院長インタビュー

南丹医療圏の拠点病院として急性期を中心に地域完結型医療を担う京都中部総合医療センター

南丹医療圏の拠点病院として急性期を中心に地域完結型医療を担う京都中部総合医療センター
辰巳 哲也 先生

京都中部総合医療センター 病院長

辰巳 哲也 先生

目次
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京都府南丹市の京都中部総合医療センターは歴史が古く、1936年4月に開院して今年で創立88年になります。その後、地域のニーズに合わせて設備を充実させ、現在の入院病床数は464床に達しました。京都府亀岡市、南丹市、京丹波町の中核的な病院として地域医療を担っている同センターの役割や今後ついて、病院⾧の辰巳 哲也(たつみ てつや)先生にお話を伺いました。

当センターは、入院病床数が464床(一般450床、結核10床、感染症4床)、人工透析が56床の公立総合病院です。診療エリアは亀岡市、南丹市、京丹波町で構成される京都府南丹医療圏で、31の診療科で高度専門的医療を実践するとともに、24時間365日の救急体制を確立し、多くの救急患者さんを受け入れています。ドクターヘリによる広域搬送体制にも参加しており、南丹医療圏の急性期医療の最後の砦になっています。

南丹医療圏の面積は広く京都府の約25%を占め、その中に約13万人が暮らしています。住民は高齢化が進んでおり、南丹医療圏全体では、高齢化率(65歳以上の人が占める割合)は約33.7%と高く、特に京丹波町では高齢化率が約44.5%(2022年4月時点)に達しています。こうした高齢化が進行しているエリアであるにもかかわらず、南丹医療圏には大きな急性期総合病院がほとんどありません。そのため、医療圏の急性期疾患のほとんどを当センターで診療しており、救急車については医療圏の約45%を受け入れています。

当センターは、南丹医療圏における急性期医療の拠点病院として救急医療を担っています。救急隊からの要請があれば、1次救急(入院や手術を伴わない医療)と2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)の患者さんは原則として24時間・365日の体制でほとんど受け入れています。救急車の受入台数は年度によってばらつきがありますが、2022年度で3,213台、ウオークインで6,654人でした。ウオークインで救急を受診する患者さんも可能な限り受け入れられるよう努めています。

診療体制は内科系(循環器内科、消化器内科、腎臓内科、呼吸器内科、脳神経内科、肝臓内科、内分泌・糖尿病代謝内科、総合診療科の医師による交代制)・外科系(消化器外科、整形外科、小児外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科の医師による交代制)・小児科・産婦人科の当直医を配置しています。専門科のオンコール(緊急を要する際、すぐに対応できるように待機する勤務形態)体制も整備しており、さまざまな病気に対応しています。

一方、南丹医療圏には3次救急(命に関わる重症患者に対応する救急医療)に指定されている病院がありません。そこで当センターでは集中治療室の整備や、オートパルス人工蘇生システムなどの救命装置を配備し、心肺停止など経皮的心肺補助装置を必要とする重篤な患者さんも受け入れています。また、第二病棟の屋上のヘリポートではドクターヘリを受け入れており、3次救急を必要とする患者さんを速やかに設備が整った病院に搬送しています。まさに、当医療圏の“2.5次救急”の役割を担っていると自負しています。

急性心筋梗塞・不安定狭心症急性冠症候群)など循環器救急の対応が可能な病院は、南丹医療圏で当センターが唯一です。1分1秒を争う患者さんも数多く搬送されてくることから、循環器専門医(日本循環器学会 認定循環器専門医)が中心になって、多職種のメディカルスタッフが緊密なチームワークで24時間オンコールによる迅速かつ適切な循環器診療体制を確立しています。

また、循環器内科の強みの1つがカテーテル治療で、さまざまな画像診断をもとに最新のデバイスを駆使して高難度病変への治療実績を積み重ねています。それに伴い、包括的心臓リハビリテーション(心臓病や動脈硬化などを発症した患者さんの低下した体力を回復させる取り組みと生活習慣病の是正を含めた二次予防への取り組み)も積極的に行っています。

医学教育の基礎を築いたウイリアム・オスラーの言葉に“人は血管とともに老いる”とあります。循環器内科では、まさにこの血管系を健康に保つためさまざまな方策を駆使し、患者さんの病状回復と生活の質の向上に取り組んでいます。

