福岡市南区にある福岡赤十字病院は、救急医療をはじめとする急性期医療を中心に地域の医療を支える中核的な病院です。がん治療、循環器疾患、腎疾患など専門性の高い領域を柱としながら、地域連携や人材育成にも注力。さらには災害医療・国際救援といった赤十字病院ならではのミッションも担い、真摯な医療を提供しています。
同院の院長を務める中房 祐司先生に、病院のこれまでの歩みや診療体制の強み、今後の展望についてお話を伺いました。
当院は、1947(昭和22)年に福岡市南区大楠の地に“福岡診療所”として開設されました。1952(昭和27)年には“福岡赤十字病院”と改称し、以来70年以上にわたり、地域医療の中核を担ってまいりました。
当初は内科、外科、産婦人科の50床の病院としてスタートしましたが、時代の変化や地域のニーズに応じて診療科を拡充し、現在では36の診療科と511床を有する総合病院へと成長しています。
また、当院は災害医療にも力を入れており、1999(平成11)年には福岡県地域災害医療センターに指定されました。国内外の災害時には、医師や看護師を含む救護班を派遣し、被災地での救援活動を行っています。
このように、当院は地域に根ざした医療機関として、急性期医療を中心に、がん診療、循環器、腎疾患などの専門的な医療を提供し、地域の皆さまの健康を支えてまいりました。今後も、地域の中核病院としての役割を果たし続けていく所存です。
がん診療は、当院が力を入れている領域の1つです。手術療法に加えて、化学療法や放射線治療まで包括的に提供する体制を整えており、患者さん一人ひとりに合わせた治療を提供できるよう心がけています。また、がんゲノム外来を開設しており、がん遺伝子パネル検査も実施しています。
当院では、2018年から低侵襲手術センターを開設しており、ロボット支援手術にも早期から取り組んできました。現在は、消化器外科の胃・大腸、呼吸器外科の肺、泌尿器科の前立腺・腎臓、そして婦人科領域まで幅広く対応しています。専用の手術室を設けており、スケジュールの優先順位も調整しながら稼働率を高めています。現在の稼働率は約8割で、今後9割を超えるようであれば、2台目の導入も検討してく方針です。手術の安全性や精度を高めると同時に、患者さんの身体的な負担を軽減する意味でも、ロボット支援手術の価値は非常に高いと感じています。
循環器内科に関しては、24時間365日体制で循環器専属の当直を配置しており、救急を含めさまざまな循環器疾患に対応しています。特に不整脈のカテーテルアブレーション治療に力を入れており、部長を務める向井 靖医師は、日本でこの治療が始まった初期から関わっていた経験豊富な人物で、当院に着任後すぐに専用の血管造影室を整備し、治療体制を整えました。
現在では12〜13名の循環器内科医が在籍し(2025年5月時点)、治療件数も年々増加しています。九州全体でも上位の実績があり、福岡市内に限らず、遠方からのご紹介もいただくことも少なくありません。
不整脈の治療はタイミングや正確さが求められる領域ですので、専門チームとして密に連携し、患者さんにとって安全かつ負担の少ない治療を提供できるよう努めています。
当院の腎臓内科は40年以上前に開設された歴史ある診療科であり、透析導入から腎移植まで腎臓病全般において福岡市内で重要な役割を担ってきました。腎移植については、1981(昭和56)年から現在まで300例以上を行っており、着実に実績を重ねています。2024年1月には、九州大学で腎移植グループのリーダーを務めていた医師が着任し、年間100例を目指す体制づくりに取り組んでいるところです。移植は限られた医療機関でしか対応できないため、佐賀・大分・長崎など、広い範囲から患者さんが来られています。
透析・移植いずれにおいても、医師だけでなく看護師や臨床工学技士など多職種が一丸となり、患者さんの生活背景に寄り添いながら、長期的な視点で支援を行っています。
当院では、医療の質だけでなく、職員間のコミュニケーションや職場環境の整備にも力を入れています。その1つが“早朝連絡会”という取り組みです。毎朝10分間、副院長が司会を務めながら医療安全、感染管理、病床運用などの情報を全体で共有しています。短時間ではありますが、病院全体の方向性を確認し合う大切な場となっています。
外部に向けた情報発信としては、地域連携Webセミナーを定期的に開催し、近隣の医師に対して当院の診療内容や最新の医療情報をお伝えしています。オンデマンドで視聴可能にすることで、多忙な医師にも参加していただきやすい環境を整えました。
また、“顔が見える広報誌”も制作しており、医師やスタッフの顔写真を大きく掲載し、視覚的にも分かりやすい構成にしています。毎年60名以上のスタッフ異動があるため、その都度更新しながら、親しみやすさを大切に発行しています。
また、音楽を通じて少しでもリラックスできる時間をつくれるよう、当院では患者さんやご家族、地域の方々などに向けた“トワイライトコンサート”を定期的に開催しています。
当院は、70年以上の時をこの地域とともに歩んできました。急性期病院としての責任を果たすと同時に、大学や地域医療機関との連携のなかで、着実に地域の中核病院としての機能を高めてきたと実感しています。
私自身、これまで大学医局での勤務を経て、今は地域医療の最前線に立ち、より身近な医療、目の前の命に向き合う医療の重要性を強く感じています。今後も、急性期・専門医療の拠点としてだけでなく、信頼される“地域の赤十字病院”として、地に足の着いた医療を提供し続けたいと思っています。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。