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インタビュー

放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用

放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用
永野 尚登 先生

湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長

永野 尚登 先生

放射線治療には、他のさまざまな治療と同様に一定の副作用・有害事象があります。しかし、近年は放射線治療機器が進歩してきたため、かつてよりも副作用が起きる確率はぐっと減ってきています。それでもまだ、副作用が全く起こらなくなったというわけではなく、副作用に苦しめられている患者さんも多く存在します。
こうした副作用全般の概要については、前の記事でご説明しました。では、具体的な副作用、有害事象には具体的にはどのようなものがあり、そしてどのように対策をしていけばよいのでしょうか。湘南藤沢徳州会病院の永野尚登先生にお聞きしました。

副作用は症状の起こり方や時期・感じ方によって大きな個人差があります。下記の8つの症状が出てしまったとき、それ以外でも副作用がひどくなってしまったときには主治医に相談しましょう。

腸へ放射線を照射することにより、腸の粘膜がダメージを受けることがあります。これにより、下痢や軟便になってしまうことがあります。
しかし、IMRT(照射野内の放射線の強度を変えて照射を行なう方法。がんの形に合わせた線量分布が作れる)が取り入れられて以後、下痢の副作用が大幅に減りました。なぜなら腸(特に小腸)に放射線が当たらなくなったからです。軟便程度の症状は起こることがありますが、この方法が取り入れられて以降、下痢の副作用は極端に減りました。

※下痢や軟便への対策
消化によい食事をとることが大切です。また、水分補給を十分に行いましょう。万が一、あまりにも下痢がひどい場合には、腸内細菌を整えるための整腸剤や下痢を止めるための薬を内服することもあります。

腹部へ放射線を照射することにより、胃や腸の粘膜がダメージを受けます。これにより吐き気を起こすことがあります(ときに、頭への照射からの影響で吐き気を起こすこともあります)。

しかし、吐き気、嘔吐の副作用も大きく減ってきました。これもIMRTが導入されて以降のことです。ただし、放射線療法のみでは起きなくても、一緒に行う化学療法による消化器症状は出現することがあるため、両方を併用して治療する方はそのことを念頭に置いておきましょう。

※吐き気・嘔吐への対策
消化がよいもの、無理なく食べられるものを取るようにしていきます。一人前の量を少量ずつ、何回かに分けて食べることもあります。また、吐き気を抑えるための薬を内服することもあります。

治療中に食欲が落ちることは多くあるケースです。やはり、がんと言われて「食欲がばっちりです」という人はほとんどいません。原因としては、放射線治療によるストレスや、腸に放射線が照射されることによる粘膜のダメージの影響が大きいと考えられます。

※食欲低下への対策
1、2の対策とも共通しますが、私はよく「乙女食」を摂りましょうと言います。デザートなどを楽しく女性が食べるイメージです。それと同じように、患者さん自身が美味しく楽しく食べられるものを摂ります。楽しく摂れればあめ玉でもいいのです。消化がよいもの、無理なく食べられるものをとるようにしていきます。少量ずつ何回かに分けて食べることもあります。

カロリーの高い食事をとる必要もありますが、栄養補給にばかりとらわれて無理をしすぎないことが大切です。むしろ食べられるものを食べて、軽い運動をする方が重要です。

身体が疲れやすくなる・だるくなるなどの症状が現れることがあります。この副作用が現れた患者さんに対して私が使う表現としては「海水浴で疲れきった状態」がずっと続く・いつ始まっていつ終わったか分からないけれども「アンニュイ」な状況が続く・などです。しかし、治療が終了してから数週間経てば、この疲労感は通常であればなくなります。

※疲労感・全身倦怠感への対策
疲れやすさを感じたりだるさを感じたら、まずは無理をしないで休みましょう。ただし、無理しない範囲で適度に身体を動かすことも疲労感を紛らわし、体力を復活させるためには大切です。

