インタビュー

食物アレルギーの検査

食物アレルギーの検査
藤澤 隆夫 先生

国立病院機構三重病院 院長

藤澤 隆夫 先生

この記事の最終更新は2015年12月24日です。

適切なアレルギー治療を行うためには、その検査・診断が非常に重要となります。現在のアレルギー診断はどのようなもので、具体的に何を目的とするものなのでしょうか。引き続き、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生にうかがいました。

アレルギー治療の基本はその原因を避けることです。そのためには、対象の食べ物が本当にアレルギーの原因になっているかどうかを正しく診断することが大切です。そして、その食べ物が本当に原因であると判明すれば、そこで初めて食べることを止める、除去していくという段階に入ります。

以前はその食べ物を完全除去する、つまり摂取をまったくしないようにするという方針でしたが、症状の出かたや重さには違いがあるため、現在では必要最小限の除去、患者さんそれぞれの症状に合わせて摂取する量を定めるという治療方針に変わってきています。

アレルギー検査において、IgE抗体の値が高い人の中でも病気かどうかをすみ分けるために指標にするのが、プロバビリティ曲線の値です(つまり、曲線から確率を出すということです)。出た確率を参考にはしますが、「10パーセントだったら症状が出ない」「90パーセントだったら症状が出る」などと数字によってただちに診断をするのではないことがポイントです。「このくらいの確率ならばここまで摂取してみよう」という方針で、専門医と相談しながらアレルギーの原因食物の影響を実際に摂取して検証、特定していくのです。この実際に食物を摂取する検証を負荷テストといいます。

専門医ではない先生の場合、この値によって完全除去を指示する場合もありますが、患者さんにとって非常に不利益になりますので、信頼できる医師と治療を進めることが大切です。

また、患者さんが自らアレルギー症状を疑って来院しても、すぐに抗体検査や負荷テストをするわけではありません。問診により病歴と症状の経過を合わせて十分に検証すれば、検査の必要性がない(明らかにアレルギーではない)場合もありますし、検査するまでもなくアレルギーと診断できる場合もあります。

たとえば「なにかの食物を摂取し次の日になんとなく症状が現れた」という場合、これは食物アレルギーではない可能性が高いです。食物アレルギーは、摂取してすぐから2時間後ぐらいまでには症状が現れますから、時間が経過してからの軽い頭痛や軽い皮膚の痒みなどは食物アレルギーが原因ではないことが考えられます。今までひどい症状を伴わずに食べられたものをあえて検査するのではなく、明らかな原因を厳密に特定していくという姿勢が基本になっています。

現在のアレルギー治療は、できる限り患者さんの栄養摂取の妨げにならないよう、必要最小限の食物除去を行うことを指針としています。アレルギーはお子さんの成長とともに寛解していきます。

専門医は、患者さんの年齢とともに長い期間をかけて少しずつ負荷テストを実施し、症状の程度や摂取できる程度を線引きしていきます。負荷テストは、その食物を食べられるか食べられないかを診断するのではなく、どの段階でどの程度摂取するかを判断することが目的なのです。

注意しなければならないのは、食物アレルギーに対してIgG検査を行う機関があることです。IgG抗体は、抗原が入ってきたら体内で必ずつくられるものです。ですから、検査をすれば必ず何らかの値が出ます。つまり、どんな症状の人でもさまざまな値にひっかかるので、あたかも原因が特定されたかのようにみえるのです。食物のIgG検査にはまったく診断的価値がありませんので、学会でも使用しないよう注意喚起されています。

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