インタビュー

乾癬の治療――5種類の治療法、それぞれの特徴・注意点とは?

乾癬の治療――5種類の治療法、それぞれの特徴・注意点とは?
佐藤 佐由里 先生

山王病院 皮膚科部長

佐藤 佐由里 先生

皮膚疾患の1つである“乾癬(かんせん)”にはいったいどのような治療法があるのでしょうか? 山王病院皮膚科部長であり、乾癬治療を専門とされている佐藤 佐由里(さとう さゆり)先生にお話をお聞きしました。

乾癬の治療には以下のようなものがあります。

  1. 外用療法
  2. 光線治療
  3. 内服療法
  4. 生物学的製剤の注射薬
  5. 顆粒球吸着除去療法

治療は、皮膚症状のみの軽症例の場合、ステロイドや活性型ビタミンD3の外用治療が中心です。それだけで完治するのが難しい場合は、光線治療(ナローバンドUVB療法、エキシマライト、PUVA療法)が行われます。
一方、尋常性乾癬の重症例や膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)乾癬性関節炎乾癬性紅皮症などの重篤な乾癬はシクロスポリン、レチノイド、メトトレキサート、アプレミラスト、JAK阻害剤の内服、抗体製剤の注射薬などの全身療法を行います。特に乾癬性関節炎や膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の場合は、外用治療に加え、発症初期から全身療法を取り入れて進行を抑制したり、悪化を防いだりする必要があります。

顆粒球吸着除去療法は膿疱性乾癬のみに認められた治療法です。

ステロイド外用剤と活性型ビタミンD3外用剤を使います。ステロイド外用剤は皮疹の炎症を抑える効果がありますが、長期使用では、皮膚が薄くなるなどの副作用が出るので、副作用のリスクが少ない活性型ビタミンD3外用剤と組み合わせて使用します。

病変部に、治療効果のある波長の紫外線を当てて治療します。光線療法には、波長の異なるナローバンドUVB、エキシマライト、PUVA療法があります。

光線治療の注意点としては、以下の3つがあります。

  • 過度に当たると日焼けをしたような症状になる
  • 皮膚がんになる恐れがある(長期の治療は皮膚がんのリスクを高めます)
  • 可能な限り光線が目に入らないようにする(治療中はサングラスを使用)

特に光線の総照射量は、上限を超えると皮膚がんのリスクが上がるといわれていますので、患者さんがどれくらいの総照射量を浴びたのか毎回加算しておき、その都度確認していきます。

内服薬は、以前はシクロスポリン、レチノイドの2種類のみでしたが、それに、アプレミラスト、メトトレキサートが加わり、近年JAK阻害剤が使用できるようになりました。内服薬は外用剤だけでは追いつかないような皮膚症状の乾癬や関節の変形・破壊を止める必要のある乾癬性関節炎に使います。それぞれに利点と注意する副作用がありますので、薬剤に合わせて副作用が出ていないかを定期的にチェックしながら使います。

シクロスポリンは免疫を抑制する効果を利用して、皮膚や関節の炎症を抑えます。副作用は、腎臓に負担がかかり血圧が上がってくること、風邪をひくと治りにくいことなど、体の抵抗力が少し弱まることです。

レチノイドは、乾癬で厚くなった皮膚を正常の皮膚の厚みに戻す効果があります。ただ、肝機能が悪くなることがあったり、唇などもともと皮膚の薄い部分が薄くなりすぎて、食べ物がしみたりするなどの副作用が出ることがあります。また、注意すべき副作用は、催奇形性(形態異常の子どもが生まれる可能性を高めてしまう)があるため、妊娠を考える男女の患者さんは一定の期間避妊しなくてはなりません。

アプレミラストは乾癬に関わる免疫細胞が出すPDE4という物質がほかの細胞に作用しないようにピンポイントでブロックする薬剤です。副作用として、頭痛や下痢を伴うことがあります。

メトトレキサートは長年関節リウマチの治療薬として使われていましたが、数年前より乾癬の治療薬として承認されました。乾癬性関節炎で使用されることが多く、免疫細胞の増殖を抑えることにより、関節炎の進行や破壊を抑制する効果があります。時に肝機能障害を生じることがあります。

JAK阻害剤は低分子化合物と呼ばれる新しい内服薬で(4)の生物学的製剤のグループに入る内服バージョンですので、次の項で説明します。

生物学的製剤の登場で、重症の尋常性乾癬乾癬性関節炎乾癬性紅皮症膿疱性乾癬の治療効果は著しく上がりました。特に、これまで、関節の変形を止めることが困難だった乾癬性関節炎は、早期に生物学的製剤を投与することで、関節の変形・破壊に至ることなく病気のコントロールが可能になりました。重症の尋常性乾癬も、外用薬がほとんど必要なくなるレベルにコントロールできるような高い効果を示すとされています。

そもそも乾癬という病気は、さまざまな細胞から出される“サイトカイン”と呼ばれる物質がほかの細胞上の受容体という部分と結合して細胞内に炎症のシグナルを伝達して病気を進行させます。その流れをピンポイントで抑制するのが“抗体製剤”と呼ばれる注射薬や点滴薬です。また、細胞内でのJAK(ヤヌスキナーゼ)と呼ばれるシグナル伝達部をブロックするのが生物学的製剤の中で低分子化合物と呼ばれるもので、JAK阻害剤という内服薬です。JAK阻害剤は分子が小さいので、内服薬が可能になりました。

抗体製剤の注射薬や点滴薬は抗TNF-α抗体、抗IL17抗体、抗IL12/23抗体というもので作られた製剤が使用され、現在13種類あります。

どの薬剤も製剤により、治療の対象となる病型は若干違いがあります。どの薬剤を使用するのかは、患者さんと主治医で、病型だけでなく、通院頻度や年齢、重症度などから相談のうえ、決めていきます。

副作用は体に潜んでいる結核菌や肝炎ウイルスの深在性真菌症の再活性化と呼ばれ感染症をまれに起こすこと、間質性肺炎といわれる肺の症状を引き起こすことがあり、投与前と投与中に血液検査や胸部XP、胸部CTなど厳密な検査が必要です。また、投与開始は一定の基準で認められた医療機関でしか扱えません。また、薬が非常に高価なので、高額医療費制度などを利用し、自己負担額を軽減する手続きをします。

“難病指定”に認定されている“膿疱性乾癬”に使われる治療です。乾癬に関わる“顆粒球”と呼ばれる白血球細胞を選択的に血液中から除去して、症状を軽減させます。

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