放射線を照射した部分の皮膚が赤くなったり、かゆみ・痛みを感じることがあります。また、皮膚がカサカサに乾燥してしまうこともあります。

※皮膚のトラブルへの対策
たとえ皮膚に何かトラブルがあっても、そこを無理にこすったり、搔いたりしてはいけません。綿を使った素材の洋服など、皮膚を刺激しない衣類を着るのも大切です(詳しくは「放射線治療中の日常生活―皮膚の副作用と皮膚ケアについて」参照)。

口内乾燥と口内炎は、頭や頸のがんなどに対して放射線治療を行うときによく起こる症状です。これらの放射線治療の最中には、口の中やのどに放射線が当たりやすくなるため、口の中が乾燥したり、口内炎になりやすいです。また、ものが飲み込みにくくなることもあります。酷い時には唇や、歯の裏が荒れることもあります。

  • 口の中の乾燥と口内炎への対策

まずは口の中を清潔にしていくことが大切です。起きたとき・毎食後・寝る前にきちんと歯を磨きましょう。歯に負担をかけないよう、やわらかい歯ブラシを選ぶことも大切です。また、うがいをこまめにすることで、乾燥を防ぐと同時に、感染を予防することにもつながります。

しかし、うがい薬には注意が必要です。例えば、代表的なうがい薬「イソジンガーグル」はしみるので使えません。そこで、塩水を用いると有効です。その際には1%食塩水(500mlの水に1mlの食塩を混ぜる)を使いましょう。

ここでも、食事の内容をきちんと考えることが大切です。口の中の粘膜を刺激しないように、かたいものや熱いものは避けましょう。また、口内炎症を止めるための塗り薬や、痛み止めの薬などを用いることがあります。

頭に放射線を照射するときに起きやすい副作用です。このようなときには頭皮が荒れてしまうこともありますし、毛髪の根元にある細胞がダメージを受けて、脱毛が起きることもあります。しかし、多くの場合、治療後には再び髪は生えてきます。目安として、概ね6ヶ月後くらいには生えてくるでしょう。

ただし、もとより少し弱い毛になることや、パーマをかけたようなちり毛が生えてくる可能性もあります。さらに、同時に行う化学療法のせいで起きる脱毛の場合には、髪が生えてこないこともあるので注意しておきましょう。

※脱毛への対策
まず、きちんと脱毛について理解し、心の準備をすることが大切です。
髪を洗うときには地肌を強くこすりすぎないよう、力を入れ過ぎないように注意していきましょう。

放射線治療中、過度な洗髪とブラッシングが髪の毛には一番よくありません。すすぐときにはぬるま湯で流す程度にしましょう。直射日光を避け、乾燥の対策をするなど、頭皮にダメージを与えないようケアしていくことも大切です。
少しでも髪の毛が抜け始めてくると、気になって触ってしまうことがありますが、これもよくありません。触るとさらに髪の毛が抜けてしまいます。

これらの対策をきちんと行っても、脱毛が起きてしまうことはあります。そのようなときには医療用のかつらや帽子などで対策をすることも可能です。脱毛が著しく起きてしまったとしても、あまり悲観的にならず、心を穏やかにして気にしすぎないことが大切です。

  • 尿

骨盤に放射線をかけると夜間に頻尿が起きることもあります。この対策としては、昼間に適度な運動をしてエネルギーを使い、夜きちんと眠れるようにすると治まることがあります。

肺への定位照射では、照射後2ヶ月くらいで肺に炎症が起きることもあります。ただし、炎症が起きていても自覚症状がなければ経過観察で構いません。肺炎ではなくただの「肺の日焼け」と理解します。もちろん、症状があれば薬を飲みます。

  • 唾液

唾液が出なくなることがあります。しかしこれはIMRT以後著しく減った副作用なので、あまり心配はいりません。

記事1:放射線治療とは―目的、メカニズム、準備
記事2:放射線治療の方法―外部照射について
記事3:放射線治療の方法―内部照射について
記事4:放射線治療のメリットと効果
記事5:少なくなりつつある放射線治療の副作用と有害事象
記事6:放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用
記事7:放射線治療中の日常生活―注意すべきこと
記事8:放射線治療中の日常生活―皮膚の副作用と皮膚ケアについて

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  • 湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長

    永野 尚登 先生

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