インタビュー

食物アレルギーの種類と症状―免疫のバランスが崩れて発症する

食物アレルギーの種類と症状―免疫のバランスが崩れて発症する
藤澤 隆夫 先生

国立病院機構三重病院 院長

藤澤 隆夫 先生

この記事の最終更新は2015年12月22日です。

現代、アレルギーの方が増加しているといわれています。人びとの生活様式の変化は、具体的にどのようにアレルギーと関係しているのでしょうか。また、その結果あらわれる食物アレルギーの種類と症状は、いったいどのようなものなのでしょうか。引き続き、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生にうかがいました。

生物は、たくさんの微生物と共存しています。その中には良い微生物も悪い微生物もいて、悪い微生物が感染症などを引き起こします。しかし、ほとんどは共存して良い影響を与える微生物です。よく耳にする腸内細菌や皮膚などにいる細菌がそれにあたります。生物は本来、その共存によって免疫のバランスが保たれています。まったく無菌の状態ではなく、さまざまな微生物とうまく相互に作用していくことこそが、適度な免疫バランスの調節を可能にすると考えられているのです。

ところが、現代は「とにかくきれいにしましょう」という価値観が広く共有されています。「人工」であることは、とにかく生物の多様性を減らします。ごみを調べても以前はさまざまな微生物がいたものですが、今はそこにいる微生物に偏りが見られます。ここに現代社会の特徴が表れています。

ですから、腸内細菌などもおそらく変わってきているだろうと予想できます。たとえば抗生物質を使えば腸内細菌のバランスが崩れますから、抗生物質の使用とアレルギーの発症にも関係があり、そのほかの免疫の疾患にも関係あるのではないかと考えられているのです。

こうした現代の生活様式の変化にともなう環境の変化が遺伝子に影響を与え、アレルギーを起こしやすいように現代人の体が変わってきているため、全体としてアレルギーの症状が起こる人が増えていると考えられます。

ただ、IgEの値が高いことはリスクではありますが、それがただちにアレルギーの病気であるということにはなりません。その場合、「アレルギー体質である」とはいえます。しかしアレルギー症状を発症するまでにはほかの因子も深く関係するので、IgEが直接アレルギー症状の原因になるということを証明しなければ、値が高い人をアレルギーの病気であるとはいえないのです。

食物アレルギーには、以下のようにいくつかのタイプがあります。

新生児の間、体に取り込まれる異物はミルク(人工乳)のみです。そのミルクが原因となり消化管にアレルギーを発症するものです。おう吐や下痢、血便、腹部膨満など重篤な症状が起こり得ます。NICUでほかの病気を疑われ、検査をしてはじめてアレルギーが判明することもあります。

アトピー性皮膚炎の症状がある赤ちゃんは、同時に食べ物に対するIgE抗体をつくっていることが多いです。どちらにも因果関係はなく、両方の要因が並列して症状が発症しています。現在では、皮膚を介して抗原に感作している(抗原に対して感じやすい状態になること)のではないかと考えられています。

もっとも一般的なアレルギーで、食物を摂取してから2時間以内ほどで症状が誘発されます。

原因となる食物を摂取しただけでは症状が現れないのに、それを摂取して運動すると症状が現れる特殊なタイプの食物アレルギーです。

口だけに症状が現れるアレルギーです。花粉症と大きく関連があると考えられており、花粉と共通抗原性のある(類似の抗原である)野菜や果物に反応してしまうものです。アレルゲン(植物の間で共通する抗原)は加熱や消化酵素によって変性しやすく、そのまま摂取したときに口の中で症状が現れます。しかし胃の中に入って消化されると、アレルゲンが壊れてアレルギー症状は出にくくなります。

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