首が回らない:医師が考える原因と対処法|症状辞典

首が回らない

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 激しい頭痛やめまい、嘔吐などがある
  • 腕や手が思うように動かせない(麻痺がある)

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 腕や手のしびれが続いている
  • 痛みが強い
  • いわゆる「寝違え」のような症状だが、数日経ってもよくならない

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • いわゆる「寝違え」でほかの症状がなく、2〜3日中に良くなる
  • 2〜3日中に良くなるが、たびたび繰り返している

筑波大学 医学医療系整形外科 准教授

國府田 正雄 先生【監修】

寝違えや肩こりなどによって首が回らない、動かしにくいと感じた経験のある人は多いでしょう。しかし、首が回らない症状が長引く・繰り返すときには注意が必要な場合もあります。

  • 首がずっと凝っていて、動かすのがつらい
  • 首を後ろに反らせることができない
  • 首の動かしづらさだけでなく、手のしびれがある

このような症状がみられた場合、原因として考えられることにはどのようなものがあるでしょうか。

病気が原因で首が回らなくなることもあります。大きく分けて骨や関節の病気、または全身の病気によって起こることがあります。

原因となる病気のうち、骨や関節の病気には主に以下のようなものがあります。

頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)

日常的にパソコンをよく使う人などに見られることがある、首が回らない、肩が痛い、首が凝る、腕がだるいといった症状を主とする病気です。同じ腕の位置が長時間続くことなどによって神経や筋肉が疲労することが原因として考えられています。

頚椎症(けいついしょう)

首の骨は頚椎という骨が連なって構成されていますが、この骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が加齢などによってつぶれてしまい、その結果痛みや首が回りにくいなどの症状を出すのが頚椎症です。

変形によって神経が圧迫を受けると、手足のしびれや痛み・動かしづらさなどの症状が現れます。

頚椎症
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頚椎椎間板ヘルニア

首の骨と骨の間にある椎間板が正しい位置からずれ、飛び出してしまう病気です。飛び出した椎間板が近くの神経を圧迫することで、首や肩の痛み、腕の痛みやしびれ、手足の動かしづらさなどの症状が現れます。

頚椎椎間板ヘルニア
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胸郭出口症候群

首から出た神経は腕神経叢(わんしんけいそう)という神経の束となり腕へと続いていきますが、この腕へつながる神経が通るスペースには太い血管、筋肉、骨が密集しているため、体格や生まれつきの構造によっては神経が刺激されてしまい、首・肩・腕の痛みやしびれが起こります。この状態を胸郭出口症候群といいます。

胸郭出口症候群には鎖骨のあたりが狭くなって神経・血管が圧迫されて起こるタイプと、なで肩体型のために腕に行く神経が下の方に引っ張られて起こるタイプがあります。つり革をつかむ・洗濯ものを干すといった、腕をあげる動作の際に痛みが悪化することもあります。

胸郭出口症候群
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頚椎後縦靭帯骨化症(けいついこうじゅうじんたいこっかしょう)

頚椎の後ろにある靭帯(後縦靭帯)が骨化し神経を圧迫することで、首が回らないといった症状を引き起こします。その他手足のしびれや、細かい動きができなくなる、つまづきやすくなるなど多彩な症状が現れ、徐々に進行していくことが特徴です。

外傷性頚部症候群

事故などで首を捻挫(ねんざ)した後、長期にわたって首が回らない、頭痛、肩こりなどの症状が出る病気です。事故などで首に強い衝撃がかかると筋肉や靭帯が損傷を受け、これによる痛みがしばらくの間続くことがあります。

しかし骨折脱臼などがなければ、痛みが多少あっても頚椎を動かすことがこの外傷性頚部症候群の予防になるといわれています。安静時間をなるべく短くする工夫が必要ですが、慎重な判断を要するため主治医の指示にしたがって行いましょう。

体の病気が原因で首が回らない症状が起こることもあります。

髄膜炎(ずいまくえん)

主にウイルスや細菌感染により、脳や脊髄を守っている髄膜や髄液が炎症を起こす病気です。

首・後頭部の痛み、特に首を前屈させると首の痛み・硬さのため曲がらない(項部硬直)が特徴的な症状の一つに挙げられます。高熱や激しい頭痛を伴うことが多いですが、中にはゆるやかに進行するものもあるため注意が必要です。

早期の治療が必要なため、当てはまるものがあればなるべく早く受診しましょう。

髄膜炎
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高血圧

血圧が高くなる高血圧でも首が回らなくなる・肩こりのような首の違和感を感じることがあるといわれています。自覚症状がないことも多い高血圧ですが、こういった些細な症状が気づくきっかけとなることもあります。

高血圧症
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緊張性頭痛

無理な姿勢や長時間同じ姿勢が続くなどの身体的ストレスや、精神的ストレスを引き金として起こる頭痛です。首や肩・背中の筋肉が緊張することが原因で起こるため、首の動かしづらさや違和感につながることがあります。

緊張型頭痛
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首が回らない状態や違和感を覚える、動かしづらさを感じる状態が続いたり、頻繁に繰り返している場合には一度受診がすすめられます。また、首の症状の他に体の症状(頭痛や発熱など)がある場合には、なるべく早く受診しましょう。

首の症状だけであればまず整形外科へ、体の症状を伴う場合にはまず内科へ受診するのがよいでしょう。

医師にはいつから首の症状があるのか、その他の症状はいつからどんなものがあるのか詳しく説明することがポイントです。

日常生活上の習慣や原因によって首の回らなさが現れている場合もあります。

睡眠中不自然な姿勢が続いたことなどにより、首が回らなくなることがあります。どうして寝違えという状態が起こってしまうのか、ということについては、さまざまな説がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。

首を寝違えたときは

痛みのある方向に無理に動かすなどの動作は避けたほうがよいとされていますが、改善されていくようならそれに合わせて徐々に動かしていくようにしましょう。通常は数日以内に改善することが多いものですので、それ以上続くようであれば一度整形外科で診察を受けたほうがよいでしょう。

同じ姿勢が長時間続くことで筋肉の緊張を招き、首の痛みや違和感の原因となることがあります。

PC・スマートフォンなどを使うときは

定期的に休息を挟んでストレッチなどを取り入れ、同じ姿勢が長時間続くことを避けましょう。特にスマホをチェックするときのうつむいた姿勢が続くことは首に負担がかかりやすいといわれています。四六時中SNSをチェックするような生活を見直すのもひとつの方法です。

慢性的な運動不足は筋力の低下や、動かさないことによる筋肉の緊張を招きます。

運動不足を解消するには

毎日の生活の中でできるだけ続けやすい運動を取り入れましょう。デスクワークの合間に簡単なストレッチをしたりすることもよいでしょう。

寝具が合わずによく眠れないと、特定の筋肉を緊張させ首を回りにくくします。ベッドまわりの環境について見直してみましょう。

体にあった寝具を選ぶために

特に枕に注意しましょう。首のカーブを自然にサポートし、硬すぎず柔らかすぎないものを選ぶようにするとよいといわれていますが、自分で選ぶことが難しい場合には専門店などで選んでもらうとよいでしょう。また寝具には耐用年数があるため、サポート力のなくなってしまった寝具を使い続けることのないようにしましょう。

日常生活の中でできる改善方法を試してみても症状がよくならない場合には、思わぬ病気や原因が隠れている可能性も考えられます。一度整形外科で相談するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。