インタビュー

食物アレルギーの治療・対処は原因を避けることが第一

食物アレルギーの治療・対処は原因を避けることが第一
藤澤 隆夫 先生

国立病院機構三重病院 院長

藤澤 隆夫 先生

この記事の最終更新は2015年12月25日です。

子どもたちのアレルギー症状への対処としては、どのようなことが行われるのでしょうか。また、自分の子どもにアレルギーの傾向がみられたら、私たちは何をどのように判断すればよいのでしょうか。引き続き、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生にうかがいました。

アレルギーに対して「治療」という言葉を使うのは、適切でないかもしれません。「原因となる食物を避ける」のが現在の基本方針であり、アレルギーである体を根本的に治すことはできないからです。しかし、気をつけていても誤ってその食物を摂取してしまうことがあり、その時にアナフィラキシーショックなど強い症状が起こる場合があります。そこで、患者さんにアドレナリン注射薬(アナフィラキシーを抑える代表的な薬)を所持してもらうこともあります。

数年前、学校給食における事故のニュースが報道されました。乳製品アレルギーを持つ児童に誤ってチーズ入りの食物が与えられ、児童が死に至ったというものです。このケースにおいて、学校現場での対応の難しさがあったことを受け、学校で事故が起こった場合、適切な処置ができるよう、東京都では緊急対応マニュアルがつくられました。

このマニュアルには、万が一事故が起きた際に初動体制をどうするかというステップが記載されています。たとえば「アドレナリン注射薬はこのようなときに打ちましょう」というチェックリストに沿って、そこにひとつでもあてはまればアドレナリン注射薬が打てると判断できるようになっています。必要な時に躊躇して使えないということがないように、適切に使えるように教育することが重要なのです。

アドレナリン注射薬は自己注射薬なので、本来は本人が打つものです。それを第三者が行うことについて、これが医療行為にあたるかどうかが議論されました。その結果、救命のために行われ反復して行う意図がない場合は医師法違反にはあたらないと考えられています。

現在学校では、文部科学省の作成したDVDなどをもとに先生方も研修をして、アドレナリン注射薬の打ち方を勉強されています。今年度のはじめにもアレルギー症状への学校での対応マニュアルが新たに配布され、アレルギー対応委員会をつくり細かくシミュレーションを用意するよう指導され、小児科医なども学校に講演に訪れたり、各自治体も自己学習に取り組んでいます。

では、自分の子どもにアレルギーの傾向がみられたら、どういう症状が現れたら病院に行けばいいのでしょうか。

乳児の場合、まずは湿疹が出たら早めに診察を受けるとよいでしょう。早期に皮膚疾患の治療をすることにより、その後のアレルギーを予防できる可能性があると考えられるからです。それから、なにかの食物を食べて症状が出た場合にももちろん診察を受ける必要があります。

しかし、中には「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という特殊なタイプのアレルギーも存在します。これは発症するタイミングや時期(幼少期、大人になってからなど)がバラバラで、負荷テストでも判断しにくいことがあります。毎日食べている食物なのに運動が加わったことによって症状が現れていることもあるので、原因の特定が非常に難しいといわれています。

一番多い症状は、皮膚症状です。口がピリピリするなど粘膜症状が現れることもありますし、人によっては腹痛、嘔吐、咳など呼吸器症状、血圧の低下、頭がぼーっとするなど重い症状などが現れることもあります。くれぐれも、安易な自己判断をしないことが重要です。

食べ物は、非常に複雑です。食品をひとつずつ「これは大丈夫・これはダメ」と判断することは難しいため、患者さんが正しい知識を得ることが重要です。現在では、加工されている食品にはアレルゲン物質の表示が義務付けられていますが、ごく微量の場合には表示義務がないので、「同じ製造ラインでつくられています」など曖昧な表現がされていることがあります。そのため、患者さんはそれぞれが自分で慎重に判断しながら摂取しなければなりません。

アレルギーの管理方法は近年で大きく変化し多岐にわたるので、自己判断で過剰な食育はせず、信頼できる医師とともにうまく症状管理をしていきましょう。

経口免疫療法とは、徐々にアレルギーの元となる食物を摂取しながら少しずつ身体を慣らしていく治療方法です。現在のところ、一定の効果があることは分かっていますがまだ研究段階であるため、学会ではっきりと推奨している治療方法ではありませんし、専門家がいる施設でしか行えません。アレルギーは食べなければ症状が出ないので、あえてそれを摂取して症状の程度を診断したり、負荷をかけていくことには危険も伴うからです。薬の副作用などと違い、アレルギーにおいては「ここまでは大丈夫」という線引きは非常に難しいので、慎重になる必要があります。

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