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インタビュー

人工心臓の未来―補助人工心臓の未来は明るい

人工心臓の未来―補助人工心臓の未来は明るい
小野 稔 先生

東京大学医学部附属病院心臓外科教授

小野 稔 先生

人工心臓のうち、日本で主に使用されているのは「補助人工心臓」です。この補助人工心臓は、現在では心臓移植をするまでの間の循環を補助していくために用いられています。しかし、心臓移植を受けるまでにはまだかなりの時間がかかってしまっているのが現状です。

そこで心臓移植までにかかるタイムラグの問題を解決する必要があり、そのためには人工心臓がより発展していく必要があります。人工心臓の今後の展望はどうなのか? 完全に循環を代替する装置として長期に植え込めるのか? というテーマについて、日本で最も多く補助人工心臓を扱われている、東京大学病院医学部附属心臓外科教授の小野稔先生にお話をお聞きしました。

まず、置換型人工心臓から考えていきます。現在、置換型の人工心臓として世界で使われているものは1種類しかありません。この置換型の人工心臓は、長期において補助として使うのは極めて難しい状況です。その理由は、合併症が起こってくるためです。

置換型の人工心臓についての研究は、日本を含め世界中で行われています。主だったものとしては4種類が研究されています。しかし、そのうち2年を超えて安全に使用できるものはまだありません。つまり開発途上なのです。

置換型人工心臓のほうが技術的には難しいという現状もあります。心臓は、右と左が絶妙なバランスを取りつつ動いています。そのバランスを長期に渡ってとるのは極めて難しいのだということが、人工心臓を扱う過程で明らかになってきました。つまり、どうやったら左右両方の心臓のバランス制御がとれるのかが、まだ完全にはメカニズムとして分かっていないということです。バランス制御が分かりきっていない以上、なかなか次の段階に進むのが難しい現状があります。

現状では補助人工心臓のほうが患者さんに搭載しやすく、日本でも補助人工心臓しか用いられていません。今後も補助人工心臓が発展していく可能性があります。

長期にわたり使用されるのは、実は置換型ではなく植込み型の補助人工心臓となっています。植込み型の補助人工心臓であれば、入院する必要はありません。そして、この植込み型の補助人工心臓は今後の主流になる可能性があります。現在、世界には10年以上補助人工心臓を使って生存を続けている方が数名います。5年以上であれば数百名になりつつあります。心臓移植をするわけでもない状態で、植込み型の補助人工心臓のみで生きることが、今の技術においては可能になりつつあるのです。

しかし、10年以上使用していくためには、補助人工心臓は技術的な向上がまだまだ必要な段階です。しかし、あえて置換型人工心臓を用いなくて良い、心臓移植すらしなくて良いという時代がやってくる可能性は見えてきています。補助人工心臓の未来は明るいと考えています。

95%以上のケースでは、心臓の左側だけの補助人工心臓によってポンプ機能を補助できます。ただし、心臓の左側に続いて右側も一緒に、しかもひどく悪くなった場合には、どうしても置換型が必要というシーンもありました。あるいは、左右両方に植込み型を入れる、つまり2台の補助人工心臓を入れていくという方法も考えられます。しかしいずれにせよ、左右両方の心臓が高度に障害されてしまった場合の治療はまだまだ困難であると考えられます。

小児用の補助人工心臓であるEXCOR®(エクスコア)が日本で認可されたのは最近になってからです。それまでは大人の補助人工心臓しかありませんでしたが、子どもにも使えるものが認可されました。この認可から補助人工心臓がどうなっていくかの展望を最後に述べていきます。

2010年に臓器移植法が改正されました。それまでは脳死になっても15歳以上でしか臓器提供ができませんでした。しかし2010年から、日本でも臓器移植が15歳未満でもできるようになりました。とはいえ、最低でも1年から2年以上の待機期間が、場合によっては3年近い待機期間が必要でした。しかし脳死のドナーは極めて限られています。そのうえ、心臓移植を待っている人は極めて悪い心不全の方です。このような中では長期にわたって心臓移植を待つこともなかなか厳しくなります。

しかし「EXCOR®」(エクスコア)の補助があれば、安定した状態で比較的長い期間を待てるようになります。その結果、長く補助している期間にさまざまな薬の治療も併用できるようになります。補助人工心臓は「心臓移植をするために待つためのもの」と語られることが多くなりますが、これを使いながら薬による治療をすることで自分の心臓機能が回復するお子さんも出てくると考えています。
これまでは助からなかったお子さんが助かったり、補助人工心臓が大きくお子さんを生きながらえさせたりする可能性もあるのです。