放射線治療は、大きく以下の2つに分けられます。
今回は、外部照射について湘南藤沢徳州会病院放射線科部長の永野尚登先生にお話をお聞きしました。
外部照射は、「リニアック」と呼ばれる装置を用いて行います。体外からこの装置を用いてがんに向けて放射線を照射していきます。かつては、外部照射の際には周囲の正常組織にも照射してしまい、有害事象が起きていました。しかし現在では、周囲の正常組織を照射せずに標的のがんだけを狙うことのできる装置が登場しました。機器の進歩とともに、有害事象も大きく減ってきています。
外部照射においては、通常は1日1回ずつ週5日間程度で、1か月~2か月程度の期間に渡り治療を行っていきます。
機器の進歩により、どんどん短時間になってきました。今では治療室に入ってから15分くらいで終わることもあります。「部屋の中で寝ている間にあっという間に終わってしまった」と言われることもあります。(機器の写真は下で紹介)
じっと動かずに寝なければなりません。また、肺を治療するときには一時的に息を止めなければならないこともあります。
1:標的となるがんに十分な線量を照射していきながら、正常な周囲臓器への照射を抑えていくことのできる強度変調放射線治療(IMRT)
強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)とは、標的となるがんにのみ放射線を集中して照射することのできる新しい照射技術です。これにより、治療成績の向上や有害事象の軽減が可能になります。この治療では、機器が回転しながら放射線を照射していきます。機器によって5、7または9ヶ所から照射していきます。(奇数の方向からの照射が特徴です)。また、40cm×40cmの大きな部分の照射ができるのもIMRTの特徴です。
2:標的となるがんに十分な線量を照射していきながら、正常な周囲臓器への照射を抑え、なおかつ高い精度で集中して照射していくことの可能な定位放射線治療(SRT)
定位放射線治療(Stereotactic Radiotherapy: SRT)とは、コンピュータでがんの形状に正確に一致させることにより、そこに集中照射していく方法です。IMRTよりもさらに集中した部位に照射することができます。これも、周辺の正常組織を守り、がんのみに照射することができます。脳などにも用いられます。さらに進歩した方法であり、機器が回転しながら連続的に放射線を照射することができます(それにより治療時間も短縮されました)。
私の施設では、このSRTの中でも、VMAT-SBRTという最新の機器を用いています。VMAT-SBRTでは当てることの出来る部分がIMRTよりもやや小さくなります(15cm×20cm)。そのぶん、小さながんに対しても集中的に照射することができます。
従来は、集中的に一箇所に放射線を照射することのできる機器がないという問題に加え、予防的な照射という考えからも広い範囲に放射線を当てる治療が主流でした。しかし、最近はPET-CTなどの診断機器が発展したおかげで正確にがんの位置も判別できるようになりました。さらに、IMRT以降の治療機器の発展もあり、ある部位にだけ限定的に放射線を照射することが可能になってきました。それにより有害事象も大きく減らすことができるようになりました。また、コンピュータの進歩もこれに大いに貢献しています。治療計画を立てるための画像処理の時間も、どんどん短くなってきつつあります。
現在では、腫瘍のあるところを正確に診断し、そこに向けて集中して放射線を照射していくことが可能になってきています。その結果、究極的な局所治療である「定位照射の時代」になりつつあります。どんどん放射線の有害事象も減っていくでしょう。また、定位照射では手術で到達できないような深い部分の腫瘍に対しても放射線を照射することができるようになりました。その結果、今までは手術ができず治療できなかったがんが放射線治療で完治されることも増えてきました。
記事1:放射線治療とは―目的、メカニズム、準備
記事2:放射線治療の方法―外部照射について
記事3:放射線治療の方法―内部照射について
記事4:放射線治療のメリットと効果
記事5:少なくなりつつある放射線治療の副作用と有害事象
記事6:放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用
記事7:放射線治療中の日常生活―注意すべきこと
記事8:放射線治療中の日常生活―皮膚の副作用と皮膚ケアについて
湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長
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