適切なアレルギー治療を行うためには、その検査・診断が非常に重要となります。現在のアレルギー診断はどのようなもので、具体的に何を目的とするものなのでしょうか。引き続き、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生にうかがいました。
アレルギー治療の基本はその原因を避けることです。そのためには、対象の食べ物が本当にアレルギーの原因になっているかどうかを正しく診断することが大切です。そして、その食べ物が本当に原因であると判明すれば、そこで初めて食べることを止める、除去していくという段階に入ります。
以前はその食べ物を完全除去する、つまり摂取をまったくしないようにするという方針でしたが、症状の出かたや重さには違いがあるため、現在では必要最小限の除去、患者さんそれぞれの症状に合わせて摂取する量を定めるという治療方針に変わってきています。
アレルギー検査において、IgE抗体の値が高い人の中でも病気かどうかをすみ分けるために指標にするのが、プロバビリティ曲線の値です(つまり、曲線から確率を出すということです)。出た確率を参考にはしますが、「10パーセントだったら症状が出ない」「90パーセントだったら症状が出る」などと数字によってただちに診断をするのではないことがポイントです。「このくらいの確率ならばここまで摂取してみよう」という方針で、専門医と相談しながらアレルギーの原因食物の影響を実際に摂取して検証、特定していくのです。この実際に食物を摂取する検証を負荷テストといいます。
専門医ではない先生の場合、この値によって完全除去を指示する場合もありますが、患者さんにとって非常に不利益になりますので、信頼できる医師と治療を進めることが大切です。
また、患者さんが自らアレルギー症状を疑って来院しても、すぐに抗体検査や負荷テストをするわけではありません。問診により病歴と症状の経過を合わせて十分に検証すれば、検査の必要性がない(明らかにアレルギーではない)場合もありますし、検査するまでもなくアレルギーと診断できる場合もあります。
たとえば「なにかの食物を摂取し次の日になんとなく症状が現れた」という場合、これは食物アレルギーではない可能性が高いです。食物アレルギーは、摂取してすぐから2時間後ぐらいまでには症状が現れますから、時間が経過してからの軽い頭痛や軽い皮膚の痒みなどは食物アレルギーが原因ではないことが考えられます。今までひどい症状を伴わずに食べられたものをあえて検査するのではなく、明らかな原因を厳密に特定していくという姿勢が基本になっています。
現在のアレルギー治療は、できる限り患者さんの栄養摂取の妨げにならないよう、必要最小限の食物除去を行うことを指針としています。アレルギーはお子さんの成長とともに寛解していきます。
専門医は、患者さんの年齢とともに長い期間をかけて少しずつ負荷テストを実施し、症状の程度や摂取できる程度を線引きしていきます。負荷テストは、その食物を食べられるか食べられないかを診断するのではなく、どの段階でどの程度摂取するかを判断することが目的なのです。
注意しなければならないのは、食物アレルギーに対してIgG検査を行う機関があることです。IgG抗体は、抗原が入ってきたら体内で必ずつくられるものです。ですから、検査をすれば必ず何らかの値が出ます。つまり、どんな症状の人でもさまざまな値にひっかかるので、あたかも原因が特定されたかのようにみえるのです。食物のIgG検査にはまったく診断的価値がありませんので、学会でも使用しないよう注意喚起されています。
国立病院機構三重病院 院長
関連の医療相談が22件あります
セリアック病について
私と母は度々、小麦粉の製品を食べるとさまざまな症状が出ていました。 先に気がついたのは母で、特に多いのは ・胃痛 ・吐き気 ・腹痛 ・便秘、下痢の繰り返し などです。 母は、病院でセリアック病だねと言われました。問診のみです。 同じ症状が私にもあると伝えると、遺伝するみたいだから、娘さんも可能性があるかもねと言われたそうです。 私は他の病院で、小麦粉の製品を食べるとこういう症状が出ると伝えましたが、特にこれと言った診断などはされていません。 セリアック病かどうか調べようと思うと、保険適用外なため高額な医療費がかかるとか…。 一時期吐き気などで全くご飯が食べられなくなったためネットで調べたところ、2週間小麦粉を断つことで自己診断ができると書いてあったので実践しました。すっかり調子が良くなりました。 2週間後に食べた時は、吐き気や震え、動悸などの症状で夜眠れず、とても辛い思いをしました…。 それからほとんどの小麦粉の製品を食べていません。 今はとても調子が良いです。 しょっちゅう起こしていた脂汗の出るようなひどい腹痛も、すっかりなくなりした。胃痛や吐き気もしばらく起こしていません。 小麦粉を絶った以外何もしていませんが、体重が1ヶ月で5kg(現在152cm54kg)減りました。 グルテン不耐性の可能性が高いと判断して良いのでしょうか? グルテン不耐性ならば、今後も小麦粉を食べないようにするしかありませんか? 小麦粉を食べないのは、結構辛いこともあります。
最近急に食後に発疹がでます
いつもお世話になっております 最近飲酒後や食事後に痒みはあまりないのですが上半身に赤く発疹が出るようになりました 何かの病気なんでしょうか?
グルテンアレルギーとセリアック病との違いについて
一歳になった甥が、顔の腫れ、蕁麻疹、そのほか、程度はわかりませんが咳き込んだりするなど気道の収縮?といったアレルギーっぽい症状が出て救急搬送されたとの報せを受けました。 搬送時にエピペンを打ったとのことですが、病院にて処置された今は少し症状も緩和しつつあるようで一晩入院することになったとのことです。 新しく始めた食べものがパンで、昨日からほんの少量ずつ開始したところだったようで、まだ診断されていませんが小麦などのアレルギーが疑われると思うのですが以下の点について教えてください。 ①一歳ですが、小麦などのアレルギー症状の検査は一般的に血液検査ですか? ②一般的に、アレルギーの検査結果であらわれてこないケースはありますか? ③検索するとセリアック病というのがあるようですが、この疾患と小麦アレルギーとの違いを教えてください いずれにしろ病院での検査、診断結果を待つ必要があるとは思うのですが甥が搬送されたのが二度目で、一度目の搬送時も聞く限りではアレルギー症状のようで検査したらしいのですが、そのときは原因の特定までに至らなかったようでしたので質問いたしました。 よろしくお願いします。
喉の違和感
かなり前からですが、喉の違和感に関してです。 通常の、痰が絡むとは少し違う感じで、喉に違和感を覚えることが多々あります。 咳払いが止まらなくなるような状態で、でも喉を違和感を払拭することはできないままで。 そのせいで、瞬間的に呼吸が出来なくなるような事象が起きます。 喉に何か張り付くような感覚。 しばらく続けると、痰が吐き出されて治ります(続けて症状が現れる場合もあります)。 過去に一度、咽頭アレルギーと診断されたことがあります。 この場合、食物アレルギーなども考えられるのでしょうか? よろしくお願いいたします。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「食物アレルギー」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。