浜松医療センターは、1973年に浜松市医師会中央病院を発展させる形で設立された病院です。浜松市内を中心に、近隣の地域を支える中核病院となっています。
病床数606床という規模で近隣の医療機関と密に連携を取りながら、急性期医療を中心とした医療を提供しています。
浜松医療センターでは、現在どのような取り組みが行われているのでしょうか。院長である海野 直樹先生にお話を伺いました。
浜松医療センターは、浜松市が開設し、公益財団法人浜松市医療公社が運営する病院です。
当院が位置する静岡県西部地域は、浜松市を含めて約100万人の人口を抱えています。幅広い年代層のニーズに応えられるように34の診療科と5つのセンターを構えて、充実した医療の提供を図っています。
当院の救急車の受け入れ台数は年間 6,591台にのぼります(2017年4月~2018年3月実績)。運ばれてくる患者さんは、軽症から重症まで幅広く、病気の種類もさまざまです。救急科をはじめ、循環器科や小児科、内科、外科、産婦人科といった各診療科それぞれの担当医が連携しながら、休日夜間の当直帯を含め、いつでも患者さんを受け入れられる体制を整えています。
がん診療は、当院がもっとも注力している分野のひとつです。当院はがん診療拠点病院に指定されており多様な分野のがんを取り扱っています。
これから特に力を入れたいと考えているのが、乳がん患者さんのサポートです。患者数も増えており、罹患後の生存率も高いため、QOL(生活の質)の維持が非常に大事になります。手術や化学療法などの標準治療はもちろんですが、術後の乳房形成やリンパ浮腫の専門的な治療など美容面にも配慮した治療も含めて、全体的に患者さんを支えていければと考えております。
当院では、年間で1,052件の分娩を扱っています(2017年4月~2018年3月実績)。周産期センターとして、同じフロアに産科病棟やNICU、緊急手術室兼ハイリスク分娩室といった設備を備えており、早産や合併症を抱えた妊婦さんの管理などに幅広く対応しています。
産婦人科と同様、地域のニーズが高いのが小児科です。少子化のため子どもの数は減っていますが、一方で小児科医師の減少もあり、病院に対する小児科のニーズは高くなっているのが現状です。地域医療の中核として、当院では小児医療にも力を入れていく必要があると考えています。
当院の整形外科では下肢関節再建・人工関節センターを設け、股関節疾患や膝関節疾患の治療を行っています。医師や看護師、リハビリスタッフなどが連携して、手術からリハビリテーションまでトータルでサポートしています。
また、当院と連携している浜松医科大学医学部附属病院は、脊椎疾患に強みを持っています。互いの得意分野をいかして、補完し合いながら診療を行っています。
当院の感染症内科では、「海外渡航外来」として、旅行前の方や、海外進出企業の社員並びに家族の方に対する感染症対策や、ワクチンの接種、帰国後の発熱などに対応しています。以前から海外旅行者のための診療は行っていましたが、患者さんにわかりやすく表示するために、あらためて専門外来として設けました。
当院は、浜松医科大学と医療・教育の両面で緊密な連携をとっています。医療面では、それぞれに得意分野があるため、患者さんが両者の特性をいかした治療が受けられるような、また、教育面に関しては医師や看護師が相互に行き来して教育が受けられるような体制づくりを目指しています。
浜松医科大学医学部附属病院は約600床を有しています。当院も約600床を有する病院であるため、互いに協力すれば、約1,200床の規模となり最先端医療も進めやすくなります。専用の回線を使ったテレビ会議システムも設けており、患者さんの情報のやりとりがスムーズにできるようになっています。
また、地域の開業医の先生との連携も強く、紹介で受診される患者さんが非常に多いことが特徴です。
当院の課題は、総合診療内科の医師が不足していることです。それぞれの診療科の医師はいますが、総合診療を標榜する医師がいません。現在は、総合診療、救急医療に関しては「オール医療センター」を合言葉に、当院にいるすべての医師でカバーしています。
実際に日本で行われている総合内科の診療は、ご高齢の患者さんの全身的な治療がメインになっています。高齢になると全身のさまざまな機能が落ちてくるため、ひとつの診療科だけで診ることはできません。これからは多領域の医師が力を併せて、患者さんの全身を診る医療を行わなくてはならないと考えています。
地域に貢献するだけでなく、新しい技術を生み出して地域から世界に発信していける病院になれれば素晴らしいと思っています。医療で困っている世界中の人がこの地域を訪れるような、医療のメッカになれたらと夢見ます。
浜松はものづくりが盛んなところで、たくさんの工場があります。そういった企業と医工連携で新しい医療技術や医療機器を生み出すことが目標です。
たとえば、私たちが「こんな機器があれば」と思っても、技術に対する知識がないため実現できるかわかりません。一方でエンジニアの方々は、技術はあるけれども、医療の現場で何が必要かは実感としてはわからないのではないでしょうか。そこで、互いに連携していけば、斬新なアイデアのもと、よい技術や機器が生まれるのではないかと思っています。
日本の医療問題のひとつが、救急救命科を志す医師が少ないことです。大変な診療科であるため敬遠されることもありますが、「目の前で病で困っている人を助けたい」という思いこそが医師を目指した原点ではなかったかと思います。ぜひ救急医療を学び実践してほしいと思います。そのことは、どのような専門科に進もうとも、医師のキャリアのなかできっと役に立つことでしょう。
「安全・安心な、地域に信頼される病院」が、当院の理念です。当院はこれからも変わることなく、この理念を掲げて診療を行って参ります。浜松医療センターは市民の病院です。市民のみなさまの健康を守り、共に病と闘うために、職員一同努力してまいります。
浜松医療センター 院長、浜松医科大学 特定教授
浜松医療センター 院長、浜松医科大学 特定教授
日本外科学会 外科専門医・指導医・外科認定医日本心臓血管外科学会 心臓血管外科専門医・心臓血管外科修練指導者日本消化器外科学会 消化器外科認定医日本ステントグラフト実施基準管理委員会 腹部大動脈瘤ステントグラフト指導医・胸部大動脈瘤ステントグラフト指導医
1985年大学卒業後、一貫して外科医師として研究、臨床の両方に携わってきた。1993年からの米国留学において、国内外の幅広い視野を持つアカデミックサージャンの重要性を認識した。帰国後も、日々の臨床の中から疑問点、未解明の点に光を当てて研究を行い、それを臨床へとフィードバックしてきた。専門は血管外科。特に大動脈瘤、末梢動脈疾患、リンパ疾患についての豊富な診療経験を持つ。
海野 直樹 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。