インタビュー

放射線治療とは―目的、メカニズム、準備

放射線治療とは―目的、メカニズム、準備
永野 尚登 先生

湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長

永野 尚登 先生

この記事の最終更新は2015年06月11日です。

放射線治療とは、がんなどの病巣部に対して放射線を照射することにより、がん細胞を死滅させていくための治療です。腫瘍を消失または縮小させる事を目的とすることもあれば、痛みなどの症状の改善を目的とすることもあります。また、がんの再発治療に用いられることもあります。このような放射線治療について、長年第一線で患者さんと向き合われた、湘南藤沢徳州会病院放射線科部長の永野尚登先生にお話をお聞きしました。

放射線治療は、がん治療の中ではさまざまなシーンで登場します。たとえば、抗がん剤による治療や手術治療などと一緒に用いられることもあります。手術の前に行われることもあれば、膵臓がんなどの場合では手術の最中に放射線をがんに当てていくこともあります。また、手術後に放射線を照射することもあります。

このように手術・化学療法・放射線療法などを組み合わせて行うがん治療を「集学的治療」と言います。集学的治療における放射線治療が「根治照射」というものです。これは、がんを徹底的に叩きのめして病気を根本から治すための治療です。

しかし、この根治治療ができなくても放射線治療が有効なシーンがあります。それは「緩和ケア」です。緩和ケアにおいては症状を取り去ることができます。たとえば、がんが骨に転移して痛みがひどくなってしまったとき、それを放射線治療によって叩き、症状をやわらげることができます。この場合、病気の完全な治療を目指すわけではありません。しかし、現に存在している腫瘍や症状を消し、悪影響を及ぼさないようにするのです。このような放射線治療を「緩和的照射」といいます。

今では、「根治照射」「緩和的照射」という考え方からさらに「病気の制御」「腫瘍の制御」「症状の制御」と変化してきました。別記事で、この3つの観点から詳しく説明します。

放射線が作用する対象は、細胞が増える際に必要な遺伝子です。つまり、この作用によって細胞がそれ以上増殖しないようになるのです。これにより、がん細胞を死滅させたり、減らしていくことができます。このメカニズムを用いることにより、放射線治療でがんを縮小させることができます。

X線のほかには、γ(ガンマ)線や電子線などを用いていきます。陽子線や重粒子線による治療も行われています。

CTを用いてがんがどのように広がっているのかを正確に把握します。その後、コンピュータを使うことにより、がんや周囲の正常組織の位置を見極めていきます。こうしてどのように放射線を照射していくかを検討し、治療の計画を立てていきます。

ここで、正確に放射線を当てるため、皮膚の表面にマーキング(印を付ける)します。(ただし、今では機器の進歩に伴いマーキングなしでも治療できるようになってきました。)固定具(身体が動かないように固定する)を作製することもあります。

次の記事からは実際の放射線治療の方法について外部照射内部照射の順にお話ししていきます。

記事1:放射線治療とは―目的、メカニズム、準備
記事2:放射線治療の方法―外部照射について
記事3:放射線治療の方法―内部照射について
記事4:放射線治療のメリットと効果
記事5:少なくなりつつある放射線治療の副作用と有害事象
記事6:放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用
記事7:放射線治療中の日常生活―注意すべきこと
記事8:放射線治療中の日常生活―皮膚の副作用と皮膚ケアについて

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  • 湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長

    永野 尚登 先生

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