胆嚢がんは早期のうちに見つけて手術をすればほぼ完治できる病気ですが、その一方で、症状のないうちに発見することの難しさもあります。
また、胆嚢がんと並んで話題に上ることの多い病気として「胆管がん」があります。2015年7月には55歳の若さで亡くなった任天堂の岩田聡社長が胆管がんであったことが報じられました。これらのがんの違いはどんなところにあるのでしょうか。
外科医として、また超音波検査の専門家として、術式も診断も患者さんに優しいことをモットーとされている山王病院 一般・消化器外科の渡邊五朗先生にお話をうかがいました。
胆嚢はふくろ状の臓器であるため、中でポリープが大きくなっても直ちに症状が出ることはありません。がんが進行して胆管や肝臓にまで広がってしまうと、痛みや黄疸の症状があらわれます。しかしポリープの大部分は良性のものであり、大きくなる場合も時間がかかるため、定期的な超音波検査で見つけ出し、悪いものでないかどうかをしっかりと見極めていくチャンスが十分にあります。
胆嚢がんは早期のうちに発見・治療できればほぼ完治することができます(5年生存率95%以上)。しかし、進行した状態での手術では、5年生存率は約半分となります。
早期の良い状態での手術では患者さんの負担が少ない術式(腹腔鏡下胆嚢摘出術)で行うこともできますが、胆管や肝臓、リンパ節まで広がってしまっている場合には開腹手術で拡大胆嚢摘出術を行い、あわせてリンパ節郭清術も行うなど、確実にがんを取り除いてしまう必要があります。これは患者さんにとって負担の大きい手術となります。
(参照:「胆嚢がんの治療法。第一選択は手術」)
胆嚢がんの中には、1年や半年ごとのペースで経過観察していては間に合わないほど、急速に大きくなっていくような進行の早いがんがあります。胆嚢の壁から大きく突出しているのではなく、内部に潜り込んでいるような状態のものを平坦浸潤型といいますが、このタイプのがんは隣り合っている肝臓や胆管だけでなく、リンパ節への遠隔転移も早く、早期のうちに見つけることは非常に難しくなります。
胆管に発生する胆管がんを胆嚢がんと合わせて「胆道がん」と呼ぶ場合があります。しかし胆管がんは発生する部位の違いだけでなく、その性質も異なっています。
胆管がんは早期のうちに発見することがきわめて難しく、見つかった時にはすでに手術することができない状態か、あるいは手術で切除できた場合でも完治せず患者さんが亡くなってしまう割合が高くなります。その一方で、胆嚢がんには通用しない抗がん剤が、胆管がんには一定の効果があることもわかっています。
胆嚢がんを無症状のうちに見つけるためには、人間ドックなどで広く一般的に行われている超音波検査を積極的に受けることが大切です。日本で胆嚢がんの治療成績が高いのは、超音波検査が広く普及している医療体制、健診システムによるところが大きいのです。安心して日常生活を送るためにも、再検査を勧められた場合は必ず受診しましょう。
国際医療福祉大学 教授、東京大学 医学部肝胆膵・移植外科 非常勤講師
国際医療福祉大学 教授、東京大学 医学部肝胆膵・移植外科 非常勤講師
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本超音波医学会 超音波専門医・超音波指導医日本肝臓学会 肝臓専門医日本消化器病学会 消化器病専門医日本胆道学会 認定指導医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能専門医
東京大学医学部、虎の門病院副院長を経て国際医療福祉大学教授を務める。消化器外科、胆膵を専門とし、超音波検査を主とした画像診断も専門とする。高度な技術が必要とされる胆膵領域において、へその傷だけで手術をする方法を独自に開発。診療、手術術式ともに、患者さんにやさしいことをモットーとする。
渡邊 五朗 先生の所属医療機関
関連の医療相談が11件あります
胆嚢がんについて
数年前人間ドッグへ行った際に超音波の検査で胆嚢にポリープがあるといわれました。 その後病院の受診をし、様子をみていたのですが、ポリープが大きくなってきているためがんのだろうとのことで手術を勧められました。(転移はしていないとのことでした) 先生からは胆嚢をとるという説明をうけましたが、胆嚢をとることで治るのですか?体への影響はないのでしょうか? 症状はないのですが、胆嚢がんは症状が出てこないものなのでしょうか? 先生へ確認し忘れたのでここで教えていただければと思います。
腹部エコーで胆のうに所見
40歳の時に初めて腹部エコーの検査をしたところ、胆のうに胆石や胆泥、胆のうポリープがあると言われました。 その後は要経過観察で、去年は検査をしなかったので先日同じ腹部エコーの検査を別の病院でやってもらいました。 その結果、胆のう結石(非充満型)、胆のうスラッジ という内容でした。 40歳のときに言われたのと同じく今回も要経過観察となったわけですが、 胆のう結石とはつまり、胆石のことなのでしょうか? また、非充満型とはどういう意味なのでしょうか? 今後も検査は定期的にやろうと思っていますが、なんとなく右の脇腹あたりが日頃から痛むような気がするのですが 健康診断ではなく一度、消化器内科を受診したほうがよいのでしょうか? おそらく、同じ検査をやると思うのですが・・・ 症状があって病院に行く方が なにかしらの治療法を提案して頂けるのでしょうか・・・? また、この結石がどこかに詰まると激痛と聞いていますが、それは尿管結石とはまた別のものなのでしょうか? わかる範囲で結構です。 よろしくお願いします。
右脇腹、右側の背中、左脇腹の痛み
今年の1月に人間ドック受診後をし、胆嚢がん疑いで要精密検査となりました。 その後定期的にエコー検査をしており、先生からはおそらく大丈夫だと思うと言われていました。 しかし、6月ごろの検査後、数週間後から右脇腹に痛みが出てきたため、再度病院を受診しました。その際に腹部CTをしましたが特に異常はないとのことでした。 今月の6日にエコー検査をしたところ、胆石と9ミリほどのポリープがあるとのことでした。 先生がおっしゃるには胆石による痛みかもしれないということでしたが、最近左脇腹にも痛みが出てきており、胆嚢がんと膵臓がんではと心配しております。 画像などはなく分からないことが多いと思いますが、痛みの原因として考えられる病気はどのようなものがあるのでしょうか。
胆嚢ポリープ
先日、腹部エコー検査で胆嚢にポリープがあると言われ、経過観察しましょうと診断されました。大丈夫でしょうか。昨年は異常ありませんでした。現在、薬は血圧降下薬を服用しています。昨年10月までは糖尿病治療薬、今年4月までは脂質異常症治療薬を同時に服用していました また、詳しく検査を受けようとすれば何科を受診すればいいのでしょうか。
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