1990年代に米国で開発された手術用ロボット“ダヴィンチ”を使い、患者さんの体の負担が少ない手術を積極的に行っています。当センターは2021年7月に、最新機種であるダヴィンチXiを導入しました。京都府において南丹医療圏以北では初めての導入になるかと思います。ダヴィンチシステムとは、ロボット・コンピューター・光学の各技術を応用して、低侵襲手術を支援する医療機器です。高倍率3D HD技術、専用インストゥルメント(鉗子)、コンピューターソフトウェアの搭載により、術者は鮮明な視野の元でインストゥルメントを操作することでより精緻な手術を行うことができ、出血量も低減することが期待できます。

当センターでは、泌尿器科領域や直腸・結腸悪性腫瘍(ちょくちょうけっちょうあくせいしゅよう)、胃悪性腫瘍、婦人科領域に対する手術で使用しています。また2022年11月から整形外科においても、人工膝関節支援ロボットCORI (Core of Real Intelligence) Surgical System (Smith & Nephew社製)を導入し、より精度の高い手術が行えるようになりました。

実施にあたっては患者さんの病状や基礎疾患、既往歴などをもとに主治医が判断していますので、まずは主治医にお問い合わせください。

当センターの小児科は、6人体制で拠点病院方式での連日当直を行っています。救急車・ウオークイン合わせて毎年2,000件以上の小児救急を診療しており、2023年度は2,386件の救急件数でした。南丹医療圏における小児救急医療の中心的役割を果たしており、地域住民・診療所からも厚い信頼を得ています。

産婦人科は、京都府の地域周産期母子医療センターに指定されており、重症合併症のある妊婦さんや緊急手術が必要な妊婦さんを受け入れ、京都府北部からも救急車での搬送を受け入れています。特にリスクの高い妊産婦や新生児などに高度の医療が適切に提供されるよう、当院では小児科と産婦人科が互いに協力し合いながら南丹医療圏の周産期医療に貢献しています。

当センターがあるエリアは、開業医が少ないといった特徴があります。そのため、紹介率は55~60%にとどまっているのではないでしょうか。一方、病状が安定した患者さんをかかりつけ医や地域の診療所などに紹介する逆紹介は100%を超えています。地域医療支援病院・第二種感染症指定病院として、これまで各種の研修会や懇親会、感染対策指導、医療安全指導などを行い、地域の連携医とは深い信頼関係のもとに紹介・逆紹介を重ねて参りました。

2024年4月からは「医師の働き方改革」(罰則付き労働時間の上限規制)が始まりますが、Afterコロナ時代に向けて、医療従事者の方々とさらに顔の見える関係を築き、「連携・役割分担の促進」をキーワードに、チームワークを高めながら地域の皆さんの健康を守っていきたいと思います。

日本は世界に類をみない早さで少子高齢化が進んでおり、急速な高齢化社会に向けた効率的な医療提供体制の構築(2025年問題)から、人口の減少と多死社会、生産年齢人口減少による労働力不足への対応(2040年問題)へ課題はシフトしています。この地域でも超高齢化にともない疾病構造が変化し、認知症や単独世帯の高齢者が急増していくでしょう。都市部と都市部から離れた地域での差はあるにせよ、医療と介護の複合ニーズを要する社会が目の前に来ていることを感じています。

当センターがある南丹医療圏は高齢化が進んでおり、急性期から回復期、在宅医療まで切れ目なく医療サービスを提供することが求められています。こうした状況下で当院では地域事情に適した病床再編を行い、2015年12月から回復期リハビリ病棟、2016年4月から訪問看護ステーション、同年8月から地域包括ケア病棟を開設しました。現在は“30年後も光り輝く地域の拠点病院を目指して”というテーマで、手術室の拡充・集中治療室の拡充・新興感染症への対応などができる新棟建設事業に取り組んでいます。建築物価高騰など課題はありますが、今後も患者さん中心の医療に取り組み、皆さまに愛され信頼される病院を目指して頑張りますので、ご協力とご支援を賜りますよう、どうか宜しくお願い致します。

*病床数や診療科、提供する医療の内容については全て2024年3月時点のものです。

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