院長インタビュー

京都市民の命と健康を支えるために――地域に寄り添う京都市立病院のこれから

京都市民の命と健康を支えるために――地域に寄り添う京都市立病院のこれから
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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京都市立病院は、京都市民の命と健康を守る地域医療の中核として、長年にわたり医療を提供してきました。ロボット支援下手術をはじめとする先進的な医療に取り組む一方で、挨拶運動や60周年記念事業といった取り組みを実施しており、地域に根差した病院の温かな風土がにじみ出ています。

院長である清水 恒広(しみず つねひろ)先生に、京都市立病院が担う地域での役割や注力している診療分野、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。

外観
外観

当院は1965年の開設以来、半世紀以上にわたり京都市民の命と健康を守ってきました。今年(2025年)新たに院長に就任した私から見ても、この病院は地域に深く根ざし、必要とされる存在だと感じています。この地域での当院の主な役割は、500床規模の急性期病院として高度かつ集中的な治療を必要とする患者さんへの対応です。市民の皆さんには地域のクリニックや診療所など、いわゆる“かかりつけ”の先生を持っていただき、必要に応じて当院にご紹介いただく――つまり紹介型の医療機関という位置づけにあります。

京都市内には複数の大学病院や赤十字病院が存在しており、病床数も豊富です。そうしたなかで当院は、自治体病院として社会的・経済的背景を問わず全ての方々に門戸を開いています。いわば“セーフティーネット”の役割を果たすことが求められており、これからもその責任を全うしていきたいと考えています。

当院の特徴は、急性期医療だけでなく、自治体病院が担う政策医療として、感染症医療や救急医療、災害医療、そして周産期・小児医療にまで幅広く対応していることです。私自身は小児科の出身ですが感染症科に属しており、診療範囲を広く成人領域まで拡大すべく、2006年からHIV感染症診療にも携わってきました。京都府内のエイズ治療の中核拠点病院は京都大学ですが、治療拠点病院として当院でも多くの患者さん が受診されています。また、一般的な感染症(小児、成人を問わず)だけでなく、マラリアデング熱など、海外から持ち込まれる感染症の症例にも対応しており、かつての“伝染病院”の流れを汲む(京都市内唯一の)感染症病床を有する第2種感染症指定医療機関としての機能も維持しています。

当院の特色ある取り組みの1つが、ロボット支援下手術の分野です。2013年に“ダヴィンチSi”を導入し、現在では第4世代の“Xi”と、関西初導入となる最新型の“SP(シングルポート)”の2台体制となっています。中心となっているのは泌尿器科の清川 岳彦(せがわ たけひこ)先生で、これまでに1,300例以上*の手術に携わり、教育にも尽力されています。

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ダヴィンチSPによる手術

SPは、直径3cmほどの小さな創部からカメラと鉗子を挿入し、体の奥深くまでアプローチできる最新の機種です。術後の痛みが少なく、創部も小さいため、見た目の面や回復の早さからも注目されています。

導入後は「この病気はSPで手術できますか?」とセカンドオピニオンを求める患者さんや、SP指定で紹介を受けるケースも増えてきました。ホームページなどで調べて来院される方もおられ、患者さん側の関心の高さを実感しています。

また、泌尿器科に続いて、消化器外科や呼吸器外科、さらに昨年(2024年)からは産婦人科でもロボット支援手術の導入が進み、診療の幅が広がってきています。

消化器外科では、近年症例数が着実に伸びており、ロボット手術の技術も日々研鑽を重ねながら向上しています。新しい技術を取り入れる一方で、チーム全体での安全管理や術後のケアにも力を入れており、患者さんに安心して手術を受けていただける体制づくりを進めています。

*ダヴィンチによる手術実績(泌尿器科)……1,333件(2013年~2025年7月時点の実績)

整形外科も当院の大きな柱の1つです。高齢化が進む地域において、脊椎疾患や膝・股関節といった整形外科的な問題を抱える方が増えています。そうしたニーズに応え、難易度の高い手術にも対応するべく、人工関節置換術や脊椎手術に技量が高く経験豊富な医師をそろえており、それぞれの手術件数が非常に多くなっています。また、関節リウマチ外来やスポーツ外来も開設しており、さまざまな病気に広く対応していることも特徴です。

ご紹介した診療科以外でも、当院には幅広い病気に専門的で質の高い医療を提供できる体制を整えています。ロボット支援下手術など先進的な医療を取り入れながら、地域に必要とされる医療を提供し患者さんを支えていけることが、当院の強みだと感じています。

当院では、数年前から職員に対して“Good Job”表彰という取り組みを行っており、これは職員が業務改善のために行った“Good Job”を取り上げて表彰するというものです。これまで、患者さんの声に応える形で病棟内の案内表示の改善や院内Wi-Fiの整備などを実施しました。

また、近年は職員間や患者さんとの関係づくりの一環として、定期的に挨拶運動を行っています。月曜日の朝、各部門の職員が病院の玄関に立ち「おはようございます」と声をかけるというシンプルな取り組みですが、少しずつ新しい職員たちにも習慣が広がってきました。こうした取り組みは、病院全体の雰囲気をよくする重要な活動だと感じています。

2025年に開設60周年を迎えるにあたり、4月にはイベントの1つとして地元の洋菓子メーカー「ロマンライフ(マールブランシュ)」と連携した企画を開催しました。洋菓子のキッチンカーの出店や、長期入院している小児患者さんのご家族に向け、特別なケーキと紅茶の提供があり、談笑のひとときを過ごしていただきました。親御さんにとっても少しほっとする時間を提供できたのではないかと思います。

今後もこうしたイベントを通して、患者さんやご家族の皆さんはもちろん、地域とのつながりを深めていければと考えています。

私が大切にしているのは、患者さんの話をよく聞きその目線に立って、患者さんの人生に寄り添いながら、退院後や通院終了後の暮らしまで見据えた医療を提供することです。また、職員にも相手の立場に立って考え、自由に意見を交わせる“心理的安全性の高い職場”であってほしいと伝えています。

当院は、市民の皆さんにとって身近で安心できる存在でありたいと思っています。外来診療は紹介制としながらも、地域のかかりつけ医の先生方と連携し、必要なときにいつでも頼っていただける体制を整えています。これからも引き続き、患者さんに「ここで治療を受けてよかった」と思っていただける病院を目指し、努力を重ねてまいります。

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