに固定する用具“ベルト付き・ハンドライフ(歯磨き用)”や、車いすとベッド間の移乗用ボードなどはリハビリテーションの現場からの要望がもっとも多かった人気商品です。

医用工学研究室が開発した商品、製品はこちらでご覧いただけます。
https://sekisonh.johas.go.jp/file/engineering/atdd2022.pdf

当センターの理念は「受診してよかった。と思われる病院でありたい」で、この理念のもと患者さんに優しい病院を目指しています。

おかげさまで、毎年実施している患者満足度調査では全国的に見ても非常に高い満足度をいただいています。これに満足することなく、今後も地域の医療ニーズに応え、患者さんに頼っていただける病院へ向け努力をしていきたいと思っています。

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    前田 健 先生

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